インバウンドコラム
【コロナ:世界の動きまとめ】韓国版、タイ版のGo To キャンペーンは成功しているのか? 日本国内の感染拡大を受けトラベルバブル構築もストップ
お盆休みの人の動きは近場が中心となった。JRグループ6社の発表によると、お盆期間(8月7日〜17日)の新幹線や在来線特急の利用者は、前年の同時期比76%減となる355万人だった。帰省や旅行を控えた代わりに、県内や近場の観光施設や宿泊施設を利用するニーズが増加。マイカーを利用した日帰り旅行も多くみられた。
日本では新型コロナウイルスの感染者が再び増加する中、旅行喚起策として政府が進めるGo To トラベルに、旅行する側も受け入れる側も戸惑いを見せながらの実施となっているが、他国ではどのようになっているのだろう。韓国やタイ版Go To キャンペーンの状況と共にお伝えする。
訪韓外国人のコロナ治療費、防疫措置違反なら全額自己負担
韓国で18日確認された新型コロナウイルスの新規感染者数は246人で、5日連続3桁台となった。ソウルの教会が感染源となり、感染者が増加していることから、丁世均首相は首都圏の防疫体制を強化するとの談話を発表した。
韓国政府は17日、海外から韓国に入国する際の検疫時または入国後の隔離中に新型コロナウイルスへの感染が確認され、韓国の防疫措置に違反した外国人に対し、治療費を全額本人負担とする制度を施行した。韓国ではこれまで、国内で感染が判明した新型コロナウイルス感染症患者(外国人を含む)の医療費を国が全額負担してきたが、新型コロナとの闘いが長期化するにつれ納税者からはこれに対する不満の声が上がっていた。ただし、国の公的医療保険に加入している外国人や韓国国内で感染した外国人に関しては、市中感染予防のため、これまで通り治療費を全額支援するという。
韓国版Go To キャンペーンも右往左往
「Go To キャンペーン」をスタートさせながらもお盆の移動自粛を呼びかける日本と同じく、韓国も経済回復と感染拡大防止の両立を目指す政府の対応が右往左往しているという。韓国政府は7月、需要喚起策として宿泊・外食クーポンを発行すると発表し、8月17日を臨時公休日に指定した。しかし現在ソウルを中心に感染者が増加していることを受け、クーポンの発行を中止し、公休日に外出自粛を呼びかけているという。国民からは、こうした政府の対策に対して「矛盾している」との声が上がっている。
台湾:台北のホテルが日本旅行気分や子供が楽しめるプランを提供
感染状況の落ち着きによって、国内旅行が盛り上がりを見せている。台北の5つ星ホテルリージェント台北(台北晶華酒店)は、国内で日本旅行気分を味わってもらうため、日本文化を体験できるプランを提供している。2泊3日の宿泊プランで、専属の日本人コンシェルジュが日本式のおもてなしを提供。和菓子のほか、牛肉の鍋や日本酒を用意する。さらに、浴衣体験やコンシェルジュによる茶の湯文化の紹介も楽しめる。
台北マリオット・ホテル(台北万豪酒店)では、195坪のキッズスペースを開設。ラジコンカーを走らせるミニサーキットや様々な遊具のほか、ゲーム機「ニンテンドースイッチ」などを用意し、ファミリー層の集客を狙っている。
台北メトロ、マスク常時着用を義務化
新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、台北メトロ(MRT)は8月6日以降、改札に入ってから出るまでの間はマスクを常時着用することを乗客に義務付けた。違反した場合は、最大で15,000台湾元(約54,000円)の罰金のほか、乗車を拒否される。
新型コロナの封じ込めに成功した台湾だが最近、5月から台湾に滞在しているベルギー人男性の陽性が確認されたほか、6月に訪台し、8月初めに日本に帰国した30代の日本人男性が空港の検査で陽性と判定される等感染源不明のケースが続いた。台湾の中央感染症指揮センターは警戒が必要との判断から、マスクを着用すべき8つの公共空間(公共交通機関や医療機関など)を発表した。
中国:割引チケットや消費券発行で、各地の観光地が観光客誘致
「グループツアー」の解禁により、半年以上、家にこもっていた消費者が旅行に出かけ始めており、各地では今年12月末までの観光促進策を出している。例えば、湖北省は約400カ所の観光スポットを全国の観光客を対象に無料開放すると発表。河南省では平日の景勝地の入場料の割引・免除政策を実施するよう提言した。一部の省では「2.5日間のミニ連休」制度や、観光消費券の発行などの措置を実施している。
夏休みの観光消費意欲が高まり、空の便も回復
省をまたぐ観光が再開されるという郎報により、夏休みの観光消費に対する意欲が再燃している。モバイル地図アプリ「高徳地図」からの情報によると旅行ランキングへのアクセス数が3週連続で10%以上増加。「必ず訪れたい観光地」へのアクセスが最も高く、30%以上増加している。中でも人気は上海市・西安市・成都市などの観光都市だという。
空の便も回復しており、民間航空局によると6月の中国国内の航空便の本数は60%以上回復しているという。上海を拠点とするLCC春秋航空の王煜会長は、「7月の国内線は昨年同月比の130%まで回復している。海外に行けない分、多くの人が国内線を利用している」と国内メディアの取材に対し語っている。
香港:香港政府は防疫措置を延長
8月17日、香港政府は新型コロナウイルス感染者は若干減りつつあるものの、死亡率が高まっており、引き続き厳しい感染状況であるとの認識を示し、8月18日までを期限にしていた下記の4項目の防疫措置の延長を発表した。延長期間は8月19日から8月25日まで。
1、レストランにおける店内飲食の午後6時から翌午前4時59分までの禁止。1卓利用は2名まで、収容人数は通常座席数の50%まで、最小1.5mの距離規制や隔壁の使用、酒類提供場所の閉鎖等の諸規制も継続する。(引き続き持ち帰り、デリバリーは可。フードコートの飲食エリアも閉鎖。)
