インバウンドコラム
4日、日本国内で確認された新規感染者数は1,214人と再拡大をみせる新型コロナウイルス。先月22日よりスタートしているGo Toトラベルで旅行推進策をとる一方、8月のお盆の帰省については「慎重に考えないといけないのではないか」と西村康稔経済再生担当相が発言するなど、一貫性のない政府の対応に日本列島は戸惑いを見せている。世界の他の国では、第2波やその対応はどのようになっているのだろうか。
インド:新規感染者数、アメリカを超す
米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、世界の新型コロナウイルスの感染者数は日本時間4日22時の時点で、1831万7520人、亡くなった人は69万4713人と留まることのない新型コロナウイルス。なかでも新興国での拡大が深刻で、インドの2日の新規感染者数は5万3000人となり、初めてアメリカの4万7500人を上回った。
オーストラリアでは新たなロックダウンがスタート
オーストラリアには新型コロナウイルスの第2波が押し寄せている。第2の都市メルボルンのあるビクトリア州では、感染者数の増加に歯止めがかかっていない。2日、州政府は州都メルボルンに住む約500万人に対して、日中の買い物に行く際は1家族1人、外での運動は1人1時間に限定。夜8時〜翌朝5時までの時間帯を外出禁止とした。期間は9月13日までの6週間。この措置を受け、夜のメルボルンの町からは、人の姿が消えている。
また、オーストラリアで行われた調査によると、回答者の3分の1は、海外旅行から帰国した人々に課せられる強制検疫が、この先2年間続くことを期待していることが明らかになった。この調査では、39%の人が地元の地域で厳しい規制が課せられることを期待しており、パンデミックの脅威について「非常に懸念している」と回答した人の割合は、2週間前の36%から43%に急上昇しているという結果も出たという。
イタリア:「今のところ」第2波をコントロールできている
3~4月にかけて欧州諸国で猛威を振るった新型コロナウイルス。中でもイタリアでは、3月19日には感染死者数が中国を超し世界最多の3,405人となって以来、これまでに3万5000人以上が亡くなるなど、大きな被害を受けた。現在では1日の新規の感染者数は、159人(8月3日)、238人(8月2日)、295人(8月1日)と100~300人の数字を6月末以来維持。監視体制と接触者の追跡に加えて、多くの人々が政府の感染拡大防止の安全対策に従っていることから、イタリアでは第2波を今のところコントロールできていると見られている。
カンパニア州では、密閉空間でマスクをしない場合は1,000ユーロの罰金を科され、ヴェネト州では検疫規則に従わない人は高額の罰金または刑務所行きとなる。このような措置から、マスク着用率は90%以上と世界的にも最も高い国のひとつであり、人との距離をとることや、頻繁に手洗いを行うなどの基本対策の徹底を促している。感染者は大幅に減少してきてはいるものの、非常事態宣言は10月15日まで延長とし、気を緩めていない。
またイタリアでは、バングラデシュ、ブラジル、チリ、ペルー、クウェートなど、感染拡大リスクが高いと見なされる16カ国からの入国を禁止し、先週からルーマニアとブルガリアからの帰国者に14日間の検疫を義務付けている。
スペイン:第2波の拡大によりスペインの観光業は大打撃
スペインの一部地域で新型コロナウイルスの感染者が急増したことを受け、7月25日よりイギリス政府が、スペインからのすべての入国者に対して2週間の行動制限による検疫を実施することを決定。さらに、イギリス国民に対し、スペインへの不要不急の渡航を控えるよう勧告した。これを受けて、ヨーロッパ最大の旅行会社TUIは、イギリスとスペインを結ぶフライトを少なくとも2週間キャンセルするなど、ホリデーシーズン真っ只中のスペインの観光業に大打撃を与えている。27日にはドイツも、感染拡大が懸念されるスペインの一部の地域に対しての不必要な旅行を禁止した。
スペインの経済は、国内総生産(GDP)の12%を占める観光業に大きく依存しており、経済的な打撃は大きい。昨年は1800万人のイギリス人がスペインを訪れたが感染拡大を受け、イギリス政府はスペインを「安全な渡航先」から除外。ドイツ人観光客はイギリス人の次に多い1120万人であったが、カタルーニャ、ナバラ、アラゴンなどへの渡航自粛勧告を出した。スペインのホテルは、今年の初めから7月の予約のキャンセルが64%に達し、スペインの観光売上の損失は100億ユーロ(117億3,300万ドル)にのぼる可能性がある。
イギリス:二次感染の防止を目的に、パブが再び閉鎖される可能性も
イギリスでは9月に学校の再開が予定されており、子供たちの健康を優先させるために、パブや「その他の活動」の閉鎖が必要になる可能性があると専門家が語った。
