インバウンドコラム
【コロナ:世界の動き】「Go To トラベル」札幌と大阪で一時停止。キャンセル料は国が補填 香港=シンガポールのトラベルバブル延期
新型コロナウイルスの感染が日本国内で再拡大していることを受け、政府は観光需要喚起策「Go To トラベル」事業の一部制限に踏み切った。一時停止措置により発生するキャンセル料は国が補填する。シンガポールとの間でトラベルバブルを22日よりスタートさせる予定にしていた香港でも感染が拡大しており、開始が延期となった。香港政府も感染拡大抑制のため防疫措置強化を発表している。
「Go To トラベル」札幌、大阪除外。3週間想定
大阪府、北海道の要請を受け赤羽国交相は24日、大阪市と札幌市の新規予約を一時停止する方針を表明。期間は3週間を想定している。
新型コロナウイルスの感染再拡大を受け政府は連休初日となる21日に、需要喚起策「Go To トラベル」を一部制限する方針を示した。菅首相は「国民の命と暮らしを守るのが政府の最大の責務」とした上で、感染拡大地域を目的地とする新規予約の一時停止を検討するよう都道府県知事に求めた。西村経済再生相は制限をかける際の目安となる、上から2番目に深刻な感染状況を示す「ステージ3」への認定について、「まずは知事に判断していただきたい」と述べ、事業を制限する対象地域や時期に関しては知事に判断を委ねるとの姿勢を示した。
全国知事会、ステージ3で除外を提言
こうした政府の方針を受け全国知事会は23日、国への緊急提言をまとめた。この提言では、感染状況が4段階で上から2番目に深刻な「ステージ3」に相当すると判断した場合、政府が「Go To トラベル」からの除外を判断するよう求めた。また、「Go To トラベル」の一時停止などについての具体策の明示を求める声が相次いだ。東京都の小池知事は「(見直しも)しっかりと国の方で判断いただきたい。それが責任だ」と述べ、愛知県の大村知事は「国の事業としての方針を示していただかないと、判断しかねる部分がある」との見解を示した。
大阪市、札幌、一時停止を要請
こうした中、大阪府の吉村知事は23日、「大阪市内は(Go To トラベルを)一時停止したい」と述べた。大阪府は24日に対策本部会議を開き、大阪市内への受け入れの一時除外を国に要請することを決め、一部飲食店に対しては27日から営業時間の短縮を要請する考えも示した。吉村知事は、午後9時までの時短営業を15日間要請し、協力した事業者へは「1日2万円を15日間で計30万円、府と国で負担する」と説明している。
北海道の鈴木知事は23日、札幌市内での感染や医療体制への負荷が続いていることを指摘し、「札幌市内におけるGo To トラベル事業の一時停止について、検討せざるを得ないと判断しました」と述べた上で、早ければ月内にも札幌市の新規の予約を一時停止する方針を示した。
大阪府、北海道の要請を受け赤羽国交相は24日、大阪市と札幌市の新規予約を一時停止する方針を表明。期間は3週間になる見通しで、感染状況が改善されれば再び適用を認める。
旅行取り消しのキャンセル料は国が負担
加藤官房長官は24日の記者会見で、「感染拡大地域を目的地とする旅行について新規予約の受付を停止し、既存の予約分も事業による割引措置の対象から外す」と説明し、期間中の既存予約も割引対象から外すほか、国が旅行者のキャンセル料を全額補償し、事業者向けにも取り消された旅行代金の35%分を補助するとした。政府はキャンセルで生じた費用を国が負担することで感染拡大を抑え込む狙いで、「Go To トラベル」を一時停止した地域の人々が他地域に旅行する際は、引き続き事業の対象として割引を適用する考えだ。
「Go To イート」も一時停止を都道府県に要請の方針
野上農林水産大臣は24日、「Go To イート」の一時停止などを検討するよう都道府県に要請する方針を明らかにした。政府は都道府県に対し、各地域の感染状況を踏まえた上で、食事券の販売の一時停止、および利用者に食事券やポイントの利用を控えることを呼びかけるよう要請する。
シンガポール=香港間、22日より開始予定のトラベルバブルを延期
シンガポール=香港間で11月22日より開始する予定となっていたトラベルバブルの運用を、香港で新型コロナウイルスの第4波とされる感染拡大が始まったことを受け、開始時期を2週間延期して検討すると発表した。21日、香港で確認された新型コロナの新規感染者はこの3カ月で最多となる43人となったことを受け、開始予定の前日となる21日に急遽決まった。ビジネス目的のみに限らず、住民を対象としたトラベルバブルは、新型コロナウイルスで世界の往来が閉じられる中、世界初で開始される予定となっていた。今回の措置は、双方の航空会社や観光ビジネスに打撃となる。
香港、新たな防疫強化策を発表、感染リスクアプリは16日からスタート
香港政府は感染経路不明の域内感染が増加したことを受け、防疫措置を強化する方針を急遽発表した。変更内容は以下の通りで、11月16日〜11月26日まで導入されている。
[1]飲食店(バーを含む)での店内飲食は午前2時まで→午前0時までに変更
[2]飲食店(バーを含む)の客数を通常の座席数の75%→50%に変更
[3]飲食店での飲食は1テーブル6名まで→4名までに変更
[4] バーでの飲食は1テーブル4名まで→2名までに変更
[5]屋内運動施設内ではマスクを着用する(1.5メートルの対人距離が取れる場合を除く)
同政府はホテルでの防疫に関する措置も強化。ホテルで強制隔離をしている人への訪問を禁止、差し入れ等は部屋の前までとする、1室利用は4名まで(家族での利用は除く)などの措置が導入されている。
また、クラスターが起きた場合などに備え、15日から特定のグループを対象に検査を強制的に受けることを求める法律を制定した。この指示や命令に従わない場合、2000香港ドルの罰金か、最悪の場合は6カ月の禁固刑に処せられるという。
接触アプリ「安心出行」の運用開始
この他にも同政府は16日から新型コロナウイルスの感染者と接触した可能性を通知するアプリ「安心出行」の運用を開始した。無料でダウンロードしたアプリで施設やタクシーなどに貼られたステッカーをスキャンすると、自分の過去の行動履歴がわかるようになる。また、政府が発表する感染者情報との照合も可能になる。すでに約6000の施設や約1万8000台のタクシーで導入が進められている。
体験予約サイトKlookは、割引キャンペーンを実施
感染拡大が懸念される中、香港発の旅先体験予約サイト『Klook(クルック)』は香港政府観光局と連携し、グルメプロモーションを展開。香港の飲食店約160店で優待サービスを提供するほか、指定された料理を120香港ドル以上購入した場合には40香港ドルの割引、60香港ドル以上消費した場合には20香港ドルの割引になるなどの特典を打ち出している。
やまとごころでは、重点20市場における入国規制の状況を一覧にまとめています。
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