インバウンドコラム
IATA、世界の航空収益は33兆7000億円の減少を予測
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、世界中の航空会社で運航が大幅に減少している。IATA(国際航空運送協会)は4月14日、今年1年間における世界の航空会社の旅客収益は3140億ドル(約33兆7000億円)減少し、前年比55%減となる試算を発表した。このリリースによると、今年は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて各国で移動が制限されていることから、4月上旬の時点で世界各地で運航された航空便の本数は昨年に比べておよそ80%減となっており、第2四半期(4〜6月)に最も深刻な影響が出てくると予想されている。さらに、国際線、国内線を合わせた旅客需要は、今年1年間で昨年比48%減と予想。IATAのドジュニアック事務局長は「見通しは日を追うごとに悪化している。V字回復は見込めない」と述べ、各国政府に航空会社への緊急の支援を呼びかけた。
経営破綻した豪ヴァージン航空の買収に、中国勢などが名乗り
こうした状況の中、オーストラリア第2位の航空会社ヴァージン・オーストラリアは21日、任意管理手続き(日本の民事再生法に相当)に入ったと発表し、事実上、経営破綻した。LCCなどとの競争激化により業績不振に陥っていた同社に、新型コロナウイルスによる需要急減が追い討ちをかけた。新型コロナの影響を受け、中小規模の航空会社では、3月に英地域航空会社のフライビーが経営破綻しているが、航空大手の破綻はこれが初となる。医療従事者など必要不可欠な人の輸送、貨物の輸送、オーストラリア人の帰国のため、国内線、国際線とも運航は継続される。
ヴァージン・オーストラリアは、豪政府に対して財政支援を求めてきたが、ヴァージンが経営破綻した同日、マコーマックインフラ・運輸・地域開発相は、「政府による財政再建はせず、市場先導型の解決を望む」と政府の姿勢を示した。赤字が続いており再建が困難なことに加え、株主の9割が外資で占めることも判断材料となったようだ。ヴァージン・オーストラリアは買収先を探し始めており、中国国際航空など10社以上が関心を示している。
ヴァージン・オーストラリアは、国内の運航を中心に運航しており、豪市場60%を占める最大手のカンタス航空に次ぐオーストラリア第2の航空会社として市場の約3割を占めている。最近では国際線にも力を入れており、全日空と連携して、3月29日より羽田-ブリスベン線を就航させる予定だったが、新型コロナウイルスの影響で、6月15日に延期していた。
イギリスのヴァージンアトランティックも新型コロナウイルスの感染拡大により甚大な影響を受けており、創業者のリチャード・ブランソン氏はこの危機を乗り越えるためには「政府の支援が必要だ」と発言。数週間前に数億ポンドの支援を申請したが、イギリス政府はまだ決断を下していない。
アメリカでは、航空10社に対して政府が2.7兆円の支援を決定
アメリカでも、航空大手のユナイテッドが米証券取引委員会(SEC)に提出した資料によると、1~3月期の税引き前の純損益が21億ドル(約2300億円)の赤字になる見通しであるなど、航空各社は厳しい状況が続いている。
米財務省が14日、新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けたアメリカン航空、デルタ航空、ユナイテッド航空を含む大手航空会社10社に対し、総額250億ドル(約2.7兆円)の支援を決定。9月末までの従業員給与を政府が事実上肩代わりする制度で、財務省は支援金の約30%を返済するよう求めて航空会社と交渉が進められていた。
2兆円の減収、日本の航空業界へも大きな打撃
世界的な旅客需要の大幅減は、日本の航空業界にも打撃を与えている。入国制限や国内移動の自粛で国内の旅客需要が大幅に落ち込んでおり、現在の状況が1年間続いた場合、国内航空業界全体で2兆円の減収になるとの見方もある。安倍首相は4月1日の参院決算委員会で、航空業界は日本経済の基盤インフラだとして、「しっかり支援していきたい」との考えを述べたものの具体的な支援策はまだ明らかにはなっていない。
こうした状況下でスカイマークは4月15日、東京証券取引所への上場申請を取り下げることを決定。全日空を傘下に持つANAホールディングスは、20日、2020年1~3月期の連結最終損益が594億円の赤字となる見込みであることを発表。同社は、日本政策投資銀行を通じて「危機対応融資」を活用し、3000億円規模の資金を調達する方向で調整も進めている。
世界初、エミレーツは新型コロナ検査を実施してからの搭乗を導入
アラブ首長国連邦(UAE)の大手航空会社エミレーツは、新型コロナウイルスへの対策として、4月15日に航空会社として世界初の新型コロナ検査を実施。ドバイ保健局と連携してチェックインエリアで血液を採取し、10分以内に結果が判明するキットを活用したという。この日はドバイ発チュニジア行きの便の全搭乗者を対象に行なった。
カナダ政府は4月17日、航空機を利用する乗客に対し、非医療用のマスク、もしくは口と鼻を覆うことができるフェイスカバーの携帯を義務付けることを発表。この措置は4月20日の正午から実施される。
(やまとごころ編集部・外島美紀子、深谷昌代)
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7/7 更新【新型コロナ:各国入国規制まとめ 】
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