インバウンド特集レポート
イギリスが訪英外客数を着実に伸ばしている。英高級日刊紙『インディペンデント』(The Independent)によると、今年1〜3月の第1四半期の旅行者数は、約830万人で、この数は昨年比10%増にあたり、同期間では史上最高の数値だ。特に中国からの旅行客数は、昨年から27%の伸びをみせ5万4千人を記録し、その消費額は9100万ポンド(約136億5千万円)に上った。
好調のわけは、Brexit(Britain Exit:英国のEU離脱)に起因するポンド安の影響も大きいが、イギリスが官民共に中国人観光客をターゲットに積極的に働きかけてきたことを見過ごしてはならない。
英国観光庁による伝説的な中国人誘致キャンペーン
英国観光庁(VisitBritain)は2015年、2020年までに中国人観光客の消費額を2倍にすることを目標にキャンペーンを仕掛けた。”GREAT Names for GREAT Britain”と銘打ったこのキャンペーンは、世界中で260以上のメディアに取り上げられ、伝説のキャンペーンとなった。「ニックネームをつけるのが好き」と言う中国人の好みの傾向に着目し、イギリスの観光地に中国名をつけてもらうと言う企画だ。
キャンペーンサイトへのアクセスは200万以上、投稿されたニックネームは1万3千を超えた。採用されたニックネームは中国版ウィキペディアやグーグルマップに掲載されている。
当時の英国観光庁マーケティングディレクターJoss Croft氏は「中国人が英国人と共に歴史を作ると言う、今までになかった機会を作ることで、英国との距離がぐっと縮まるだろう」と述べた。このアイディアが中国人観光客の心を掴み、キャンペーン後イギリスへの中国人観光客は27%増加した。
高級ブランドバーバリーは攻めの姿勢
イギリスの代表的なファッションブランド、バーバリー(Burberry)は、2015年の春節前に、「福」という漢字が大きくあしらわれたマフラーを発表するなど、中国市場に対して攻めの姿勢を見せている。
西洋的なデザインを好む中国人は、この商品には冷ややかだった。また、春節には「福」の文字を上下逆さまに掲示する習慣があるが、その「倒福」がマフラーのデザインに反映されていなかったことも「中国文化を理解していない」とされた。
そのバーバリーが、2017年第二四半期(4月〜6月)のグローバルセールスを、4%跳ね上げた。香港の英字紙『South China Morning Post』によると、大規模なWeChatへの広告が功を奏し、中国での売り上げ増に成功したのだ。WeChat は中国版LINEともいわれるコミュニケーションアプリで、ユーザー数は中国国内で約7億人、Wechat Payと呼ばれる決済機能サービスも進んでいる。高級ブランド業界では、WeChatを駆使した戦略はまだ珍しいのだという。
偽物商品への警戒心も強く、オンラインショップよりも実店舗を重視する傾向もある。その中でバーバリーは、ファッションショー中に、目の前のキャットウォーク上を行くアイテムを、その場でオンライン購入できるシステムの導入など、デジタルマーケティングとセールスを大胆に結びつけた。
失敗を恐れずダイナミックに仕掛ける
イギリスの例から学ぶことは、まず「相手を知る」という基本を押さえた上で、ダイナミックに素早く動くことだ。中国の動きは早い。彼らが何を好み、今のトレンドはなんなのかを把握し、彼らの一歩先を行くユニークな動きを仕掛けるのは容易では無いが、うまくいけば確実に数字を伸ばすことができる。日本も、失敗を恐れずにチャレンジして行くことが重要だ。
(やまとごころ編集部)
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