インバウンド特集レポート
前編では、スマートフォンアプリのゲームを絡めた観光地誘致の施策や、外国人観光客に人気の体験型VRゲームについて紹介した。今回は、最近ニュースでも取り上げられるようになってきた「eスポーツ」について、日本国内での展開と、プレイヤーの状況についてご紹介しよう。
eスポーツがゲーム業界を押し上げる!
プレイヤー同士が公開された舞台で対戦し、コンピューターゲームの腕を競う競技「eスポーツ」に、世界の注目が集まっている。欧米や韓国の若年層から火が付き、日本国内でも認知されつつある。
大阪では、昨年の5月31日にeスポーツの普及を目的とした「eスポーツリテラシーセミナー」が開催され、外国人観光客の増加によるインバウンド効果で活況の大阪ミナミを「eスポーツの聖地に」と有識者らが活発な議論を展開していた。また、昨年の6月に開業したエディオンなんば本店では、海外で盛んな対戦ゲームで勝敗を競うeスポーツが体感できるスペースも設置された。さらに、2020年4⽉には、「泊まれるeスポーツ施設」をコンセプトに、⼤阪の⽇本橋に国内初となる “eスポーツ特化型ホテル”「e-ZONe 〜電脳空間〜」が開業する予定だ。

一方、東京でも、外国人旅行者から人気の渋谷界隈では、先日新装開業したパルコに、任天堂の国内初となる直営店、さらにeスポーツを観戦できるカフェが入った。
eスポーツは、国際的なコミュニケーションのツールに
さらに海外プロモーションでも、eスポーツは注目されている。
夏にフランスで開催される「Japan Expo」では、20回目を迎える2019年に初めてeスポーツゾーンが設置された。日本初のeスポーツコースを設置した高校「ルネサンス高等学校」が、日本人プレイヤーとフランス人プレイヤーが対戦するイベントなどを実施した。
eスポーツは周辺産業への波及経済効果も大きいと考えられており、大会ツアーの造成や統合型リゾート(IR)との連携など観光業の振興も見込めるコンテンツと捉え、経済産業省も力を入れるようになっている。2018年8月には検討会を立ち上げ、波及効果を最大化するための議論を開始した。
JTBコミュニケーションデザインは、昨年の9月、東京ゲームショウに初出展し、20年8月にeスポーツ大会「Piece×P(ピースバイピー)」を開催すると発表している。
eスポーツの裾野が広がることで、地域活性化のコンテンツとして誘客につなごうとする自治体も出てきた。富山県で昨年の9月に行われた5Gコロシアムでは、期間中、県のeスポーツ協会が商店街でアフターパーティーを開催。地酒や郷土料理を提供した。また福島県では、9月に田村市の観光地あぶくま洞で「ぷよぷよeスポーツ」を開催した。
eスポーツのプロチームに現状を直撃!
このようにeスポーツが賑わいだしているなかで、eスポーツプロチーム「TEAM iXA」を運営するヤルキマントッキーズ株式会社の板垣護氏に現状を聞いた。

板垣氏によると、eスポーツの中にもジャンルが多くあり、それぞれが専門性を競っているのが現状とのこと。
ストリートファイター系、シューティング系、サッカーや野球のスポーツ系、さらにシミュレーションゲーム、カードゲームなど、そのジャンルは多種多様である。さしずめスポーツというくくりに、野球やサッカー、バスケットボールがあるように、ゲームによってジャンルは全く異なる。違うジャンルのプレイヤー同士の交流もあまりないそうだ。
世界中でeスポーツ関連の協会が立ち上がっており、昨年3月から12月にかけて、欧米等のいろいろな場所で対戦が開催されている。良い成績を収めるとポイントをもらえ、上位32名が、年末に開催される大きな大会の挑戦権を得られる。賞金総額も大きい。賞金額が大きいジャンルはシューティングゲームで、年間数億円も稼ぐeスポーツの選手もいるそうだ。
「大会によってポイントの点数が異なり、東京ゲームショウの一環として開催される日本大会は大きいです。それを目的にプロの多くの外国人選手が日本にもやって来ますよ。」と板垣氏。
eスポーツの発展は、ゲームファンの悲願!
ところで、なぜ板垣氏は、プロチームを結成したのだろうか。
板垣氏は、現在はゲームの開発に関わる仕事をしており、業界18年の実績がある。eスポーツのプロチームを立ち上げた理由は、ゲーム好きの人たちの地位向上にある。頑張ればプロになることもできる環境をつくり、将来憧れられるジャンルにしたいという。欧米ではすでにゲームのプロとして食べていける環境が整ってきたことも、追い風になっている。

板垣氏は、有名なジャンルで言うと、ストリートファイターVという格闘ゲームのプロを抱えている。ストリートファイターⅤは、ルールがわからなくても見ているだけでエキサイトしてくるので、多くの人に関心を持ってもらえると考えたそうだ。ストリートファイターⅤは、日本人選手が強いので、海外で大会があるときは、招待され大歓迎されるという。
海外から選手がきた場合は、日本人選手がその国を代表してアテンドすることが多い。「私たち日本人が海外に行くと、その国の選手にアテンドしてもらい、ブラジルやドミニカなど、治安が悪い街では、各国の選手同士が助け合う事が多いです」と板垣氏はいう。
今後は、チームをもっとプロモーションしていくために、TwitterやYouTubeなど、SNS等も活用する予定だ。
国内各地でeスポーツの誘致という流れができるかもしれない、それも外国人を視野に入れつつ。まさに、ゲームというジャンルもインバウンド業界が取り込むテーマの柱になっていきそうな予感だ。
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