インバウンドコラム

イギリス ワクチン接種者の入国規制緩和、新型コロナウイルス感染症の規制ほぼ撤廃へ。マスク着用義務も解除

2021.07.14

印刷用ページを表示する



イングランドで19日に新型コロナウイルス感染症の規制をほぼ撤廃へ

ボリス・ジョンソン英首相は7月12日、イングランドの新型コロナウイルス感染症対策として続けてきた、集会やイベントの人数規制、公共交通機関や小売店などでのマスク着用義務、対人距離の確保、在宅勤務の推奨などを、ほぼすべて撤廃すると発表した。

同国ではデルタ株が猛威を振るい、新規感染者が今年1月以来最多となる3万人を超える日が出るなど、再び上昇傾向に転じている。しかし一方で、同首相は、感染者は増加しているもののワクチン接種によって重症者数や死者数が低い水準にとどまっていることに触れ、7月19日に「平時に戻る」準備を進めていると述べた。ただし、今後も感染者は増え、1日5万人に達する可能性もあるとの見解を示している。

 

第4段階の規制緩和の内容は?

イングランドでは、正常化に向けた新型コロナウイルス感染症に関する規制緩和を、4段階に分けて行ってきたが、その最終フェーズとなる「第4段階」の内容には以下の項目が含まれる

・社会的接触の制限を終了する。
・屋内外での集会、冠婚葬祭の人数制限をなくす。
・在宅勤務の推奨勧告を撤廃する。
・ナイトクラブを含む現在閉鎖中のすべての会場で再開が許可される。
・バーやレストランのテーブル席での接客に関するルールなどを撤廃する。
・店舗、学校、公共交通機関などでのマスク着用義務を解除する。
・学校で1人の生徒に陽性反応が出た場合、多数の生徒を帰宅させる措置を廃止する。

野党や専門家などからは、感染が拡大する中での撤廃はリスクがあるとの声も上がっており、新たな変異株の出現により医療機関が再びひっ迫する恐れも指摘されている。イングランド以外のスコットランド、ウェールズ、北アイルランドでは、各自治政府のルールに則って制限措置の見直しが判断されるという。

英政府は、イングランドで2回目のワクチン接種が完了し、その後最低10日が経過した人に対し、陽性者と接触していた場合の自主隔離を免除する方針を示した。現在は陽性者と接触した場合、最長10日間の自主隔離が義務付けられている。この措置は8月16日から有効となる見通しで、同政府は18歳未満の人々も同様に免除する方針を明かした。

 

サッカー欧州選手権で6万人超えがマスクなし観戦

イギリスでは、サッカー欧州選手権のイングランド対イタリアの決勝戦が7月11日に行われ、6万人を超える観客が密集状態の中、マスクなしでスタジアムに入った。この試合は、政府の「大規模イベントの再開に向けた実証実験」と位置付けられており、入場の条件としてワクチン接種などが求められたが、マスクの着用は義務付けられなかった。同日には競技場だけでなく、ロンドン中心部にもファンが集結し、密集状態で応援したため、今後の感染拡大が懸念されている。

6月中旬から開催されている同選手権をめぐり、インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームは、イングランドで6月24日から7月5日にかけて行われた約4万7000件分の新型コロナウイルス感染症の検査結果を分析した。その結果、検査件数に占める陽性者の割合は、男性の方が女性よりも3割ほど多かったという。同研究チームはこの結果を受け、男性の観戦者が多いサッカーの欧州選手権の影響を指摘している。

同日には、テニスのウィンブルドン選手権の男子シングルス決勝も開催された。同選手権も政府の大規模イベントの再開に向けた実証実験の一環で、1万5000人を収容するセンターコートをほぼ満席にして観戦が行われた。大会の運営担当者によると、大会に関連して何件か陽性者が確認されたが、大規模なクラスターは発生しなかったという。

 

ワクチン接種完了者の帰国後10日間の隔離規制を緩和

イギリス政府は7月8日、ワクチン接種を完了したイングランド地域の住民に対し、感染リスクが中程度の「黄色(アンバー)」に分類される国・地域から帰国した際の自主隔離の規制を撤廃すると表明した。この措置も、イングランドでの規制緩和と同じく7月19日から適用されるが、帰国の前後に自費で検査を受ける義務は継続する。現在は、黄色に加え、感染リスクが高い「赤色」に分類される国、地域からの帰国者には、ワクチン接種の有無にかかわらず、10日間の自主隔離を義務付けている。同政府は、各国の感染リスクを高い順から「赤色(レッド)」「黄色(アンバー)」「緑色(グリーン)」の3種類に分類している。

これに先立ち、ロンドン・ヒースロー空港は、ワクチン接種が完了した乗客を対象に、入国審査の優先レーンを試験導入することを明らかにした。英大手航空会社のブリティッシュ•エアウェイズとヴァージン•アトランティック航空は、一部の便の乗客が、搭乗前にワクチン接種証明書を書面かアプリで提示することができるシステムを導入している。これにより、空港と航空会社は事前に接種証明を確認でき、乗客は迅速に入国審査を通過できるという仕組みだ。

 

冬季のインフルエンザ流行に備え、9月からワクチン3回目接種開始

イギリスでは成人の87.2%が1回目のワクチン接種を、66.2%が2回目のワクチン接種を済ませている。さらにイギリス政府は、インフルエンザのまん延が始まる前に、新型コロナウイルス感染症ワクチンの3回目の「ブースター接種」の調整も進めている。9月ごろから、50代以上の人と、基礎疾患があって重症化リスクの高い50代以下の人を対象に行う予定で、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症が冬季に同時流行しないよう、先手を打つ考えだ。

 

最新記事