インバウンド特集レポート
個人旅行者を中心に、インバウンド最前線を走る
鳥羽ビューホテル花真珠女将・迫間優子さん
前編で、三重県にある鳥羽ビューホテル花真珠がインバウンドに取組むきっかけとなったのは、女将の思いであったとのお話を伺った。台湾の旅行会社へ売り込みのためのセールスツアーの時、請求ポイントとしたのが天皇陛下から褒章をいただいた当時の料理長がつくる料理だった。競合との差別化を図るためにもそこをしっかりと伝えることで2014年から、台湾の旅行会社を通じて、予約が入りだした。そして翌年、2015年には…!
海外からの取材を引き寄せた、インバウンドへの姿勢
鳥羽ビューホテル花真珠では、2013年にはWi-Fi環境を整えていた。鳥羽市内ではかなり早い対応だったと、女将は当時を振り返る。インバウンドに取り組むうえで、Wi-Fiは絶対に必要になるとわかっていたからだ。
2015年には、伊勢志摩サミット2016の開催が決定。そこから、サミットに参加するイギリス、アメリカ、ドイツ等の海外メディアの取材が増えてきた。鳥羽ビューホテル花真珠のインバウンドの積極的な取り組みを知った、鳥羽市、三重県が取材先として推薦してくれたのだ。
「2015年1月にイギリスのホスピタリティ協会とANA(全日空)によるコラボ企画がありました。イギリスの料理人7人を日本に招いて、日本料理を修行してもらい、帰国後に日本創作料理コンテストをするというものです。優勝者の料理は、ANAのビジネスクラスのメニューに採用されます。
イギリスからの若手料理人たちを迎え、実際に泊まりこんでもらい、カツオ出汁、伊勢エビ等、日本料理についてお教えしました。その30歳ぐらいの若手職人に対して、一つ一つ教育にあたったのが、鳥羽ビューホテル花真珠の若手メンバーです」
交流を経て、彼らにも刺激になったと女将は手応えを感じたのだ。
海外の若手料理人との交流から得たインバウンド・ポイント
1つは、料理についてだ。
国ごとにメニューを変えるようになり、イギリス等、欧米人は生魚を食べ慣れていない方々には、グリルにした料理を提供。一方、台湾人は、エビ、ホタテ、フルーツを好み、肉は多めにする。盛りだくさんなメニューが好みだという。
2つ目は案内表示。
レストランでの料理メニュー、館内での案内表示は、日・英・中(繁体)の3つの言語を併記するようになった。簡体字を使わない理由は、中国メインランドからの観光客が少ないからだ。宿の規模から団体客を扱ってないため、そういう集客の内訳となった。
3つ目は、語学研修。
週に1回、スタッフの為の英語の勉強会を開催している。参加はスタッフの自由意志となる。
4つ目は、インバウンドを通して地域との連携が深まってきたと女将は言う。
鳥羽旅館女将会で外国人向けの市内マップを作成した。これまでは、言語ごとに分かれているマップを併記することにしたのだ。日本語と英語、または日本語と中国語という具合に。地図に日本語がまったくないと、わかりづらいという意見が多かったからだ。通り道で、日本語しかわからない人が見ても、指さしで案内できるからだ。
また伊勢志摩国立公園が近くにあり、エコツーリズム等、着地側との連携も可能だ。やはり、地元では海女小屋が外国人に人気のコンテンツになっている。
今後の展望としては、日本文化をしっかり守っていきたいと女将は言う。
「例えば、抹茶、浴衣の着付けなど、日本文化を体験できる場所こそが、旅館だと考えています。
鳥羽ビューホテル花真珠がこだわっているポイントに、部屋食があります。昨今では、部屋食という宿が減りつつあります。やはり、個室で食事するという文化はもちろん、寝室、リビング、食卓が同じ場所で展開されるといのも、外国人にとっては文化体験になるのです。それを継続することが大切です」。
鳥羽ビューホテル花真珠では、インバウンドをいち早く進めたことで、新しい出会いもあり、またスタッフも自主的に関わるように変化した。
女将のリーダーシップによるインバウンドが着々と進んでいるのだ。
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