インバウンドコラム
トランプ大統領も感染するなど、今も毎日発表される新型コロナウイルスの新規感染者数が4万人を超す日が続くアメリカ。これまでの感染者数 753万人、死者 21.1万人と、世界でも最も感染が拡大した国となっている。いまだ病院やスーパーなど最低限の営業しか認められていない地域もあるなど、日常生活もままならない状況が続く中、観光業も深刻なダメージを受けている。そのような状況下、アメリカのDMOや地域の観光局はどのような取り組みを実施してきたのかをまとめた。
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州ごとの移動規制、義務に違反した場合は懲役や罰金も
広大な国土をもつアメリカでは州による権限が強く、新型コロナウイルス感染拡大のための施策も州ごとに行っている。他の州から移動してきた場合、陰性証明書の提示や、14日間の隔離などが求められる場合もある。以下にいくつかの州をピックアップし、その内容を紹介する。
アラスカ州:入州者は旅行者申請フォームに記入し、陰性証明書を提出するか、到着後72時間以内にPCR検査を受けるか、14日間(または旅行期間のどちらか短い方の期間)の自己隔離を行う必要がある。いずれにおいても旅行者は到着後7〜14日の間で再度PCR検査を受ける必要がある。
フロリダ州:ニューヨーク州、ニュージャージー州、コネチカット州から到着する旅行者と居住者は、到着時に14日間(または旅行期間のどちらか短い方の期間)の自己隔離をする必要がある。この義務に違反した場合は、最高500ドルの罰金、もしくは60日間の懲役に処される可能性がある。
ハワイ州:到着時に14日間(または旅行期間のどちらか短い方の期間)の自己隔離をする必要があった。この義務に違反した場合は、最高5000ドルの罰金、もしくは1年間の懲役。9月1日以降は、到着前72時間以内に検査を受け、入州時に陰性証明書を提出すれば14日間の自己隔離を回避できるようになった。
ニューヨーク州:旅行者は健康フォームに記入する必要がある。また、感染率の高い州から入州する場合は、14日間の自己隔離が必要。健康フォームに記入しなかった場合は2000ドルの罰金が課せられる。
米グーグル、2021年7月まで在宅勤務を延長する方針
米グーグルは少なくとも来年7月まで従業員を在宅勤務とする方針を示した。以前は「今年末まで」を予定していたが、新型コロナウイルス収束の目処が立たないことを受け、来年7月まで延長した。一方、FacebookやTwitterなどは期限を設けず、永続的に在宅勤務を認める方針を示している。
逆風の中でも、新しい動きを見せるアメリカの観光業
アメリカのDMOの動きの特徴としては、これまでグローバルや地域外の国内市場に対してマーケティング活動を行なっていたのに対し、今後はローカル、つまり国内や地域の市場に焦点を当てて、旅行業界を回復に向かわせようという動きを積極的に行っている。また、ほとんどのDMOにおいて予算が削減されていることも共通している。
ただし、予算の減少という逆風に吹かれても保守的な動きをするのではなく、より革新的で想像力に富んだ施策に取り組んでいるDMOも多いようだ。窮地に立たされている地域の事業者を支えたり、アフターコロナを見据えたプロモーションを行ったりするなど、知恵を絞ったアイデアは日本のDMOにとっても参考になるものが多い。
フロリダ州、地域が必要とする情報を調査し提供
2019年には過去最多の1億3140万人の旅行者を受け入れたフロリダ州。新型コロナウイルスによる感染防止のロックダウンで観光業もストップする中、地元の人々に焦点を当てたマーケティングを実施した。地元企業のパンデミックによる影響状況をネットを通じアンケート調査を実施したり、テイクアウトや配達が可能な地元レストランの情報を掲載することで、彼らの売上サポートなどを務めた。
マイアミDMO、地域をサポートすることで、エリアとの結びつき
マイアミのDMO「Greater Miami Convention & Visitors Bureau」では、サイト内に特設ページを設け、医療従事者やファーストレスポンダー、航空会社の乗務員、患者の家族など、宿泊施設を必要とする人々に向けて地元のホテル情報を掲載している。また同サイト内では、コロナの感染状況や対応策などエリア内で何が起きているかを「What’s Happing News Letter」として紹介したり、ホテルやレストランの情報、割引情報を掲載。また、エリア内でコロナに負けず頑張っている人を「マイアミで輝いている人」として紹介し、地域を盛り上げている。
アトランタDMO、状況に合わせた情報提供で寄り添う
