インバウンド特集レポート
本格的なインバウンド再開から1年が過ぎた。円安と旺盛な海外旅行需要、日本人気などに支えられて訪日客数は急速に回復、インバウンド消費も大きく伸びた1年だった。2023年を振り返り、2024年はどのような1年になるのか。各市場の専門家による市場予測と観光・インバウンドに携わる事業者に向けてのメッセージを紹介する。

doq Pty Ltd アカウントプランニング スーパーバイザー 須多 康太
平均年収10年で1.5倍、アジアの旅行先で日本が人気ナンバーワン
夏のクリスマスが街を賑わせる12月、シドニーの街ではカラフルなイルミネーションと多くのイベントが開催されており、コロナ明けの盛況を感じることができる。
統計情報では、豪州の海外旅行市場に関して、直近で発表されている2023年8~10月の3カ月のオーストラリア人の海外旅行者は2019年同期間比較で約92%戻っており、ほぼ市場が回復したと言える。また、訪日外客数については、2023年6月以降、2019年同月比プラスが続いており、順調に伸長している。
最近はワーキングホリデーや高賃金など、日本のニュースでもオーストラリアに関する情報を目にすることが増えた。実際にオーストラリアの経済成長は目覚ましく、平均年収はこの10年で約1.5倍となり、今後10年間で2600万人から3000万人へ、約400万人の人口増が見込まれる成長市場である。
さらに豪州は欧米豪の中ではアメリカに次ぎ、訪日数が多い国である。またアジアの旅行先としての日本の人気は2014年以降1位を継続している。そのため、私たちのクライアントでも、豪州市場をトッププライオリティと考えて年間マーケティングを計画する会社が増えている。
新しい地域への旅を好むオーストラリア人、地方観光拡大への期待も
最近、豪州の旅行会社やジャーナリストと話す中で、以前よりも日本の地方に対する関心が強まっていると感じる。彼らが口を揃えて言うのは、オーストラリア人はまだ観光客が少なく新しい地域への旅を好むということである。
実際にスキーで有名となったニセコも白馬も、初めはオーストラリア人が行き始めたことで有名となった観光地である。今後、ゴールデンルートの旅を終えたオーストラリア人がより好んで地方を旅することが予想されるが、各地方がどのようにして彼らを呼び込めるかが重要だと考えている。
日本のホスピタリティに対する彼らの評価は押し並べて高く、シドニーやメルボルンで日本酒の大規模なイベントが開催されるなど、年々オーストラリアの日本文化への興味の深まりを感じる。
2024年はオーストラリア人をきっかけに、これまで以上に地方観光が盛り上がることを楽しみにしている。
| 著者プロフィール 兵庫県出身、シドニー在住。リクルートを経て、楽天グループ 旧 Voyagin にてインバウンドソリューション事業の統括を担当。博報堂スタートアップスタジオにて、大手企業の新規事業開発のコンサルティングに従事した後、 doq に参画。行政案件を中心に、プロジェクトマネジメントを担当。 業務実績に観光庁、 JNTO 、環境省、東京都、岐阜県、青森県、せとうち DMO 、TCVB 等。 |
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