インバウンド特集レポート
日本政府観光局(JNTO)の統計によると、ここ数年、秋に日本を訪れる外国人が増えている。理由のひとつは紅葉だ。桜と同様、日本を彩る魅力である紅葉は、なぜ外国人観光客の心をつかむのか。海外で日本の紅葉はどのように伝えられているか。外国人向けの正しい紅葉の伝え方とは。
9月下旬、中国語通訳案内士の水谷浩さんがガイドを務めるマレーシアからの華人グループは大雪山系にいた。「札幌から入ってトマムや富良野、旭川をめぐる。紅葉の見どころは富良野や大雪山。日本でいちばん早く紅葉が見られるのがポイント」だという。
水谷さん率いる中国語通訳のプロ集団で形成される彩里旅遊株式会社では、中国本土や華僑として海外に在住しているVIP華人の訪日旅行手配を扱っている。ここ数年、9月下旬から10月中旬にかけては北海道でのガイド業務の引き合いが多い。紅葉を見たいという華人客が増えているからだ。
訪日客が多く訪れるのは、春より秋⁉
これまで訪日外国人旅行市場は繁忙期と閑散期に分かれ、春や夏が多いとされていた。ところが、ここ数年、秋や冬に日本を訪れる外国人が増えており、1年を通して満遍なく彼らの姿を見かけるようになっている。日本政府観光局(JNTO)によるこの5年間の月別外客数のトップ3を調べると、以下のとおりである。
◆月別訪日外客数トップ3(2012年~16年)※外客数と( )は前年同月増比
<2016年>
1位 7月 2,296,451人(19.7%)
2位 10月 2,135,904人(16.8%)
3位 4月 2,081,697人(18.0%)
※11月は1,875,404人(13.8%)で11位
<2015年>
1位 7月 1,918,356人(51.07%)
2位 10月 1,829,265人(43.87%)
3位 8月 1,817,023人(63.87%)
※4月は1,764,691人(43.37%) で5位、11月は1,647,550人(41.07%)で6位
<2014年>
1位 10月 1,271,705人(37.07%)
2位 7月 1,270,048人(26.67%)
3位 12月 1,236,073人(43.07%)
※4月は1,231,471人(33.47%)で4位、11月は1,168,427人(39.17%)で5位
<2013年>
1位 7月 1,003,032人(18.47%)
2位 10月 928,560人(31.67%)
3位 4月 923,017人(18.47%)
※11月は839,891人(29.57%)で10位
<2012年>
1位 7月 847,194人(50.97%)
2位 4月 779,481人(163.57%)
3位 8月 774,239人(41.77%)
※10月は705,848人(14.67%)で4位、11月は648,548人(17.67%)で11位
月別では、東アジアの国々が夏休みに入る7月がほぼトップを占めているが、中華圏が春節休暇に入る1月~2月、桜の開花や欧米のイースター休暇が重なる4月よりも10月が多いことがわかる。10月は中国の国慶節休暇に入るので、訪日客数トップの中国客が全体の数を押し上げるとはいえ、肌感覚でいうと街に外国人観光客があふれていることを強く感じる桜のシーズンより多いのだ。年々月別の数の差が縮まり、年間を通じた平準化が進んでいる。
紅葉が外国人観光客を魅了する⁉
では、なぜ秋に日本を訪れる外国人観光客が増えているのだろうか。
訪日外国人の団体から個人への移行が進み、とりわけアジアからのリピーターが増えたことから、繁忙期の夏ではなく、日本旅行の時期を秋にズラす層が現れていることが考えられる。日本人が8月ではなく、9月以降に遅めの夏休みを取るというのと同じだ。近年、日本の夏は相当蒸し暑いので、旅行に適しているとはいいにくい。アジアの国から訪れる旅慣れた人たちは、できれば涼しい日本を体験したいだろう。
もうひとつの理由は、海外で日本の紅葉の魅力が広く伝わったことが考えられる。

河口湖からみる富士山と紅葉(HIS提供)
「万葉集」や「源氏物語」などの古典や「百人一首」でもおなじみのように、日本人は古来もみじ狩りを楽しんできた。
紅葉が見られるのは落葉樹だけで、日本など東アジアの沿岸部やヨーロッパの一部、北アメリカの東部に限られるという。なかでも日本は落葉広葉樹の種類が多く、紅葉の見どころが多いのだ。
では、訪日客はどのような紅葉ツアーを楽しんでいるのだろうか。Part2では、旅行会社が企画する、外国人向けの紅葉ツアーの内容を見ていく。
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