インバウンドコラム

インバウンド誘致に積極的な東南アジア、マレーシア・ベトナムなどインド観光客取り込みへ

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観光業が経済を大きく左右する東南アジア諸国では、観光回復に向けた動きが加速している。中国が2月6日に団体旅行を解禁したことをうけ、中国人観光客の争奪戦が始まっているほか、地理的にも近く、経済成長と人口増加が著しいインド人観光客の誘致にも乗り出している。今回は東南アジアの中でもマレーシア、ベトナム、インドネシアにフォーカスし、現在の状況を紹介する。

 

マレーシア、世界からの観光客誘致に向け本腰

マレーシア政府観光局は2月12日から14日までイタリアのミラノで開催された国際観光見本市「BIT(Borsa Internazionale del Turismo)」に参加し、サステナブルなデスティネーションとしてのマレーシアの魅力を、ヨーロッパの市場に向けてアピールした。同局はコロナ後、ネイチャーツーリズム、サステナブルツーリズム、スロートラベルに焦点を当てた戦略を明確に掲げており、マレーシア政府観光局の局長はBITで「マレーシアにはセピロックオランウータン保護センターのあるサバ州、サラワク州、ムル国立公園など、真のエコツーリズムを体験できる地域が数多く存在する」と述べている。マレーシアは2023年にインバウンド観光客1560万人、インバウンド観光収入476億リンギット(約1兆4400億円)の達成を目指している。

マレーシアにはインドからのインバウンド客も増加しており、2023年には40万人という計画を立てている。なお、2022年1月~9月には、インドからの観光客数が約18万7000人に達したという。マレーシア政府観光局は、2月9日から11日までインドで開催された南アジア旅行見本市「SATTE」に参加し、ショッピング、ゴルフ、ラグジュアリーツーリズム、ソフトツーリズム、テーマパーク、ハネムーンパッケージなどのニッチな旅行商品を紹介した。

今年は中国からマレーシアへの観光客も期待される。マレーシアは中国政府が団体旅行を許可した20カ国に含まれており、今年は中国人観光客数500万人達成に向けて取り組んでいるという。コロナ禍前の2019年の中国人観光客数は310万人だったため、60%増を見込む。中国の団体旅行解禁やマレーシア政府の観光戦略を受け、マレーシアのLCCエアアジアは2月13日、クアラルンプールとコタキナバルと中国のマカオ、深セン、広州、昆明、上海、杭州、成都の7都市を結ぶ直行便を再開すると発表した。

 

ベトナム、コロナ後はインドからの観光客に期待

ベトナム観光局によると、同国では2022年に外国人観光客数が340万人超まで回復した。コロナ禍前の2019年までは外国人観光客数が順調に伸び、年間で約1800万人に増加したが、その後、新型コロナウイルスの感染拡大により激減し、2021年には3500人まで減少した。2022年は5月15日から入国規制を緩和したことで順調に回復した。ベトナム国家観光局は、2023年の外国人観光客数の目標を前年比約2.3倍増となる800万人に設定している。

国内観光客数の増加も著しく、2022年には1億100万人となり、コロナ禍前の2019年の8500万人の水準を大幅に上回った。ベトナム観光総局は、2023年の国内観光客数の目標を1億200万人に設定している。同国の観光業がGDPに占める割合は、2019年約9.2%、2020年約5%、2021年約2.8%、2022年約4.8%と推移しており、今年は昨年以上の回復が期待されている。

ベトナムでもインド人観光客は増加傾向にある。2022年12月のインド人観光客数は約2万9000人で、コロナ禍前の2019年同月比で5割以上増加し、中国からの観光客を上回った。これには、ベトナムの航空会社が、ゼロコロナ政策を行っていた中国の穴埋めとなる国の開拓を進めてきたという背景がある。ベトナム航空は昨年6月にインドとの直行便を就航させたほか、LCCのベトジェットエアも路線網を拡大してきた。

一方、ベトナムは中国政府が団体旅行を許可した20カ国に含まれていないが、香港上海銀行(HSBC)が発表した報告書では、2023年にベトナムを訪れる中国人観光客数がコロナ禍前と比較して50~80%回復し、300~450万人に達するとの見通しが示されている。ベトナム航空は3月より、コロナ禍で約3年間運休していた中国便の運航を再開すると発表しており、「ハノイ-北京」線を週3便運航するほか、ハノイと上海、広州、ホーチミンと上海、広州をそれぞれ結ぶ路線を、現在の週1、2便から週4便に増便する。LCCのベトジェットエアはホーチミンと深セン、杭州、上海、四川、武漢を結ぶ路線をそれぞれ週6便運航している。

 

インドネシア、バリ島を中心に観光業回復の兆し

インドネシアの2022年の外国人観光客数は547万人となり、政府目標の360万人を大幅に上回った。コロナ禍前の2019年の外国人観光客数は1610万人で、今年の目標はその約46%となる740万人と設定しているようだ。

インドネシアは中国政府が団体旅行を許可した20カ国に含まれており、今年1月に中国が海外旅行を解禁して以来、何千人もの中国人観光客がインドネシアに到着している。特にバリ島への旅行は順調に回復しており、中国各地からバリへのチャーター便の運航も再開されている。インドネシア政府は2023年に25万5000人の中国人観光客を誘致する目標を掲げている。

インドネシアのジョクジャカルタでは、2月2日から5日まで「2023 ASEAN観光フォーラム」が開催された。インドネシア共和国観光クリエイティブエコノミー省のマーケティング総局アジアパシフィック担当総局長であるラデン・ウィスヌ・シンドゥトリスノ氏は、インドネシアの観光産業は徐々に回復しつつあると述べた上で、「私たちは観光客数の増加に注力していますが、同時に質の高い観光客、つまりこの国でより多く消費し、より長く滞在してくれる観光客を望んでいます」と語り、今後は量から質へとシフトしていく意向を示した。

 

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