アトランタのDMO「ACVB(Atlanta Convention & Visitors Bureau)」は、通常のサイトの中に新型コロナウイルス専用のページを設置し、感染防止のためにロックダウンで外出できない状況下や、少しずつ経済活動が再開されたタイミングなどの状況に合わせ、様々な情報を届けることで人々に寄り添う存在であることを示してきた。
例えば、ステイホーム期間中は、アトランタにある博物館や美術館、動物園、植物園などと共に週一回のバーチャルツアーを実施したり、アトランタ市内を楽しめるバーチャル・サイクリングツアーを提供。また、アトランタの歴史を学べるクイズや、アトランタで撮影された映画を紹介し、それまであまり知られていなかったアトランタの魅力への気づきの提供に務めていた。テイクアウトができるお店の紹介や、レストランでの食事が再開されてからはレストラン情報や、「今度の週末アトランタですべきこと」などとして、地元アトランタで楽しむためのアイデアを掲載している。
また、窮地に立たされている観光業界で働く人々をサポートするためのファンドレイジングを実施したり、地域で現在応募可能な求人情報の掲載も行っている。
デンバーのDMO、クイズで体験コンテンツをプレゼント
コロラド州デンバーのDMO「Visit Denver」は、外出制限中に地元の人々に向けた7週間限定のウェブサイトを立ち上げた。サイトにアクセスし、地域の良さを再確認してもらうために、エリアに関する雑学クイズを実施。答えた人たちには抽選で、外出制限の解除後に利用できる無料の体験コンテンツなどがプレゼントされた。
人気の観光3都市で、相互プロモーション
米国で人気の観光都市、サンフランシスコ、ニューヨーク、ロサンゼルスの3都市では、DMO間のコラボレーションを開始。将来の観光客獲得に向け、各DMOのウェブサイトやSNS上で互いの都市のプロモーションを行うという異例の取り組みを実施した。
セントピーターズバーグ・クリアウォーター、独自のキャンペーン
セントピーターズバーグ・クリアウォーターのDMO「Visit St. Pete/Clearwater」は独自のキャンペーンを打ち出し、美しいビーチとその波の音を収録した映像を「サンライズ」「サンセット」などの種類に分けてサイトとSNSで発信。すでに多くの人が視聴しており、将来の観光客誘致につなげる考えだ。
アラスカ州、美しい映像でファン作り
各州や都市の観光局も「wait for you(あなたを待っています)」というキャンペーンを行っている。グランドキャニオンからディズニーワールドまで、米国内のあらゆる観光スポットが閉鎖する中、深刻な打撃を受けながらもアフターコロナの誘致に向けてさまざまな施策を実施している。
例えばアラスカ州観光局は、アラスカの壮大で美しい自然風景を紹介する映像をサイトやSNS上でアップし、「Alaska will wait, for you(アラスカはあなたを待っています)」という文字で締めくくっている。
ペンシルバニア州観光局、オンラインや動画で楽しめる観光コンテンツを提供
また、ペンシルバニア州観光局のサイトでは、自宅にいながらもオンラインで体験できる同州の観光コンテンツを用意した。オンラインで同州でのキャンプファイアーに参加したり、同州の歴史を知ったり風景を眺めながら料理や釣りが楽しめるような動画も用意されている。
シャイアンのDMO、適切なタイミングで観光客を呼び戻すためのステップ
ララミー郡にある州都シャイアンのDMO「Visit Cheyenne」は、バランスをとりながら観光回復に向けて準備を整えているという。同DMOはまず、新型コロナウイルスの危機に見舞われた直後にコスト削減と人員削減を行った。3月上旬以降は、ララミー郡の観光事業者に連絡を取ってアンケートを行い、その回答をもとに事業継続のためのプロモーションを展開。また、観光事業者とのオンラインミーティングも重ねて彼らの状況に耳を傾けてきた。
そのほかにも、観光回復期に向けた新たなデジタル広告および印刷広告の戦略を立て、ウェブサイトやSNSの内容を修正し、2021年以降の会議やスポーツイベントを確保するなど、機敏な対応を取っている。同DMOの理事長、ドメニック・ブラボー氏は『Wyoming Tribune Eagle』に対し、「適切なタイミングで適切な観光客を呼び戻すことが、これまで以上に重要になる」と答えている。
ワシントン州、コロナを機に観光ブランドを再構築
ワシントン観光マーケティング局は、ワシントン州で4番目に大きな産業となる観光業に25万ドルを投じ、10年ぶりにワシントン州観光のブランドを再構築している。同州では、5月の時点で旅行、レジャー、ホスピタリティ業界で15万2000人の雇用が失われた。落ち込んだ観光業界の回復に向け、現在はガイドラインや制限を設けた上で旅行者を迎え入れる準備をしているという。
やまとごころでは、重点20市場における入国規制の状況を一覧にまとめています。
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