インバウンド特集レポート

忍者にインタビュー! 外国人観光客の価値観を変える忍者の奥深さとは

2018.08.10

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前回は、町や地域に根付いた「NINJA」を商品化し、観光資源として町おこしに活用している事例を紹介した。最後に、多様化する忍者体験と、実際に忍者として活躍する五十嵐剛さんから聞いた忍者文化の奥深さについてレポートする。

 

忍者体験も多様化しつつある

忍者体験が増えるなか、衣装を着るだけのものから、手裏剣投げなど、様々な商品が登場している。

例えば、東京の新宿には、忍者の体験館がある。忍者と一緒に記念撮影をする他、手裏剣投げ、日本刀・忍者刀に触れ、さらに「斬る!」という手ごたえ、感覚を体験する事もできるという。1グループ最大12人ほどでの案内となっていて、約30~45分ぐらいのコースだ。

一方、さらに忍者のディープさを求める外国人も増えていると、現代の忍者を生業とする五十嵐剛さんは、最近の事情について語る。

 

たまたまのご縁で、忍者になった!

五十嵐さんが忍者の道に入ったのは、もともとは古武術を習っていたのがきっかけだった。

学生時代はキックボクシングや柔道など格闘技をしていたが、怪我をしてドクターストップがかかった。悩んでいた頃、たまたま古武術に出会い、リハビリがてら始めてみたところ、体が改善していった。西洋のスポーツにはない動き、心の持ち方があり、しっかりと体が動くようになっていった。

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その当時、古武術教室で一緒だった生徒に、忍者向けのツアーを仕掛けている会社のスタッフがいた。武蔵一族という団体で、東京タワーの道場で外国人等に忍者体験を提供していた。その知り合った武蔵一族に誘われて、アルバイトで忍者体験を手伝った。大学卒業後、一旦就職して、休日のみ忍者体験をサポートしていたが、3年後に本業を退職して、忍者1本でやっていくことを決意。忍者に関わり、すでに10年の年月がたっている。

最初は小さな仕事から入ったが、ステップアップして幅広く任せられるようになり、忍者ショーの出演のほか、現場の監督、さらに経理までも任されるようになった。また、今後の経営方針などの方向性についても話し合うポジションになっていったが、現在は独立して、より柔軟に様々な団体や企業とコラボできるようになり、活動の幅を広げている。

 

忍者の奥深さがあるから、簡単には飽きられない

五十嵐さんは、古武術的な動きや考え方が忍者ショーに生かされていると断言する。

写真を撮って手裏剣を投げて終わり、ということであれば、古武術の基礎がなくても問題はないが、忍者について深く知りたい人には物足りない。特に欧米人は、好奇心旺盛だ。例えば、見学に来られる方の中には、アメリカの現役軍人さんもいて、そういった方には、所作で本物か偽物かがすぐにわかってしまう。一瞬で見抜かれてしまうのだ。忍者のさりげない動きは、子どもなら分からないかもしれないが、格闘技に精通している方には、スキのない間合いかどうかが見えてくるそうだ。

日頃の鍛錬によって、知識、教養、技術が問われる奥が深いものだと五十嵐さんは解説する。古武術というバックボーンがなければ、ここまで続かなかっただろうとも。

忍者に奥深さを求める人がいる一方、単純にショーとして楽しみたいという人がいる。彼らに、忍者は文化として深いものだと伝えることがミッションだと五十嵐さんは自身に果たしているそうだ。その深さに気づくことで、日本は面白い国だと感じてもらえるのが理想だと五十嵐さんは言う。

その際、重要なのが、実は語学とのこと。通訳の力量が問われ、忍者インストラクターが、深いこと、難しいことを伝えようとしても、通訳にとってニュアンスがわかりにくいので、うまく伝わらないこともある。一方、こちらの意図したことが伝わった場合は、参加者の表情が変わり、「やった」という気分になるそうだ。

 

忍者の講義で理解をしてもらう

ところで、五十嵐さんの忍者の活動について聞くと、大きく3つに分けることができるという。1つ目は忍者体験ツアー、2つ目が忍者に関するセミナー、3つ目が忍者ショーだ。

1つ目の忍者体験ツアーは、プライベートでの参加が多く、1グループが家族や友人などの知り合い同士でやって来る。最大10人が参加可能で、忍者の衣装を着てもらい、1時間から4時間ほどの体験が基本パターンだ。時には、1日で山修行をするプログラムもある。

2つ目のセミナーについては、ある企業から、ホテルに100名から150名が集まって、忍者の解説をして欲しいという依頼がきっかけ。プロジェクターを使った座学になる。

3つ目のショーは、ホテルの大宴会場などで、忍者の衣装で技を披露する。こちらの武蔵流では、ショーだけではなく文化体験の要素を加え、演武やアクションと組み合わせて英語での解説も行う。

東京タワーでの忍者体験では、オーストラリア人が一番多く、2割のシェアで突出している。他は、アメリカ、シンガポールと続き、アジア、ヨーロッパ、中東など幅広いニーズがある。年齢もまちまちで、ファミリーも多い。

 

忍者で人生観が変わる外国人も珍しくない?

ときには会社の経営層が来るケースもある。武士道や忍者からヒントを求めたいというニーズなのだ。実際、海外では新渡戸稲造の『武士道』、宮本武蔵の『五輪書』が有名で、イギリスのケンブリッジ大学では、その講義があるほど。トップになると社内だけではなく、外部に学びを求めることもあるだろうが、その一つが忍者だったということだろう。

ある時、アメリカから来た体が不自由な男性が、手裏剣をうまく投げられないことがあった。立っているだけで、バランスが悪かったからだ。そこで五十嵐さんは、彼に忍び足を伝授した。実は、忍び足というのは東洋的身体の稽古法に裏打ちされたものなのだ。彼はとたんに、ぎこちなさがなくなり、しゃんと立てるようになった。たいへん感動されて、チップを全員に置いていったという。

五十嵐さんは、自分もかつて体を壊し、古武道に出会い改善した経験があり、日本文化の奥深さを伝えることに喜びを感じている。

忍者という日本が誇るコンテンツは、奥深さに裏打ちされた文化であり、それに真剣に取り組んでいる人たちによって守られている。忍者がエンターテイメントとして発展しようとも、その軸は守り続けられるだろう。忍者にはスキがない。

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