インバウンドコラム

中国で団体旅行一部解禁も日本は含まれず、東南アジア諸国は中国からの旅行需要取り込みへ

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「ゼロコロナ」政策が事実上終了した中国では、国内外への旅行機運が高まっている。中国の文化観光省の発表によると、先月の春節連休には国内旅行者が前年同期比23.1%増の延べ3億800万人に達し、コロナ禍前の2019年比で88.6%まで回復したことがわかった。また、連休中の1月21日から26日までの出入国者数は延べ239万2000人に上り、前年の2倍以上に増えた。今回は、春節を経た現在の中国における旅行市場の動向を紹介する。

 

中国政府、2月6日に海外の団体旅行を再開

中国政府は2月6日、約3年間にわたって停止してきた海外への団体旅行を一部解禁した。現在のところ、団体旅行の渡航先はタイ、インドネシア、カンボジア、モルディブ、スリランカ、フィリピン、マレーシア、シンガポール、ラオス、アラブ首長国連邦、エジプト、ケニア、南アフリカ、ロシア、スイス、ハンガリー、ニュージーランド、フィジー、キューバ、アルゼンチンの20カ国に限定されている。中国からの入国者に対する水際対策を強化した日本や米国、韓国などは含まれていない。

「CGTN Japanese」によると、上海のある旅行会社がタイ・プーケット旅行についての説明会を開いたところ、関連ツアープランが数時間で完売になった。また、広州のある旅行会社では、海外ツアーの予約がすでに500件を超えているという。中国の大手オンライン旅行会社「トリップ・ドットコム」では、すでに15の国と地域を対象に約700のツアープランを展開している。同社は、海外旅行の需要は3月からさらに高まり、5月1日のメーデー連休にはピークを迎えると予測している。

 

東南アジア諸国、中国人の旅行需要取り込み期待

中国の団体旅行の解禁を受け、中国と地理的に近い東南アジアの観光業界は、中国人観光客の増加に期待している。中国人観光客に人気の高い日韓へは団体旅行が行けないため、競合国より先行して中国人の旅行需要を取り込みたい考えだ。

東南アジアの中でも中国人観光客に最も人気のあるタイは、2019年には中国から約1100万人の旅行者が訪れていた。これはタイを訪れる外国人観光客の3割にあたり、タイの観光業の回復を加速させるには中国人観光客の増加が欠かせない。タイのプラユット・チャンオチャ首相は、タイ観光庁に対し、魅力的なパッケージツアーを展開し、今年は少なくとも500万人の中国からの旅行者を呼び込むよう指示したという。

一方、タイに次いで人気のあるシンガポールでは、中国人旅行者向けには既成のパッケージツアーではなく、旅程をカスタマイズした少人数での予約がトレンドになっており、シンガポール政府観光局もこうした旅行者をターゲットにしているという。ある旅行会社では、中国からの観光客が大挙して訪れる前に、十分な人数の中国語を話すツアーガイドを採用すると話した。なお、コロナ前には年間約360万人の中国からの観光客を受け入れていたが、フライト便数の制限もあって、2023年末までには、コロナ前の6割ほどの回復になるとみている。

コロナ前には年間310万人の中国人観光客を迎えていたマレーシアでも、中国人の団体旅行解禁を歓迎。観光芸術文化相は、2023年に中国人観光客500万人受け入れる目標を掲げていることを明らかにした。大手旅行会社では中国観光客の需要を満たすために1万人のドライバーと観光ガイドを採用する予定だという。

なお、コロナ禍前の2019年には約1億5000万人以上の中国人が出国し、このうち東南アジア諸国連合(ASEAN)の主要6カ国には約2700万人が訪れた。

 

中国と海外を結ぶ航空便が相次いで再開

中国が海外旅行を解禁したのに伴い、中国と海外を結ぶ航空便の再開が相次いでいる。

東南アジアでは、タイのエアアジアが3月までに中国の8都市とバンコクを結ぶ路線を再開し、ベトナムのベトジェットエアは6月に中国路線をコロナ禍前の水準まで回復させる。フィリピンの格安航空会社セブ・パシフィック航空は3月までに広州、上海、深セン、厦門への直行便を復活させる。

ヨーロッパでは、フランスのエールフランス航空が今年7月からパリと北京、上海を結ぶ路線のデイリー運航を再開すると発表した。現在は北京へ週1往復、上海へ週3往復を運航している。英国のブリティッシュ・エアウェイズも、4月23日からロンドンと北京、上海を結ぶ路線をそれぞれ週4往復とデイリー運航で再開する。

 

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