インバウンドコラム

【コロナ:世界の動き】Go To トラベル、じわじわと観光業界へ追い風。地域共通クーポンでは混乱も。中国、国慶節で6億人が国内旅行へ

2020.10.04

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「Go To トラベル」にこれまで対象から除外されてきた東京発着が追加され初めての週末、全国各地の観光地にも緩やかに観光客が戻ってきた。東京都民が加わることで経済効果は1.5倍になるとの試算もあり、苦しい状況が続いている観光業からも期待の声が高まっている。

 

「Go To トラベル」東京追加、初の週末

新型コロナウイルスの感染拡大の影響により経済が落ち込む中、消費喚起策として日本政府が打ち出した「Go To キャンペーン」。7月22日に開始された「Go To トラベル」を皮切りに、10月1日には「Go To トラベル」を利用して旅行した際に付与される「地域共通クーポン」と、飲食店を支援する「Go To イート」の運用がスタートした。また、「Go To トラベル」の開始時には感染拡大が深刻化していたため、キャンペーンの対象から除外されていた東京都民も、10月1日より利用が解禁。初の日曜日となった4日、観光地は多くの観光客で賑わい、羽田空港の国内線のターミナルも活気を取り戻していた。

「Go To トラベル」においては運用から2カ月が経ち、観光業界にじわじわと追い風が吹き始めているようだ。大阪では大阪駅直結のホテルで9月の連休中の平均稼働率が85.7%と高い水準を記録した。また、JR西日本も9月以降は旅客数が回復しつつあるとし、旅行者が緩やかに増加していることがうかがえる。10月1日に約1390万人の人口を抱える東京都が同キャンペーンの対象となったことで、地方への誘客効果に期待が高まっている。

 

「地域共通クーポン」届かぬホテルも、現場は混乱

一方で、10月1日から利用が始まった「地域共通クーポン」では、一部のホテルへの配布が遅れる事態も発生し、現場では混乱が生じている。「Go To トラベル」事業では旅行代金の35%(最大1人1泊1万4000円)を値引きし、15%分(同6000円)を「地域共通クーポン」として利用客に付与されることになっている。クーポンには紙と電子があり、ホテルで直接予約した際などにはフロントで直接、紙のクーポンを利用客に渡すことになっているが、Go To トラベル事務局からホテルへのクーポンなどの一式が利用開始となる10月1日になっても届かないホテルも発生した。

また、電子クーポンが使えるよう申請した店舗でも、10月1日までに許可がおりなかった店舗も多くある。本来であれば事務局のサイトに利用が可能な店舗の一覧が掲載されるのだが、「地域共通クーポン」が配布され初めての利用締め切り日となる10月2日には、アクセスが集中したことでサイトに入ることができなくなり、利用客からは「もらえなかったクーポン分は後からもらえるのか」「今日までに使わねばならないのに、どこで使えるのかわからない」などの不満の声が上がった。

電子クーポンが使える店舗も限られており、地域共通クーポンに参加した約13万店のうち、電子クーポンの利用が可能な店舗は半数程度であることを観光庁が明らかにした。利用者への説明が難しいと敬遠したケースがあるという。

 

クーポンを渡せなかった場合の対応を事務局が発表

Go To トラベル事務局は、「地域共通クーポン」を渡せなかった場合の対応を発表した。それによると、取り扱いキットの配送遅れなど事務局側の責任で「地域共通クーポン」が配布できなかった場合は、後日、利用者に事務局より直接「地域共通クーポン」を送付するという。「地域共通クーポン」は本来、旅行先の都道府県+隣接する都道府県で、宿泊当日と翌日しか使用できないが、今回補償で発行するクーポンは、旅行者が指定する任意のエリアおよび期間で使用可能とすることを予定しているという。

 

「Go To イート」も順次スタート

依然として厳しい状況が続いている飲食業においては、10月1日からスタートした「Go To イート」に期待がかかる。同キャンペーンは、25%分のプレミアムが付いた食事券の発行と、ポイント還元によって飲食店を支援するというもの。「Go To イート」の事業者が全都道府県で出揃い、各自治体のタイミングで10月1日以降に順次運用を開始していく。