2、公共の場での集合制限(2名まで可)。
3、屋内外の公共の場所及び公共交通手段利用時マスク着用義務付け。
4、サウナ、カラオケ、ジム等の営業停止。
全学校がオンライン学習、登校は無期限停止
教育局では、すべての学校において登校は無期限で停止とし、新学期(8月17日~9月)からオンライン学習に切り替えることを発表。香港政府は、低所得世帯に対し、オンライン学習用のタブレットを支給するなどの援助を行う。
統計局は、4~6月(第二四半期)のレストランの収益が前年同期比25.9%減の212億香港ドル(約2,884億円)となったことを発表した。中華料理店だけでみると31.7%減、中華料理店以外では22.3%減、ファストフード店は19.9%減、バーは46.5%減となっている。
タイ:国内での新規感染者2カ月以上ゼロ
タイでは国内での新型コロナウイルスの新規感染者が2カ月以上もゼロにも関わらず非常事態宣言が繰り返し延長されていることや経済の低迷に不満が高まり、各地で政府に対する抗議活動が活発化している。市中感染は2カ月以上確認されていないが、政府は「第2波」を警戒して、外国人観光客の入国禁止を続けている。3月26日に発令された非常事態宣言は4度目の延長となり、8月末まで延長されることになっている。
新型コロナウイルスの影響で20年4~6月期の実質国内総生産(GDP)は前年同期比12.2%減となり、16日にはタイ首都バンコクでは2014年軍事クーデター以来、最大規模の反政府集会が開かれた。タイでは、観光業がGDPの約5分の1を占めていることもあり、海外からの入国禁じ海外からの観光客がストップしていることが業界に与える影響は大きい。
タイ版Go Toトラベルキャンペーンで、国内旅行活況
一方で、7月18日からはタイ版Go Toトラベルキャンペーンである「We Travel Together」が7月18日〜10月31日の期間でスタートしている。このキャンペーンを利用すると宿泊費の40%(最大1日3,000バーツ・約10,000円)まで補助し、5泊まで利用することができ、航空運賃の40%(上限1,000バーツ・約3,300円)や食事代の一部もタイ政府が負担するという。タイでは、国内の新規感染者ゼロの状態が続いていることもあり、でかける側も、受け入れる側も安心して旅行することができる。
本キャンペーンはタイ人のみ利用可となっており、既に330万人が登録をしているという。しかし、その登録から予約までは分かりづらいとの声も上がっている。
国が主導で、確実に段階的に緩和
タイ政府は、各種施設や店舗で店舗の営業が再開にタイミングを合わせ、5月17日より店舗や施設への入退店管理システムで使用するプラットフォーム「タイ・チャナ」をスタートさせている。このシステムは、まずは店舗側が同一時間に受け入れ可能な顧客人数を明記しオンライン登録し、送られてくるQRコードを店舗の入り口に掲示。利用者は入店時、および退店時にそのQRコードを読み取ることで、自動的に出入店記録がされる。
店舗利用者は「タイ・チャナ」にアクセスすることで、自身がこれから訪れようとしている店舗の混雑状況を事前に知ることもでき、万が一、感染者が発生した場合の追跡もできるようになっている。
タイ国政府観光庁(TAT)は、ホテルや飲食店の衛生状態を示す独自の認証制度「アメージング・タイランド・セーフティー・アンド・ヘルス・アドミニストレーション(SHA)」を4月下旬には立ち上げ、国内はもちろんのこと、海外に向け国をあげてコロナに対する取り組みを打ち出している。
早い段階からの国が衛生についてのガイドラインを示し、認定制度で方向性を示し。その上で入退店を管理できるプラットフォームを用意し、人々が密になることなくお店などを訪れるようにシステムを整備。国内での感染者がゼロの状態が続いている上で、国内旅行喚起のためのキャンペーンを実施しているタイは、観光大国として国の内外に向け「安心・安全な国」をアピールするためにも、国が主体となり段階的に確実に進めている。
また、タイでは、今後同国を訪れるすべての人に対して、最低30日間の滞在を求めるという案も検討されている。
2021年まで国境は再開されない?
タイでは、2020年8月31日まで発令されている「非常事態令」により、国際線旅客便の離着陸および外国人の入国が制限されている。7月1日からは、①労働許可書所有者、及びその配偶者、及び子弟、②永住者、③タイ国籍保有者の両親、配偶者及び子弟、④タイ国内で医療サービスを受ける外国人及びその介助者、⑤留学生及びその両親、⑥タイに駐在する外交官、外国政府職員、国際機関職員等及びその両親、配偶者及び子弟の入国を認めている。
8月10日、タイ政府観光局の副知事はタイのニュースサイトThe Thaigerの取材に対し「タイ政府は、国境を再開させることに最大限、慎重な姿勢をとっている」とした上で、「海外からの観光客の受け入れは少なくとも2020年一杯は期待できず、2021年の旧正月ですら厳しいのではないか」との見解を示した。
さらに、タイがベトナムなどと進めていたトラベルバブルについても、それらの相手国でコロナが再発していることを受け、協議が行き詰まっていることを言及。どこの国が含まれるかの明言はなかったものの、日本は入国規制緩和の第一弾として、タイ、ベトナム、ニュージーランド、オーストラリアと協議を進めているため、本件には日本も含まれていると推測される。
やまとごころでは、重点20市場における入国規制の状況を一覧にまとめています。
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