インバウンドニュース
インバウンド時代の日本人、4人に1人が”話しかけられた” 喜びと戸惑いが交錯
2025.08.13
2025年のインバウンドは上半期累計で2151万8100人と、過去最速で2000万人を突破した。この期間、「訪日観光客に話しかけられた」日本人は4人に1人にのぼることが、マーケティング事業を展開する株式会社oneが実施した「インバウンド時代の日本人の意識と行動調査」からわかった。対象は全国の10〜60代男女1000人で、調査は2025年7月3日~4日にインターネットで行われた。
4人に1人が日常でインバウンド客と接点
訪日観光客の増加に伴い、観光地だけではなく、身近な日常でも、「インバウンドとの接点」を感じる場面が増えてきた。それを示すように、今回の調査で、「訪日観光客に話しかけられた」と答えた人は25.0%、つまり4人に1人が話しかけられた経験があった。
▶︎あなたは今年に入って訪日観光客に声をかけられたことはありますか?(n=1,000、単数回答)

内容では「道を聞かれた」が72.8%と最多、以下「写真撮影を依頼された」28.0%、「買い物について聞かれた」25.6%、「食事について聞かれた」21.6%と続いた。
訪日客との接点で43%が緊張、3割が喜び
次に、「話しかけられた時に感じた気持ち」について尋ねると、「緊張した」がトップ(43.6%)だが、「楽しかった」「嬉しかった」もそれぞれ31.6%、28.8%あり、ネガティブな印象だけではなくポジティブな反応も一定の割合で存在している。
▶︎訪日観光客に声をかけられた時のあなたの気持ちを教えてください(n=250、複数回答)
6割が訪日客増加に否定的 背景にマナーや混雑
続いて、訪日観光客の増加についてどのように感じているかを尋ねた。すると、「あまり嬉しくない」が37.7%、「嬉しくない」が27.5%で、合わせると6割を超える人が訪日客の増加を否定的に捉えていることがわかった。
▶︎訪日観光客が増えることへどのように感じていますか?(n=1,000、単数回答)

その理由に挙げられたのが「マナー」65.0%、「治安」55.7%、「混雑」49.7%だった。いわゆるオーバーツーリーズムで普段の暮らしが脅かされるのではという不安が根強くあるようだ。
▶︎訪日観光客が増えることへのあなたの不安を教えてください(n=1,000、複数回答)

一方で、「地域経済の活性化」35.7%、「日本の良さを海外に伝える機会が増える」22.0%など、経済や文化交流に期待する声も聞かれた。
▶︎訪日観光客が増えることへのあなたの期待を教えてください(n=1,000、複数回答)

訪日客との交流で再認識 マナー・街並み・食文化
今回の調査では、日本人自身が改めて自国の魅力に気づく場面が増えていることも明らかになった。「日本の魅力を感じたことは?」と尋ねると、「日常のマナー・ルール」40.0%、「交通の正確さ・鉄道」33.7%、「神社仏閣の美しさ・歴史」31.1%、「日本庭園や街並みの美しさ」30.7%、「ローカルな食文化」25.3%が上位を占めた。
また、「観光立国ニッポン」に誇りを感じる人は52.7%にのぼる。
▶︎訪日観光客が増えたことで、改めて日本の魅力だと感じたことを教えてください。(n=1,000、複数回答)

▶︎あなたは「観光立国ニッポン」に誇りを感じますか?(n=1,000、単数回答)

6割超が“感覚の違い”を実感、若年層は異なる視点も
インバウンドとの触れ合いが増える中で、日本人が感じる「観光に対する感覚の違い」も表面化しており、「訪日観光客と日本人で感覚が違う」と感じた人は67.2%に上る。
▶︎訪日観光客と日本人で感覚が違うと感じることはありますか?(n=1,000、単数回答)

具体的には「静かな場所でも大きな声で話していた」60.4%、「文化財での振る舞いが気になった」41.8%が目立つ。
▶︎訪日観光客と日本人で観光に関する感覚が違うと感じるのはどのような場面ですか?(n=672、複数回答)

一方、10〜20代は少し異なる見方をしているようだ。他世代よりも、「日常的な場所に興味を示していた」(40.2%、全体では29.5%)、「現地の人とのふれあいを求める姿勢」(22.1%、全体では11.9%)を選んだ人が多く、日常に入り込む訪日客の存在をより身近に捉えている様子がうかがえる。
【編集部コメント】
4人に1人がインバウンドと日常で接点 共生のルールと交流の形が課題
調査結果を見ると、4人に1人が観光客から声をかけられ、道案内や写真撮影など日常での接点が広がっていることがわかる。一方で、マナーや治安、混雑への不安から「訪日客増加を嬉しくない」とする人も6割に上り、オーバーツーリズムの影響が意識されている。
しかし、交流を通じて日本のマナーや街並み、食文化の魅力を再認識する人も多く、若年層ほど訪日客の“日常への溶け込み”を肯定的に捉える傾向が見られる。観光が日常に入り込む今、受け入れ環境の整備と共に、地域住民も楽しめる交流の形をどうデザインするかが鍵となる。業種を超えた協働がその第一歩となるだろう。
(出典:株式会社one 「インバウンド時代の日本人の意識と行動調査」)
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