インバウンド特集レポート

2024年米国市場、超富裕層、高級クルーズでの地方消費へ期待。若手DMCの台頭にも注視

2023.12.20

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本格的なインバウンド再開から1年が過ぎた。円安と旺盛な海外旅行需要、日本人気などに支えられて訪日客数は急速に回復、インバウンド消費も大きく伸びた1年だった。2023年を振り返り、2024年はどのような1年になるのか。各市場の専門家による市場予測と観光・インバウンドに携わる事業者に向けてのメッセージを紹介する。

 

2024年インバウンド動向予測 

 

Project M, Inc. 代表取締役 森井 恵子

 

 

訪日需要堅調な米国、旅行雑誌やコンソーシアムでも「日本」が注目集める

米国からの訪日客は2023年1~10月の累計で167万7900人と、2019年同時期から17.3%増、10月単月では21万1900人と、2019年同月比38.2%増で過去最高値を記録。日本行きの航空運賃や日本国内宿泊費用の高止まり、日本国内DMC・サービス人員不足が引き続き課題となっている中でも、訪日旅行需要は依然として高まっています。

米国の大手旅行雑誌『コンデナスト・トラベラー』が2023年10月に発表した読者投票ランキング「リーダーズ・チョイス・アワード」の「世界で最も魅力的な国」において、日本が第1位に選出されました。併せて、富裕層を顧客に持つ旅行エージェントや旅行会社が多く加盟する大手コンソーシアム、バーチオーソの2024 Virtuoso Luxe Reportでは、「再び注目を集めている旅行地」で日本が1位となっており、米国の一般消費者、メディア、旅行業界の間で訪日旅行は大きな注目を集めています。富裕層を中心に、2024年は2023年以上に米国からの訪日客増加の可能性が考えられます。

 

米国旅行市場のカギ「超富裕層」「クルーズ」「中南米市場」

米国での訪日旅行需要が高い事は2023年以前からも指摘されていますが、1.富裕層のトップ数パーセントを占める超富裕層、2.クルーズ旅行客需要、3.メキシコなどの中南米市場が今後のカギになってくると考えています。

プライベートジェット等を活用する超富裕層は旅行にかける支出が突出して高く、旅行地での消費額増加・経済効果が見込まれます。クルーズについては、高級豪華クルーズの人気が高く、あるクルーズ運航会社によると、2024年の日本周遊商品は完売との声も聞かれ、地方誘客および地方での経済効果が期待できます。さらに、メキシコや中南米における訪日需要は急速に高まっています。

2023年1~10月累計のメキシコからの訪日数は7万5700人と、2019年同時期から28.8%増、10月単月では1万2500人で、2019年同月比69.3%増と急増しています。米国市場に比べまだ非常に小さい規模ではありますが、中南米には米国に劣らないレベルの富裕層も多く、ポテンシャルの高い市場として中長期的な販売戦略に盛り込んでおきたいところです。

 

コロナ禍以降増加する若い世代の旅行エージェント動向に注視

米国・中南米の様々な旅行事業者とやりとりする中で、インバウンドビジネスを伸ばしていく為の必須事項の一つに、日本の旅行会社・DMCのスピード感ある対応やコミュニケーションが挙げられます。

また、分かりやすく使いやすい英語ウェブサイトの構築が今まで以上に重要なポイントとなっています。コロナ禍以降若い旅行エージェントが増えており、DMCを使わず、施設や訪問先のウェブサイトやアプリを駆使してスピーディーに情報収集・予約をする傾向にあるため、使いやすい英語ウェブサイトを用意する事は販売増加を補完する上で重視すべき要素といえます。

加えて、自社サービスや商品・観光資源が米国人ターゲットの目線からみて魅力的なのか、他社や他の訪問地と十分に差別化出来ているかについて客観的に検証・評価・改善する事も引き続き重要になります。

 

著者プロフィール
米国ロサンゼルスを拠点とする広告会社Project M, Inc.代表取締役。日系ゴルフ会社米国法人駐在員を経て米国ロサンゼルスで広告会社を設立。最新の北米市場情報や、広告・エンターテインメント媒体各社との密接な関係を活かし、米国富裕層市場を中心に、包括的で発展性のあるメディア・マーケティング戦略とクリエイティブソリューションを提案。日本政府観光局、東京観光財団等の米国における各種訪日観光需要喚起広告事業に関し通年15年以上の実績を持つ。その他中央省庁の有識者評価事業、富裕層向け各種メディアイベント、日本食文化魅力発信事業等も手掛ける。

 

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