インバウンド特集レポート
本格的なインバウンド再開から1年が過ぎた。円安と旺盛な海外旅行需要、日本人気などに支えられて訪日客数は急速に回復、インバウンド消費も大きく伸びた1年だった。2023年を振り返り、2024年はどのような1年になるのか。各市場の専門家による市場予測と観光・インバウンドに携わる事業者に向けてのメッセージを紹介する。
BANGKOK PORTA CO.,LTD. 代表取締役 井芹 二郎
東南アジア最大の訪日市場タイ、都市部から回復進む。福岡が人気旅行地
2022年10月の訪日旅行再開から1年が経過した。東南アジア各国も回復から正常化への過渡期の1年であった。最新2023年11月の訪日外客数をみると、東南アジア・南アジアの訪日成長が著しい国では回復が進んでおり、1-11月の累計では、2019年348万人に対して、2023年は330万人だった。東南アジア全体の中で最も比重の大きいタイは87万人で、2019年の数値115万人には届かなかったものの、順調に回復基調にある。東南アジア圏で最も回復基調にあるのは、シンガポール47万人(2019年同期比122%)、ベトナム53万人(2019年同期比116%)となっているが、タイの累計87万人とは開きがあり、東南アジアにおいて、タイが未だ訪日人気のナンバーワンであることには変わらない。
現在、直行便の増設や経由LCC便の日本各地への就航を念頭に入れると、2024年は、タイと日本をつなぐ便のキャパシティーは増加傾向になるであろう。弊社が認識している限りで訪日旅行を販売する旅行会社は、現在200-300社程度あるが、それにリテイラー(小売り)といわれる小規模のエージェントを入れると1000社を超えるといわれている。コロナ期間中は、これら全ての旅行会社の人員・体制がリセットされてしまい、特に大手旅行会社は2023年に体制の立て直しを行った。知合いの旅行会社に2019年と比べて、どの程度売り上げ送客が回復したかと質問すると、「やっと同じくらいの売り上げになった」「まだ、半分程度の売り上げ」とする会社もあり、肌感では、6割~8割程度の回復状況でないかと考える。
日本旅行の行先も直行便のある東京、名古屋、大阪と福岡、北海道を軸に旅行会社の送客が進んでいるようである。とくに最近聞くのは、福岡の優位性である。LCC便を含む直行便が早々に就航したのと、時間・航空料金などの優位性からタイ旅行会社や個人の観光客に支持されているようである。
逆に東北エリアは、造成支援などのPRは積極的であるが、コロナ前に送客された勢いが戻りにくく、仙台直行便の復活が大きく望まれるところである。
2024年のタイ人、「まだ見ぬニッポン」を探して日本を駆け回る
日本観光事業者に求められるのは、タイ側の旅行会社のニーズにどれほど答える準備体制が整っているかだと思う。タイの訪日旅行会社とは、2023年だけで80社以上に面会して話をしているが、「ホテル予約がしにくい」「ホテルや航空券がハイピークにとても値上がりしている」といった手配に関するものから、「法人旅行向けの業務視察ポイントや協力してくれる企業を知りたい」「観光団体旅行で使える飲食店・レストラン情報が知りたい」など情報提供を求めるもの、「団体を複数送客するので自治体で歓迎のサポートやギブアウエイのサポートをしてほしい」「宿泊・観光の助成支援金の仕組みを知りたい」といった支援への要望など、多岐にわたる。
2024年は、全体の訪日回復がさらに見込まれると考えるが、タイ人の訪日旅行者は、日本のまだ行ったことのない観光地や新しい情報に敏感に反応すると考える。2-3年前にとあるインフルエンサーが発信した京都の片田舎にある伊根町は、その素朴な景観や小さな町のほのぼのした雰囲気がタイ人にバズり、旅行フェアに来場したタイ人何十人から「行先」「モデルコース相談」を受けた。このような可能性のある観光地は、日本の他の地域にも多くあるのではなかろうか。
観光地を上手に情報発信してくれるインフルエンサーや日本在住タイ人の協力を得て、自らの街の魅力を発信してみてはいかがであろうか。回復期の初年に直行便が就航する空港から流入したタイ人は、2024年には、「まだ見ぬニッポン」を探して日本中を駆け巡ると思っている。
著者プロフィール 熊本県生れ。2008年タイ・バンコクにPR/企画会社バンコクポルタ設立。タイ訪日旅行会社200社以上・メディア・インフルエンサー500社以上を活用して日本インバウンドPRをする。インバウンドトラベルサポート、生活商材マーケティング、業務視察・サーベイ、イベント支援。地方自治体、観光協会などの業務実績多数。バンコク日本博 トラベルインバウンド専門員。食のコラムニストなど。 |
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