インバウンド特集レポート

着地型観光が花盛り! 世界シェアを狙え ユニークな体験がビジネスになる

2015.03.04

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特集レポート

ここ最近、着地型観光の情報サイトが花盛りとなった。上場する会社、株価をあげた会社、昨年は売り上げを対前年比8倍にした会社、数億円の資金調達をした会社、異業種からの新規参入などなど。着地型ツアーを取り巻く世界は、今が熱い!

目次:
着地型観光がビジネスになる時代到来か!
2014年後半から売り上げ8倍をいかに増ばしたのか!
きめ細かいサービス体制が支持を集めた
海外の商品掲載量が今後の課題
日本語のみのサイトでも既に問い合わせが拡大中
マーケティング力を加えると化学反応した!
参加しやすい体験をいかに供給するか
着地型観光の伸びしろはどこまであるのか?

着地型観光がビジネスになる時代到来か!

インバウンド業界で、2000年代に着地型観光に目をむけた大手旅行会社があった。いずれも苦戦続きで、撤退した会社もある。
それが、ここへきて着地型観光のブームが到来といった様相だ。
「Voyagin(ボヤジン)」は売り上げを8倍に伸ばし、「WannaTrip(ワナトリップ)」の株式会社アドベンチャーは東証マザーズへの上場を昨年末に果たした。

ここの分野は海外勢を含めて群雄割拠の状態だ。世界シェアを狙うチャンスがある。ホテルの予約については、エクスペディア、booking.com、アゴダ等に世界シェアを大きく取られている。ここからの日本勢の巻き返しは厳しいだろう。そもそもbooking.comについては、オランダの学生がガレージでスタートしたプロジェクトだったが、わずか数年で大きく離されてしまったのだ。
差が開いた理由は、日本のOTA(オンライントラベルエージェント)は世界を見ていなかったのが最大の理由だ。国内需要だけで満足していた。

一方、着地型観光の情報サイトについては、海外勢としては、アメリカの「Viator」と「Get Your Guide」が一歩リードしているが、追いつけないほど、水をあけられていない。今ならまだ間に合う。

そいうこともあってか、着地型観光のプラットフォームへの期待度が高い。資金が集まりやすい環境だ。

昨年の12月に、東京証券取引所マザーズ市場への新規上場を果たした株式会社アドベンチャー。OTAとして、格安航空券予約サイト「skyticket」というサービスと「WannaTrip」という着地型観光のポータルサイトを運営している。

「skyticket」は、7年前にサービスがスタート。横断一括検索メタサーチができるのが特徴で、日系LCC含めた航空会社別の横断検索機能が可能。業界最安値の航空券をストレスなく探すことができる。
「WannaTrip」は、昨年の2014年9月にサービスがスタートした。18か国語の言語に翻訳され、世界の様々な国においてサービスを展開している。スキューバダイビングや遺跡ツアーなど1,000以上の商品を取り扱っている。 他社では取り扱っていないような珍しい商品もある。

2014年後半から売り上げ8倍をいかに増ばしたのか!

急速に売り上げを伸ばしているのが、「Voyagin(ボヤジン)」だ。
https://www.govoyagin.com/?lang=ja
こちらは、「WannaTrip」より古く、前身のFindJPN(ファインドジャパン)から数えると3年になる。アジアの50以上の地域で約1620件の体験ツアーを提供していて、月に数千件の成約がある。 ここ半年間に売り上げが8倍になるくらい急成長しているという。

「最初の2年ぐらいは動きがなくて、2014年に入って一気に伸びた」と代表の高橋理志氏。

運営しているエンターテイメント・キック株式会社は、訪日外国人旅行者向けの情報サイト「FindJPN」を2011年8月に開設。さらに2012年12月に、対象エリアをアジア各国に広げ、日本、インド、東南アジア諸国で“現地体験”を予約購入できる旅行サイト「Voyaging」をスタートした。

昨年の後半からブレークした理由について、高橋氏は、まずはコンテンツの数がそろってきてSEOが効いてきたことだと指摘。
SEOが強くなったことにより少しずつユーザーが増え、徐々にレビューも増えてきた。
そうすると自然とコンバージョン率も上がっていった。

さらに飛躍したきっかけは、売れ筋商品の登場が大きいという。

「例えば歌舞伎町の“ロボットレストラン”には、毎日たくさんのお客さまをお送りしています。10分の1は僕ら経由のお客さまなのかなと思います」と高橋氏。

それ以外に人気があるのは、相撲の稽古場や築地見学ツアーだ。シーズンによってすごく売れるものもあって、それらに対してレビューが付いてくるとSEOが強くなるという。

きめ細かいサービス体制が支持を集めた

Voyagingは、メールだけではなく、立体的な対応でブッキングにつなげている。それも売り上げ増の要因だ。

サイトを回遊すること自体が面倒という人がたくさんいると高橋氏。そういう人に対してはチャットウインドウが開かれるようになっていて、何を買おうか迷っている人、見込みが高い人に対してはすぐに電話に切り替えて、どういう状況なのか要望をしっかり伺う。しっかり話を聞いて、オススメの商品を紹介するのだ。

