インバウンド特集レポート

急ピッチで進むFree Wi-Fi環境 なぜに外国人旅行者には満足度があがらない?

2014.08.26

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昨年からWi-Fiに関する報道が多く、混乱気味の様相だ。インバウンドにとって「Free Wi-Fi」の設置が重要だと、お約束のように唱えられる。個々の取り組みは増えているが、全体として現状がどうなっているのか、さらに課題は何なのか、そろそろ整理することも必要だ。

目次:
●インバウンド業界では3年前からFree Wi-Fiの必要性が顕在化
●海外のWi-Fi先進エリアの事例
●設置負担別、国内のWi-Fi設置の取り組み事情
●いかにFree Wi-Fiの設置を知ってもらうかも重要
●利用に際しての手続きの煩雑さが課題

 

インバウンド業界では3年前からFree Wi-Fiの必要性が顕在化

ここ最近、連日のようにWi-Fi関連のニュースが続くのは、やはりインバウンドの直近の課題として注目されているからだろう。
参考までに下記に今月のニュースからピックアップ。

しまなみや道後温泉など観光地に公衆無線LAN 愛媛県が整備を推進
8月14日付 産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/region/news/140814/ehm14081403140003-n1.htm

富士山頂 ネット環境は整備途上
8月14日 中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20140814/CK2014081402000089.html

お台場の商業施設、外国客を歓迎 多言語対応や無料Wi-Fi
8月7日付 日経新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO75329610W4A800C1L71000/

中国人、無線LAN・星付きホテル好む
8月5日付 日経新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDX0500F_V00C14A8FFE000/

京急、羽田国際線駅に訪日客向け無料Wi-FiのID発行機設置
7月31日付 レスポンス
http://response.jp/article/2014/07/31/228993.html

なぜ、これほどホットなテーマになったかというと、3年前の観光庁のアンケート結果が大きい。外国人観光案内所を訪問した外国人旅行者アンケート調査だ。(2011年10月実施)

旅行中に困ったことの第1位は、Wi-Fi環境の問題で、38.7%と断トツだった。

入国前にネットで日本を良く調べてきている旅行者が多く、ウェブページをブックマークしておいて、旅行中これらを参照したいということで、無料公衆無線LAN環境の問い合わせが観光所にも多かった。

その後、地域でWi-Fi環境の整備が進んでいった。

ところが今年の7月に国土交通省から発表された、日本滞在中に「あると便利」な情報に関する詳細分析は、驚きの結果となった。
選択肢別ランキングでは「無料Wi-Fi」が47.0%だったのだ。
つまり設置が進んでいるにもかかわらず、3年前よりも不満が高まっている。地域別では、香港が65.6%と最も高く、台湾が58.8%、オーストラリアが54.9%と続く。

総務省の発表によると、無料の公衆無線LANサービスは2009年が88万AP(アクセスポイント)で、2014年が394万APと普及している。約4.5倍も増えたのだが⋯⋯。

設置数を増やしても不満の声が減らない大きな要因は、スマートフォンの普及率に追いついていないと指摘する声もあった。さらに、設置について知られていない、または必要とされる場所に設置されてない等。

いずれにしても不便と思われているのは事実だ。
そこでWi-Fiを管轄する総務省が腰を上げて、2020年のオリンピックに向けて重点策を打ち出した。

①無料Wi-Fiの整備促進と利用円滑化
②国内発行SIMへの差替え等によるスマートフォン・携帯電話利用の円滑化
③国際ローミング料金の低廉化
④「言葉の壁」をなくす「グローバルコミュニケーション計画」の推進

特に前提として上げているのが、下記4項目だ。
A訪日外国人に無料Wi-Fi環境への強いニーズが存在。
B国の無料Wi-Fi環境は大きく改善。しかし、地方を含め訪日外国人の動線を意識した、さらなる整備促進が必要。
C利用に際しての手続きの煩雑さが課題。
D我が国の技術基準を満たすことを予め確認していない、海外から持ち込まれるWi-Fi端末の利用について整理が必要。

今回の記事では、上記のA~Cの前提を検証していきたい。

 

海外のWi-Fi先進エリアの事例

Aの「訪日外国人に無料Wi-Fi環境への強いニーズが存在」について。無料Wi-Fiが進んでいる国・地域ほど不満が高い結果になったと、アンケートが示している。
特に不満が高かった香港と台湾の現地Wi-Fi事情をみていこう。

香港は、政府が「ワイアレス都市」を政策に掲げている。多くの政府施設において、すべての香港市民に無料Wi-Fiを提供することを目標とした「Digital 21 Strategy」というビッグプロジェクトが2008年にスタート。香港政府が運営する無料Wi-Fi、”GovWiFi”は街中で利用可能だ。

利用可能スポット例:
公園、ビジターセンター、公立図書館、競技場、カルチャーセンター、フェリー・ターミナル、コミュニティ・ホールや政府関係ビルなど。
2014年3月の発表では、香港内440APで無料Wi-Fiが利用でき、外国人は観光案内所等で登録手続きが必要。
小さな都市でこれだけのアクセスポイントが存在しているということは、いかに香港の環境が充実しているかがわかる。その他、公共交通機関や駅のターミナル、空港も無料で利用できるサービスがある。
一方、カフェやホテル、商業施設は独自にサービスをしているようだ。

次に台湾。
無料で使えるAPとしては、台北市「Taipei Free」が4,500ヵ所ある。
本人のパスポートまたは中国大陸住民の台湾通行証を持参して、サービスセンターの係員にメールアドレスを伝える。係員がアカウントの申請を代行。完了すれば、台北市の主な屋内外の公共スペースで無線LANを利用できるようになる。
その結果、ホテル、MRTの駅、路線バスの車内、セブンイレブンの膨大な各店舗、コーヒーショップ「MR.Brown」の各店舗で利用可能。

しかし、ネットに常時接続して歩きながらグーグルマップをナビ代わりに使ったり、旅行中、日本の家族や友人からの連絡などをリアルタイムで受取りたい場合は、無料Wi-Fiだけでは厳しい部分もある。無料Wi-Fiの電波が飛んでいないエリアもあるからだ。対策としては、やはり海外で使用できるSIMフリーのWi-Fiルーターを日本から持ち込む、またはレンタルし、現地通信キャリアのSIMカードを購入してモバイル常時接続するのがオススメだと、現地の日本語旅行メディアはアドバイスしている。

(Part 2へ続く)

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