インバウンド特集レポート
JNTOの調査結果によると、外国人旅行者の日本滞在中に関心が高いことランキングに、ショッピングと並んで必ず「グルメ」が登場する。
最近では、日本食だけではなく、ラーメン等のB級グルメへの注目が集まっている。それもご当地グルメだ。東京以外の観光地を訪れた際に、その土地の料理を食べたいというニーズが高まっている。
ゴールデンウィークのとある日、都内でインタビューしたインド人夫婦は、ちょうど桜のシーズンということで、青森に新幹線で行ったそうだ。その時、青森で食べたのが、「味噌カレーミルクラーメン」だったという。カレーの本場インドから来た彼らは、美味しかったと舌を巻いていた。名前のとおり、味噌・カレー・ミルクが入ったラーメン「味噌カレーミルクラーメン」は、青森のご当地グルメとして、着々と認知度を上げている。
このように地方のグルメが外国人旅行者の注目を集めるようになった。そこで、人気のグルメを扱う地域では、どういった対応をしているのか、さらにプロモーションをどのようにしているのか、各地の事例をピックアップした。
お好み焼きアカデミーが外国人対応をサポートして安心の接客
まず一つ目は、広島のお好み焼きだ。広島を訪れる外国人観光客が増えており、その結果、お好み焼き屋を訪れる外国人客が増えたという。
急増する外国人客に、お店では対応に苦心しているという。英語への苦手意識が強い方が多いからだ。現場で役立つコミュニケーションツールが求められていた。
その課題解決に動いたのが、「お好み焼アカデミー」だ。
お好み焼きアカデミーとは、オタフクソース株式会社や広島の学識経験者などにより設立された一般財団法人。お好み焼の食文化を研究し、国内外に広めることを目的に、2014年4月に設立された。広島のお好み焼の歴史や材料を紹介する英語サイトも運営している。
2016年3月、お好み焼き店の方々にヒアリングした上で、外国人対応のツールをお好み焼アカデミーが作成した。「コミュニケーションシート」という名前だ。
イラストを多用し、お好み焼の材料、中華麺かうどんか、チーズや魚介類などのトッピングを選ぶという注文の流れを英語、日本語で解説している。アレルギー情報、お好み焼の種類の解説、お好み焼の分解図もある。さらに持ち方や切り方なども説明されており、外国人も安心してお好み焼きを楽しむことができる。英語が苦手な店員でも、コミュニケーションシートを活用して、指さしで外国人に説明できるようになっている。
シートは、A4の見開きで、コンパクトなサイズであり、カウンターでも扱いやすい。
これでお好み焼の注文の仕方や食べ方を英語で理解してもらえると、お好み焼屋の主人たちから好評だそうだ。
海女小屋での食事に、4年で30倍の外国人旅行者が殺到!
次に紹介するのは、ここ数年、人気急上昇中の伊勢志摩の海女小屋にある「アワビの炭焼き」だ。海女さんは、朝、海から獲ってきたあわびを海女小屋で網焼きして、外国人旅行者におもてなしをする。
海女小屋が人気の理由は2つある。一つは、現役の海女さんは高齢化しているものの、たいへん元気で、その接客が外国人を喜ばせている。もう一つは、新鮮な生きた貝類の網焼きをアツアツで食べることができること。これが新鮮で美味しいと評判だ。
海女小屋には、現役の海女さんが20名おり、彼女たちが、海女の民謡と踊りをお客さんに披露する。食事と合わせて、1時間15分のコースだ。
この海女小屋を訪れる海外からの旅行者が増えている。一番多いのは、香港で、次に韓国、台湾、マレーシアと、アジアからの旅行者が多い。団体ツアーと個人客では半々ぐらいで、関西からの周遊客が多いという。外国人の利用者は、2013年に約200人、2014年は約500人、そして円安になった2015年はなんと約3000人、G7サミットが開催された2016年は6000人を超えている。4年間で利用者が30倍に増えた。
海外へのプロモーション活動によって、海女小屋の認知度は高まっていたが、円安に振れてから一気にブレイクしたと広報担当者は話す。
「うどん県」で売る香川県は、外国人対応にも気を配っていた!
香川では、外国人もうどんの食べ歩きができるインフラ整備が進んでいる。
2011年から、民間のバス会社が「うどんバス」走らせている。有名うどん店と観光地を巡るというもの。観光地を挟みながらうどん店をハシゴし、店ごとの微妙な味の違いを満喫してもらう。半日コースと、週末には丸1日コースがあるが、年間利用者の2割程度は外国人だ。利用者は年々増加しており、外国語の案内も車内に置いてある。
さらには「うどんタクシー」と呼ばれるものもある。タクシーには目印となるうどん鉢の行灯(あんどん)が乗っている。専任ドライバーは、うどんについての豊富な知識を持つ。
また、レンタカー需要も伸びている。
韓国からの旅行者は、2泊3日の日程が多く、香川県内をピンポイントでまわる。一方、台湾からの旅行者の旅程はもう少し長く、4泊5日程度だ。四国を一周する人や瀬戸内エリアを周遊して広島に渡るなど、行動範囲が広い。いずれにしても香川県内では、うどん店に数軒は立ち寄るという。
香川県では、増加する外国人向けに、多言語の観光冊子を作成して配布しているが、冊子の中で、うどんについてもふれている。言語は、英語、フランス語、韓国語、中国語(繁体字、簡体字)がある。
B級グルメも体験の時代に突入か?
外国人向けに食を味ってもらうだけではなく、作り方を教える体験も人気があがっている。
「うどん作り体験」ができる「中野うどん学校」が、「こんぴらさん」の愛称で知られる観光地、金刀比羅宮(香川県琴平町)の門前町にある。台湾や韓国のツアー行程に組み込まれていて、生地を踏んだり、麺棒で生地を伸ばしたりして楽しみながらうどんを作り、最後はできあがったうどんを試食する。
うどん作りには、生地を足で何度も踏んで、コシを強くする行程がある。その際に、音楽を聞きながらリズミカルに打つとおいしくなるそうだ。参加者に応じて曲を変え、出身国の人気の曲を流して、気分良く楽しんでもらえるように工夫する。
また、広島には …(後編へ続く)
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