 

中長期の受け入れを再開。留学生など日本へ

新型コロナウイルスの水際対策として行われている入国制限措置においても、10月1日より全世界を対象に緩和された。政府は原則として159の国・地域からの入国を拒否しているが、新型コロナの低リスク国とされるベトナムや台湾など一部の国・地域との間でビジネス関係者を対象に往来を再開していた。10月1日からはさらに入国制限を緩和し、ビジネス関係者以外にも、医療および教育関係者、留学生、中長期の在留資格を持つ外国人に日本への新規入国を認める。ただし今回の措置による日本への入国者には、14日間の自主隔離の措置を確約できる受け入れ企業や団体がいることを条件とし、入国者数も限定するとの方針を示している。

 

中国:国内旅行が大きく回復。パンデミック後、最多の利用者

中国では10月1日より国慶節(建国記念日)の大型連休に入った。今年は中秋節が国慶節と同じ日に重なり、8日間の大型連休となるため、延べ6億人が国内旅行に出かけることが予測されている。携程(シートリップ)が発表した国慶節連休旅行のコストパフォーマンスに関するデータによると、今年は全国の観光地1500カ所以上が入場料の無料または割引を打ち出しているという。これ以外にも、20を超える省や自治区などが旅行優待券を配布したり、大手旅行プラットフォームが補助金を支給したりと各地で観光キャンペーンが続々と打ち出されるなど、ここ数年で最もお得な連休となりそうだ。

旅行サイト「去哪儿網」によると、国慶節連休中の中国の国内航空旅客輸送が前年比で10%上回り、過去最高の延べ1500万人に達する可能性があるという。また、首都北京においては航空旅客輸送が延べ200万人を超えるという予想も出ている。

一方、鉄道の利用も大きく回復。中国国家鉄路集団有限公司は、国慶節連休を含む9月28日〜10月8日までの11日間において、全国の鉄道を延べ1億800万人が利用すると予想している。連休初日の10月1日が最大のピークとなり、北京駅などの主要駅は各地へ向かう乗客でごった返した。この日は1300万人が鉄道を利用し、新型コロナウイルスのパンデミック以降、最多利用者数となる見込みだが、昨年の国慶節の連休時の鉄道の利用者7億8000万人に比べると、7〜8割の回復になりそうだ。

中国国内の感染拡大は抑えられているものの、世界を見渡すと新型コロナウイルスの流行は依然として続いているため、中国疾病予防管理センターは、連休中の海外旅行はできるだけ避けるよう呼びかけている。もし海外旅行へ行った場合は、帰国後に14日間の隔離が必要とされており、旅行先の国・地域が14日間の自己隔離を義務付けている場合は、入出国時に合計で28日間隔離されることとなる。実質的に海外旅行は行くのが難しい状況となっている。

 

韓国:いつもと違う、チュソクの5連休始まる

韓国では9月30日より、旧暦のお盆にあたる「チュソク」の5連休がスタートした。例年は多くの人が帰省するなどして鉄道や道路が混雑するが、今年は政府ができるだけ移動を控えるよう呼びかけているため、異例の休暇となりそうだ。例年は無料になる高速道路も今年は有料のままで、鉄道の座席も半分しか販売されないという。

 

台湾:航空大手、2020年上半期世界1位と4位の営業利益

台湾航空大手の中華航空(チャイナエアライン)と長栄航空(エバー航空)は、2020年上半期(1〜6月)の本業の営業利益がそれぞれ世界1位と4位になった。新型コロナウイルスの世界的パンデミックの影響を受けた航空業界において、上半期に営業本業で利益を上げたのは世界でたった4社。そのうち2社が台湾の航空会社となっている。中華航空(チャイナエアライン)は貨物輸送部門の上半期の売上が全体の93%を占めたことで、利益拡大につながったという。

 