カジノ、ボウリング場、スケートリンク、一部の密着型サービス、屋内パフォーマンス、スポーツ会場や会議センターでの大規模な集まりなど、先週末に予定されていた緩和措置は最低で2週間の延期が決定している。結婚披露宴の参加者を最大30人まで拡大することも保留された。政府は、大人の行動による子供への二次感染を防ぐことで、学校再開を最優先させる考えだ。
ベルギー:コロナ急増のアントワープでは夜間の外出を規制
ベルギーのアントワープ州では一週間で1,000人を超える新たな感染者が判明したことを受け、23時半から翌朝6時までの外出自粛規制とマスクの義務化を決定した。
オランダはアントワープ州への不必要な旅行を禁止し、イギリスではベルギーから戻ってきた国民に対する検疫を検討している。また、イギリスはベルギーだけでなくルクセンブルクへの入境を禁止とする予定であるという。
ベルギーの新規陽性者は、過去1週間では毎日平均328人で、前週に比べて70%増加傾向。さらに、1日あたりの新規入院患者は23人。ベルギーの保健当局は、社会的接触を可能な限り減らすよう国民に要請している。
香港:新たな感染者数100人超えが連続し、防疫措置強化を発表
香港では、新たな感染者数が100人を超える日が5日間連続したことから、7月27日に政府は防疫措置強化を発表。店内での飲食を午後6時〜翌朝4時59分まで禁止。公共の場での集合を2名までに制限(同居人、交通手段の同乗等は2名を超えても可)。マスク着用の義務付けのほか、スポーツ施設、プールの使用を禁止としている。
この防疫措置は、当初7月29日から8月4日までの1週間としていたが、香港政府は大規模感染爆発の恐れが高まっているとの認識から、さらに1週間延長し8月11日まで延長することを発表した。
香港では自宅にキッチンがない家庭が多く、すべての飲食店を閉じるのは難しい為、テイクアウトかデリバリーは可能となっている。外国人の香港への入境も年末まで禁止とし、年内の外国人による観光再開は事実上断念したことになる。
タイ:国内感染状況が落ち着いて来たことを受け、規制緩和の動き
タイでは7月25日から28日の間に、海外からの帰国者18名に新型コロナウイルスへの感染が確認されたものの、60日間以上国内での感染は確認されていない。新型コロナウイル対策として発令されている非常事態宣言は7月末の期限から8月末へと、これまでに4度の延長をしたが、国内感染状況が落ち着いて来たことを受け、一部の規制が緩和された。規制緩和の対象はタイの労働許可証を所持する外国人とその家族、留学生らの入国を到着後、2週間の隔離を義務付けている。
ベトナム:ダナンでは厳しい社会的隔離措置を適用
新型コロナウイルスの感染拡大を封じ込めてきたベトナムで、再び流行への懸念が強まっている。7月25日にダナン市で約3カ月ぶりに市中感染が確認され、同31日には初の新型コロナによる死者も発生。4日朝には7人目となる犠牲者出た。亡くなった7人はいずれも基礎疾患のある50~80代だという。
保健省によるとこれまでベトナム国内で確認されていた5種類の新型コロナウイルスとは異なる型の、感染力の強いタイプとされており、ベトナム当局は警戒を強めている。
ベトナムの感染者数は3日現在で621人。中部ダナンではクラスター感染が起きており、7月28日から最も厳しい社会的隔離措置(不要不急のサービスを一時停止。公共の場に3人以上で集まることが禁止。外出時のマスク着用。食料品や医薬品の購入、病気や怪我など救急の場合などを除き、外出の自粛。会話をするときは2m以上の距離を保たなければならない)を適用させている。また、ダナン市当局は26日から、観光客の受け入れも14日間一時停止している。鉄道はダナン駅での停車が禁止され、ダナン発の観光船も運航停止となっている。また、保健省は直近1週間にダナン市を訪れた人々に対し自宅隔離を行うとともに、発熱や咳などの症状があれば医療機関で検査を受けるよう求めている。
ベトナムでは国内での新型コロナの封じ込めに成功していたことから、7月に入って家族旅行をはじめとする旅行の需要が著しく回復を見せていた矢先であったが、ダナン市以外のツアーのキャンセルも急増し、ホーチミン市から出発するツアーだけでも2万人以上のキャンセルが発生している。ダナン以外の首都ハノイや最大都市であるホーチミンなどはほぼ元通りの日常生活を送れるようになっている。
フィリピン:新規感染者増加を受け、マニラで厳しい措置
フィリピンでは、新型コロナウイルス感染者数が累計で10万人を超し、政府は2日、マニラ首都圏と周辺地域での外出・移動制限措置を4日から18日まで厳格化すると発表した。フィリピンでは外出制限を5月から段階的に緩和してきたが、新規感染者数が増え続けていることから方針を見直した。鉄道やバスなどの公共交通機関は休止し、飲食店は持ち帰りか配達のみ。商業施設は営業できる店や入場できる人数を制限される。
やまとごころでは、重点20市場における入国規制の状況を一覧にまとめています。
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