インバウンドニュース
訪日客の移動方法調査、Google Map利用率は9割超え。公共交通の課題も明らかに
2025.07.24
やまとごころ編集部インバウンド向けショッピングサポートアプリを提供する株式会社Paykeは、自社アプリ利用者1827名( 韓国語・英語・繁体字中国語圏)を対象に、2025年6月17~24日の期間で多言語Webアンケートを実施。訪日観光客の移動手段・アプリ利用状況を分析し、交通や店舗探索における具体的な課題と行動傾向を明らかにした。
約4割が交通手段で不便を経験、公共交通に多言語対応の余地
訪日中の交通に「困った経験がある」と回答した訪日客は38%にのぼり、特に公共交通機関における課題が浮き彫りとなった。
公共交通機関の中でも利用率が最も高いのは電車・地下鉄で、94%が利用。困りごとの最多は「駅構内の移動がわかりにくい」(39.6%)、次いで「乗り換えの難しさ」(33.8%)、「チケット購入方法の不明瞭さ」(18.9%)が挙がった。多言語表示や案内強化の必要性が明らかとなった。
バスは62%が利用しており、「乗り方がわからなかった」(20.4%)との声が最多。地域ごとの乗車方法や時刻・乗り場情報の違いに対応した情報提供が鍵となる。また、時刻表や地方部におけるバスの運行状況、乗り場に関する情報が得られなかったという回答もあり、Google mapへの正確な情報提供も重要となる。
タクシーでは言語圏により利用率に差があり、英語・韓国語話者は半数超が利用する一方、繁体字中国語話者では38%にとどまる。こうした差は、繁体字圏におけるタクシーサービスの認知不足や使いづらさが背景にある可能性があり、今後のプロモーションや利便性向上の余地が大きいといえる。
タクシー利用において「運転手とのコミュニケーションの難しさ」(11.6%)が最大の課題であり、アプリの多言語対応や翻訳支援の導入が今後の課題となる。
Google Mapは訪日客の移動インフラに、言語・訪日経験別に最適化が必要
訪日中のナビアプリ利用では、99%がGoogle Mapを使用。韓国語話者の初訪問者では100%が「毎日使った」と回答しており、訪日観光における必須ツールとなっていることがわかる。
また、全体の65.9%が「Google Mapしか 使っていない」と回答。特に韓国語話者では76.6%にのぼり、他のアプリ利用が少ない。英語話者・繁体字話者はやや分散しており、「Japan Travel by NAVITIME」や「Japan Transit Planner」の利用も一定数見られた。
なお、アプリの使用状況を訪日回数別で見たところ、旅行経験が多いリピーターは、Google Mapに加えて複数アプリを併用する傾向がある。特に、日本全国の鉄道・飛行機を利用した経路・運賃を検索できるJapan Transit Plannerは、訪日リピート回数が増えると、使用する傾向が高い。情報収集スタイルが多様化を受けて、アプリ選定や情報発信では、言語圏・経験別の傾向を踏まえた最適化が必要となる。
観光・飲食情報もGoogle Mapが主流、SNSや情報サイトとの使い分けも
ナビアプリは移動にとどまらず、観光地や飲食店の検索にも広く使われている。観光地検索では、初訪問者はSNS(33.6%)を多用し、リピーターは旅行情報サイト(17.1%)へのシフトが見られる。訪日経験に応じて、求める情報の深度が変化していると考えられる。
飲食店探しにおいても、地図アプリの利用が圧倒的で、初訪問者・リピーター問わず約半数が新規飲食店の検索に活用。グルメサイト「食べログ」の活用は訪日経験が多い層で14.9%に達したが、全体では限定的だった。
なお、飲食店のメニュー・営業時間等の詳細情報の確認でも67.1%が地図アプリを利用しており、訪日客にとって飲食店情報収集の中核ツールとなっている。
こうした傾向を踏まえ、訪日客への情報発信ではGoogle Mapを中心としたMEO対策や、多言語での情報掲載・写真整備が引き続き重要となりそうだ。
ICカードは7割超が活用、乗り放題パスはリピーター中心に定着
訪日客の移動を支える手段として、SuicaやPASMOなどの交通系ICカードは「よく使う」が59.1%、「たまに使う」が11.7%で、計7割以上が利用しており、主要な移動ツールとして定着している。

特に、繁体字話者では初訪問から高い定着が見られ、韓国語話者は訪日回数を重ねることで利用が拡大する傾向にある。
なお、有効期間内であれば、日本の公共交通に自由に乗れる乗り放題パスは「よく使う」19.7%、「たまに使う」32.0%で、半数超が利用経験あり。ただし、「知っているが使っていない」も38.7%にのぼり、旅程との相性や使いどころが課題となっている。
特に繁体字話者では74.9%が利用経験あり、韓国語話者も3回以上の訪問で5割超。リピーター向けの有効な移動手段となっており、今後は初訪問者にも使いやすい形での情報提供や、エリア別・期間別の活用方法の提示が求められる。
<編集部コメント>
「誰に・何を届けるか」がカギに。訪日客の行動傾向から読み解く移動・情報整備のヒント
Google Mapが訪日客の移動・飲食・観光情報収集のインフラとして定着する一方、公共交通では駅構内の案内やバス乗車方法に不便を感じる声が目立つ。ICカードや乗り放題パスも広がりつつある中、初訪問者・リピーター・言語圏ごとの行動傾向の違いを読み解くことが、今後の情報設計やサービス改善のカギとなる。訪日客との接点を持つ観光事業者にとって、MEO対策や多言語での情報整備には、もう一歩踏み込む余地がありそうだ。
出典:株式会社Payke「訪日観光客による百貨店の実態調査」
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