インバウンドコラム
中国、デルタ株の感染拡大で再び規制強化
新型コロナウイルス感染症を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策を推し進めてきた中国で、市中感染が相次いで確認されている。当局は、感染力の強いデルタ株の影響や、夏休みに入って人の移動が活発になったことなどが要因と見ている。本土では7月下旬以降、江蘇省南京市の空港から感染が拡大し、18の省・自治区・直轄市で、1日に80〜100人程度の新規感染者が確認されている。
各地の衛生当局は感染拡大防止を目的とした対策を強化し、スマホの位置情報などを通じて感染経路や濃厚接触者を追跡したり、全住民を対象としたPCR検査や水際対策を徹底するなどしている。1年以上感染者の報告がなかった武漢でも市中感染が報告され、8月3日から約2800の検査場を設置し、約1200万人の全市民を対象とした大規模な検査を実施。この検査は8月8日に完了し、7日までに37人の感染者と41人の無症状感染者を特定した。
移動規制やマスク着用義務など、人々の生活が一変
デルタ株の感染拡大を受けて、中国各地では、住民の移動を制限する措置を打ち出している。多くの地域が省・市・自治区外への不要不急の移動を控えるよう要請し、一部地域では住民のマスク着用や、社会的距離の確保を再徹底する動きもあり、人々の生活が再び一変している。
北京市は8月1日、感染者が確認された地域から北京への人の流入を制限すると発表。北京へ向かう航空便や鉄道、バスなどの運休を決定した。上海も高リスク地域からの訪問者に対し、14日間の集中隔離を行い、中リスク地域からの訪問者にも14日間の健康観察を行う措置を講じている。
▲街頭には「感染防止はみんなの責任」と書かれた、マスクや手洗いを促す看板が。
旅行業界への影響は不可避
中国文化・観光部が7月29日に発表したデータによると、2021年上半期の国内旅行者数は前年同期比100.8%増の延べ18億7100万人に達し、新型コロナウイルス感染拡大前の19年同期の60.9%まで回復した。しかし、夏季休暇シーズン真っただ中の感染再拡大を受け、有名観光地の閉鎖が相次ぐなど、今後の観光業界への影響は不可避と見られている。5月に開園予定だったユニバーサルスタジオ北京も、デルタ株感染拡大の影響で8月上旬に開園が延期されていたが、再び開園時期がずれ込む可能性があるという。
航空業界も打撃を受けている。今回の感染再拡大により、書き入れ時だった国内線は大幅な欠航を余儀なくされ、各航空会社もキャンセル、変更の手続きに追われている。規制が緩和された今年は、春節連休から徐々に国内旅行のニーズが好転し、例年は閑散期で赤字となる4〜5月にも黒字を達成した航空会社があるほどだったが、ここにきて今後の見通しが立たない状況となっている。
中国国内のワクチン接種、17億回を突破
中国国家衛生健康委員会は8月4日、国内の新型コロナウイルスワクチン接種が17億835万6000回に達したと発表した(8月3日時点)。多くの地域ですでに15歳から17歳までのワクチン接種が始まっているが、一部地域では、12歳から14歳に対象を拡大している。当局は集団免疫の獲得を目指しているが、中国製のワクチンは欧米メーカーのワクチンと比較して効果が小さいとの指摘もある。また、一部自治体では、ワクチン未接種者による公共の場への立ち入りを禁止する方針を打ち出しているが、ワクチン義務化に対する議論も巻き起こっている。
▲上海市浦東新区のワクチン接種車
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