インバウンド特集レポート

所得水準高まるベトナム、2024年は30代経営者向けツアーなどニッチな高単価商品にも期待

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本格的なインバウンド再開から1年が過ぎた。円安と旺盛な海外旅行需要、日本人気などに支えられて訪日客数は急速に回復、インバウンド消費も大きく伸びた1年だった。2023年を振り返り、2024年はどのような1年になるのか。各市場の専門家による市場予測と観光・インバウンドに携わる事業者に向けてのメッセージを紹介する。

 

2024年インバウンド動向予測 

 

株式会社グローバル・デイリー 代表取締役社長 中原 宏尚

 

 

高単価プライベートツアーと低単価ゴールデンツアーの二極化進む

ベトナムは南北に長く、大きく分けて北部・中部・南部で傾向と対策が異なるが、今回は北部の動向についてお伝えする。

ハノイを中心とするベトナム北部の訪日旅行需要は、コロナ禍前と比較して変化が出てきている。まずは、他国と同様に、以前のようなゴールデンルートを中心とするパッケージツアーでは、集客が困難になる旅行会社が増えている点だ。旅行者はプライベート感があったり、アレンジの利く高単価ツアーを求めるようになってきている。

ベトナムでは、著しい経済成長が現在も続いており、大都市圏の所得水準が急激に増加している。そのため、コロナ禍以前に、訪日旅行のターゲットだった消費者の所得水準が上がり、多少値段が高くても、プライベート感を求めるオリジナルツアーを求めるようになったことも影響していると考えられる。

一方で、一部ローカルエージェントによって低単価で販売されている訪日ツアーが完売するなど、それまでは訪日旅行より安価なタイやカンボジアへ出掛けていた層も訪日するようになったというのが、最近の傾向だ。

また、業種にもよるが、企業のインセンティブでの訪日旅行は、需要が戻ってきており、2023年は、桜(4月)、ベトナムの夏休み(8月)、紅葉(10月)の時期を中心に、日系進出企業の訪日団体旅行の催行が活性化している。

2023年は訪日査証の申請件数が急増し、北部大都市圏だけで1カ月平均500件程度の申請あった。主に、訪日指定代理旅行会社になっていない、小規模のローカルエージェントからのビザ手配依頼が急増した。つまり、小規模のローカルエージェントが顧客とする低価格のツアーを利用していたユーザー層が、従来型の低単価の訪日ツアー(従来型)に参加するようになり、査証申請の急増につながっていると推測する。加えて、昨今の円安も、ベトナム人にとっては追い風となっている。

 

ベトナム中部でのビザ申請、団体E-VISA解禁が訪日拡大のカギに

査証に関して言えば、ベトナム中部のダナン領事館でも訪日ビザの申請ができることになり、周辺のフエ省・クアンナム省などからのビザ代行申請依頼件数も、月ごとに増えているようだ。ある旅行エージェントでは、訪日ビザ申請専任のスタッフを雇用したという話も聞く。

こういった背景から2024年を展望すると、中部エリアのベトナム人が多く訪日することが予想される。中部エリアは、ダナン国際空港と関西国際空港、成田空港、羽田空港を結ぶ直行便があり、この空港近隣の観光事業者の皆様は、中部エリアのベトナム人をターゲットに戦略を立てることもおすすめする。

また、2023年11月より、団体旅行に限りE-VISA申請の解禁が始まっていることにも注目したい。運用を開始したばかりで、今後も継続されるのかどうか、FIT向けのE-VISAに転換されるのかどうかといった点はいまだ不明な状況だが、いずれにせよベトナム人の訪日旅行に対する最大の弊害が、この査証申請手続きの煩雑さであることは間違いない。

このE-VISA申請がスムーズに運用されれば、訪日ベトナム人100万人も現実味を帯びる。かつてのタイのように、ベトナムも十分なポテンシャルを備えている国であるのだ。

 

旅の多様化進む、経営者向けニッチなツアーなどの開発も

コロナ禍を経てベトナム人の旅行形態が変化したことは冒頭でも触れたが、具体的にいうと、温泉などを目的としたアレンジツアー、小家族×2グループなど10名前後のプライベート旅行なども見かけるようになった。また、活発になってきたのが医療ツーリズムで、健康診断・人間ドッグを受けて、ベトナム語での診断書の発行できる日本の病院も、増えてきているようだ。

ベトナムは、富裕層になればなるほど、ベトナム語での対応があるとより満足度が高く、再度訪問したいというリピーターになる傾向がある。そのため、ベトナム人スタッフを採用できれば理想的だが、それが難しい場合、自動翻訳機などでベトナム語対応ができるということを自社の強みとして情報発信すれば、ベトナムのエージェント側に対するセールスポイントになる。

繰り返しになるが、「ベトナム人」と言えども、北部・中部・南部で、商習慣も言語も異なる。そこで、ベトナム人を地域別にまで落とし込んで把握することをおすすめする。他のインバウンド大国ですらそこまでは対応していないが、日本ならではのおもてなし精神を持つ訪日事業者なら、そこまでのレベルを多様にこなせると考える。

最後にお伝えしたいのは、ベトナム人は「歓迎」されることをとても喜ぶということだ。ホテルの入り口、空港の到着口、レストランの入り口などなどに、「来てくれてありがとう」「みなさんを歓迎します」という垂れ幕を掲げるだけで、リピーターになる確率が飛躍的に上がる。実際、現地旅行会社からもよくそのような対応を求められる。

現在、我々は、ある旅行エージェントと、日本へのイノベーショントリップを企画開発している。30代のベトナム人経営者を中心に、日本の企業経営者のセミナーを受けたいという希望があるからで、創業70年〜100年という歴史のある企業経営者を中心に現在調査を進めている。もちろん、まだとても小さなニッチツアーだが、そういった需要が生まれていることもお伝えしたい。

 

著者プロフィール
米国ロサンゼルスを拠点とする広告会社Project M, Inc.代表取締役。日系ゴルフ会社米国法人駐在員を経て米国ロサンゼルスで広告会社を設立。最新の北米市場情報や、広告・エンターテインメント媒体各社との密接な関係を活かし、米国富裕層市場を中心に、包括的で発展性のあるメディア・マーケティング戦略とクリエイティブソリューションを提案。日本政府観光局、東京観光財団等の米国における各種訪日観光需要喚起広告事業に関し通年15年以上の実績を持つ。その他中央省庁の有識者評価事業、富裕層向け各種メディアイベント、日本食文化魅力発信事業等も手掛ける。

 

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