ユーザーとのやり取りは、チャットと電話がメインで、それプラスメールとなる。ただ、チャットとメールだと往復が多くなってお客さまにも迷惑をかけてしまうので、電話でやった方がいいケースは、どんどん電話で対応するそうだ。

サポートは、ほとんどが英語対応だが、ネイティブスピーカーが担当しているというのがポイント。日本人が頑張ってつたない英語でサポートするよりも、コミュニケーションに支障がないレベルで接し、お客さまの信頼を得る。

海外の商品掲載量が今後の課題

現在は8カ国・地域で展開しているものの、売れている商品は日本での体験が多く、全体の8割ぐらいを占める。
日本以外の地域では、スタッフが現地に行っている。海外事務所は構えていないので、ホテル住まいをしながら滞在中に1日5件ぐらいアポを取ってとにかく人と会う。

「僕らのベンチャーキャピタル(VC)は幸いにもほとんど事業内容に干渉しないタイプだったのも良かったです。簡単にマネタイズできるビジネスをやれとか、介在してくるVCだったらビジネスモデルは変わっていたと思います。」と出資者との良好な関係も躍進の要因だろうと高橋氏は分析する。

また、インバウンドが成長すると思ってこのビジネスを思いついたわけではなくて、ただ好きなことを形にしたかっただけだと振り返った。

日本語のみのサイトでも既に問い合わせが拡大中

ところで、日本国内の着地型ツアーに特化している「ASOViEW!(あそびゅー!)」が、ついに英語版の準備を始めた。初夏のリリースが目標だ。

http://www.asoview.com/
こちらは、現在、日本語版しかないにも関わらず、既に多くの外国人の申し込みがあるという。

2015年の1月末現在で、4,326の着地型ツアーが登録掲載されている、日本最大級の予約ポータルサイトだ。北海道から沖縄まで多くのツアーを検索・予約することができる。
掲載ジャンルは日本文化体験、アウトドア、東京の下町歩き、静岡のパラグライダーなど多岐にわたる。
なぜ、外国人から問い合わせや申し込みがあるのか。

申し込み経路は現地旅行会社の場合と個人の場合との2通りある。前者は、訪日予定のクライアントが、日本でできる体験の紹介・手配を旅行会社に依頼するケースだ。「ASOViEW!(あそびゅー!)」にはたくさんの情報があることが、海外からの相談の決め手になるそうだ。

個人顧客の場合は、多彩なアクティビティの中から、やりたい体験が見つかることが多いのだろう。「ASOViEW!(あそびゅー!)」を運営するカタリズム株式会社、代表の山野智久氏はそう分析する。

この会社は、山野氏がリクルートを退職後、2011年3月にスタートさせた。当時27歳だった。

「ASOViEW!(あそびゅー!)」のサービス開始時は、84プランしかなかったそうだ。

掲載プラン数を増やすため、自ら沖縄まで行き、アクティビティ事業者に説明して回った。「実際のサイトがまだ完成していないのだから、理解してもらうのが難しかった」と、当時を振り返る。

このサイトへの認知度は順調に高まり、2013年3月には約1,200プラン、2014年3月には2,300プラン、そして今年の2015年3月には5,000プランになる見込みだ。

昨年の3月には複数社から2億円の資金調達が実現し、加速していった。

掲載は基本的に無料で、予約手数料を受け取るビジネスモデル。
ユーザー目線に立って、いかに魅力的に訴求するか。そのために紹介文の作成や写真の加工も行う。
このような作業もあるため、新規の登録は、長くて約1か月待ってもらうこともある。

英語サイトの準備については、全部を英語に翻訳するということではないと山野氏。
受け入れが英語対応可能なところから始める。
また、今後、外国人受け入れを試みたいと考える事業者もサポートする。英語での予約代行や電話受付もサービスメニューになる。 組み合わせ次第では、受け入れ環境の整備も進むのではないかと、連携についても構想を練っている。

またサイトコンテンツについて、案内の文面を単純に翻訳するのではなく、日本の文化を理解していない前提で、説明が必要となる。サクラの色といっても海外ではわからない人も多い。タイの人に足利尊氏といっても通じないであろう。日本人だと当り前と思うことにも、気を配る。

ゆくゆくは、多言語も視野に入れるが、まずは英語でしっかりと実績を出したい。初年度は3万人の利用が目標だ。

(Part 2へ続く)

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