フィリピン:マニラと近郊での外出・移動制限を1カ月延長

フィリピンのドゥテルテ大統領は28日、新型コロナウイルス感染拡大を抑制するため、マニラ首都圏とその近郊で講じている外出・移動制限措置を1カ月延長すると発表した。また、10月5日から予定されているオンラインでの公立学校の授業再開が円滑に進められるよう、国内の主要通信会社に協力を求めた。同国の感染者数は累計30万7288人と東南アジアで最も多く、ワクチンを確保するまで対面授業を再開しない方針を示している。

 

スペイン:人口10万以上の市で、移動制限を実施

新型コロナウイルスの第2波に見舞われるスペインでは、首都マドリードを含む人口10万人以上の市で、新たな移動制限が3日までに適用される。欧州諸国の首都での再ロックダウンの実施はこれが初となる。この措置により、市をまたいだ往来が禁止されるが、通勤や通学、通院、買い物は許可されるという。

 

ドイツ:全世界への渡航警告を解除

ドイツのメルケル首相は29日、新型コロナウイルスの感染拡大抑制を目的とした措置を強化すると発表した。これにより、集会の人数を制限し、違反者に罰金を科すなどの措置が講じられる。同時に経済活動の維持を優先課題とし、感染状況に応じて的を絞った制限を実施する「ホットスポット戦略」により、「是が非でも全土の再ロックダウンは回避したい」と述べた。

同政府は1日、EUを除く全世界への一律の渡航警告を解除した。同国では、新型コロナウイルスのパンデミックにより、3月に全世界への渡航警告を出していたが、6月には大半のEU加盟国への渡航警告を解除。その後9月に入り、感染が拡大している一部欧州地域を対象に再び渡航警告を発令している。今後も相手国の状況に応じて渡航警告の継続や解除を行なっていくため、大半の渡航者にとって大きな変化はないと見られている。

 

イギリス:第2波によるロックダウン回避を目指し、規制遵守求める

イギリスのジョンソン首相は30日、新型コロナウイルスの第2波への対策として政府が講じる規制を遵守するよう国民に求め、これに応じない場合は「より厳しいロックダウンを実施する可能性がある」と警告した。イギリスでは1日あたりの新規感染者数が7000人を超えるなど、急速なペースで増加しているが、第1波の際のロックダウンにより過去100年間で最悪の経済的ダメージが生じているため、ロックダウンに対する反対が強まっている。イギリスの新型コロナウイルスによる死者数はヨーロッパで最も多く、世界でも5番目に多い。

 

アメリカ:ニューヨーク市で再拡大の兆候

トランプ大統領も新型コロナウイルスに感染するなど、いまだ感染拡大の勢いが止まらないアメリカ。ニューヨーク州のクオモ知事は28日、同州の新型コロナウイルスの陽性率が1.5%に上昇したと発表した。一時期は1%以下にまで回復していたこともあり、懸念される兆候と見られている。全米では同日、50州のうち30州で新規感染者数が増加した。中でも中西部での感染が急速に拡大しており、ウィスコンシン、サウスダコタ、ユタ、ワイオングの各州では、今月に入って1日当たりの新規感染者数がこれまでで最多を記録している。

ニューヨーク市では9月30日、ロックダウン実施以来、半年ぶりに店内での飲食が解禁された。ただし、客数の上限は定員の25%に制限されるという。公立学校での対面授業も1日に再開された。大都市で対面授業を全面的に再開したのはニューヨーク市が初となる。しかし、感染の再拡大を警戒する保護者の間では、子供を登校させることへ不安を持つ親も多く、約半数の48万人の生徒は、引き続きオンラインによる学習を選択している。

 

オランダ:過去最高の新規感染者数

オランダのルッテ首相は9月28日、新型コロナウイルスの感染拡大抑制に向け、新たな制限措置を実施すると発表した。同政府は主要都市間の移動を制限し、バーやレストランの閉店時間を午後10時に義務付け、企業には従業員に在宅勤務を促すよう求めた。また、主要都市の小売店では、マスクを着用していない人の入店拒否が認められる。オランダは現在、新型コロナの第2波に見舞われており、28日の新規感染者数は2989人と過去最高を記録した。

 

やまとごころでは、重点20市場における入国規制の状況を一覧にまとめています。
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各国・地域の入国規制まとめ

 

 

 

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