インバウンドコラム
【コロナの先のインバウンド業界②】ビジネスの柱を奪われても、V字回復の準備を進める中国旅行業界 —フレンドリージャパン 近藤 剛氏
2020.03.18
新型コロナウイルスにより、大きな打撃を受けているインバウンド業界。この試練の時をどのように乗り越えていったらいいのか…。東日本大震災、SARSなど過去にも様々な困難をインバウンド業界は乗り越えてきました。そこで、インバウンド業界の各分野で活躍する方々に、“今なにをすべきか”をテーマに応援メッセージを寄せていただきます。
2回目は、中国インバウンドコンサルタントの株式会社フレンドリージャパンの近藤剛氏です。
コロナに負けない精神で、今を乗り越えよう ~止まない雨はない~
—コロナはどんなインパクトを与えているか
中国・武漢で今年1月下旬から表面化してきたコロナウィルスは予想を上回る勢いで影響が拡大し、中国国内では、1月30日までの春節休暇が延長・さらに延長となり、最終的には、2月はほぼ全ての企業の社員が、自宅待機・在宅勤務を余儀なくされました。
特に旅行業界では、1月25日に海外旅行販売中止が通達されたため、ビジネスの柱を奪われ、現在でも自宅待機が続いている状況です。
さぞかし旅行社の皆さんは落ち込んでいるのでは、と思われがちですが、普段忙しく睡眠も少ない彼らは、逆に、元気に活動しており、深刻さは感じられません。もちろん、経営面、収入面では大きなダメージを受けていますが、“今でも出来ること”、また“今だからこそできること”を前向きに取り組んでいます。弊社には、連日、『訪日資料を整理したいので観光情報を送って欲しい』とか、『社内スタッフ向けに訪日セミナーをやりたいので、PR動画や画像を提供して欲しい』といった声が頻繁に寄せられています。V字回復の準備はすでに進んでいるのです。
一方で、先日、中国政府高官は、「現在、中日両国はコロナウィルスによる肺炎の感染拡大を全力で防止・抑制すると同時に、感染状況が経済に与えるマイナスの影響を緩和すべく努力している。また中日両国は感染症との戦いで連携したことは、協力深化の新たな原動力となるものだ」、そして、「中国で感染が表面化した当初から、日本の各界は真っ先に支援の手を差し伸べてくれた。現在の日本の医療物資不足に対して、中国は、積極的にPCR検査キットやマスクなどの物資を緊急提供したい」と、異例とも思われる友好的な外交発言をしています。まさに、「山川、域を異にすれども、風月、天を同じうす」の精神のもと、中日の絆はより強いものになっています。
今回のウィルス問題が収束したら、必ず、訪日ブームが訪れることは間違いありません。
—過去のピンチを踏まえ、今回、どう対応しようとしてるか
過去にも、同じような世界規模の困難がありました。1991年に勃発した湾岸戦争、そして、2004年に猛威を振るったSARSで、平和産業である観光業は壊滅的な影響を受けました。しかしながら、どちらも問題が解決したのち、すぐにV字で回復し、収束後の1年間はマイナスをカバーするほどの好調期になりました。どちらも海外旅行事業に従事していた私自身も実際に体験したことであり、今でも生々しい記憶として残っています。
そこから考えると、今回の問題は、政治的、歴史的なことが原因であった尖閣諸島問題とは違います。しかも両国間の絆が強くなったことからも、必ずや、中国からの訪日客は驚くほどのポテンシャルを持って戻ってきます。
よって、今は、中国マーケットへの情報発信を止めないことが絶対的なセオリーだと断言できます。尖閣問題の時にさえ、中国への情報発信を止めなかった企業や自治体が、今、中国マーケットに受け入れられていることが、何よりの証です。状況が良い時は目を向けて、状況が悪くなると情報発信すらも中止するような姿勢では、絶対に信用されません。
—今だからこそ、やるべきことは
今は、ネガティブに考えてもどうにもなりません。
連日、マイナスの部分だけを繰り返し伝える日本のメディア報道に影響されずに、ポジティブな気持ちで、“今、出来ること”をやるべきだと思います。
一人一人が感染拡大を抑える努力をすることは大事なことですが、必要以上にネガティブにならず、前向きに行動していきましょう。
近藤 剛氏 |
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