インバウンドコラム
日本国内は、新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず、深刻な状況が続いているが、世界ではワクチン接種率の向上に伴い、国境を再開し始める動きが徐々に見られるようになった。その多くがワクチン接種を完了した渡航者を対象としているようだ。今回は、最近動きがあった世界各国、地域の入国規制の緩和状況についてまとめた。
【アジア・オセアニア】
シンガポール、高リスク国からの就労ビザ保持者を条件付きで受け入れ開始
シンガポール保健省は8月6日、ワクチン接種が完了した渡航者を対象に、10日から入国制限を緩和すると発表した。この措置では、日本を含む「高リスク国」から、就労ビザ保持者と帯同ビザ保持者の入国を、ワクチン接種を完了した渡航者に限って受け入れる。米ファイザー製かモデルナ製、またはWHOが緊急使用リストに登録したワクチンの接種を完了した渡航者が対象で、接種完了日から2週間以上経過している必要がある。
また、20日からは、低リスク国8カ国を対象に入国後の隔離規定を緩和する。現在は政府指定の宿泊施設で14日間待機する必要があるが、希望者には自宅などでの待機を条件付きで認めるという。対象となる低リスク国は、オーストラリア、オーストリア、カナダ、ドイツ、イタリア、ノルウェー、韓国、スイス。
台湾-パラオトラベルバブル再開。ベトナム、観光地で外国人観光客受け入れへ
台湾の感染再拡大により停止していた台湾とパラオ間のトラベルバブルが8月14日、約3カ月ぶりに再開された。参加者は出発前のPCR検査で全員が陰性だった。希望者はパラオ側が提供するワクチンを接種できるという。また、台湾に帰国後、自主健康管理やPCR検査などが求められる。
ベトナム政府は、国内屈指の観光地であるフーコック島で、10月から外国人観光客を受け入れる方針だ。ワクチン接種を完了した外国人を対象に、「ワクチンパスポートプログラム」の試験運用を10月から6カ月間にわたって実施する。その間、外国人観光客4万人を受け入れる計画となっている。
ニュージーランド、22年に低リスク国からのワクチン接種者を隔離なしで受け入れへ
ニュージーランドのアーダン首相は8月12日、来年1月から3月の第1四半期のうちに、感染リスクの低い国からの入国を、隔離なしで受け入れると発表した。この新たなモデルでは、「低リスク国」からの渡航者は、ワクチン接種が完了していれば隔離が免除され、「中リスク国」からの渡航者は、ワクチン接種が完了している場合、隔離の期間や場所に関する条件を緩和する。「高リスク国」からの渡航者は、引き続き軍などが管理するホテルで14日間の隔離を義務付ける。
ニュージーランドは昨年3月以来、新型コロナウイルス対策のため、外国人の入国を原則として禁止し、特別に入国を認めた場合でも、陰性を証明した上で、14日間の強制隔離を義務付けていた。厳しい水際対策でウイルスの拡大を抑え込み、今年2月末以降、市中感染が確認されていない。一方で、同国でのワクチン接種完了者は全人口の17.3%(8月10日時点)となっており、アーダン首相は年末までに国民のワクチン接種が完了していない場合は、国境を再開しないと語っている。
【アメリカ大陸】
カナダ、米国からワクチン接種完了した旅行者の受け入れ開始。1年5カ月ぶり
カナダ政府は8月9日から、米国からの旅行などを目的とした不要不急の渡航を許可した。米国在住の米国民および米国の永住権保持者のうち、ワクチン接種を完了した渡航者に限り、14日間の隔離なしで受け入れる。ワクチンは、ファイザー製、モデルナ製、アストラゼネカ製、ヤンセンファーマ(ジョンソン&ジョンソン)製に限定し、入国時には、接種完了後14日以上経過したことを証明する書類を求める。米国からの旅行者に対して国境を開くのは、1年5カ月ぶりとなる。
国内の感染状況が引き続き良好であれば、米国以外からの渡航者の入国についても9月7日以降に解禁する予定だ。この発表を受け、エアカナダは、現在週3便で運航している「成田=バンクーバー線」を9月7日から週5便に増便すると発表した。
米国、入国制限緩和の条件に、ワクチン接種の義務化を検討
米国の複数の現地メディアは8月4日、バイデン政権が、入国するすべての外国人に対し、ワクチン接種を原則として義務付ける方針を検討していると報じた。米国は現在、デルタ株の影響による新型コロナウイルスの感染再拡大で、多くの国・地域からの入国を制限している。そのため、ワクチン接種の義務化は、入国制限を緩和する際の措置と見られているが、具体的に実施される時期などは明らかになっていない。一方で、国内の旅行業界や航空業界からは、入国制限の緩和を求める声があがっている。
ウルグアイ、ワクチン接種者に国境開放
ウルグアイは、同国での新規感染者と死者が減少に転じていることを受け、11月1日よりワクチン接種を完了したすべての外国人に対して国境を開放すると発表した。11月から本格化する夏のホリデーシーズンに向けて外国人観光客を受け入れる方針。同国内のワクチン接種完了率は、すでに約7割に達している。
【欧州】
英国、1年半ぶりに欧米からの渡航制限を緩和
英国は8月2日より、ワクチン接種を完了した米国とEUからの渡航者に対し、入国時の規制を緩和した。これを受け、同国のヒースロー空港では、1年半ぶりの再会を喜ぶ人たちの姿が見られた。フランスはこの時点では、EU加盟国でありながら、ベータ株への懸念を理由に例外扱いとなっていた。しかし、8月8日に行われた更なる渡航制限の変更により他のEU諸国と同等の扱いとなり、フランスを含む12カ国が規制緩和の対象となった。ブリティッシュ・エアウェイズは入国規制の緩和に伴い、ロンドンと米国の主要都市およびヨーロッパの主要都市を結ぶ路線を増便すると発表している。
【中東】
サウジアラビア、観光ビザでの入国再開
サウジアラビアは8月1日より、政府が指定したワクチンを接種するなど一定の条件を満たした外国人渡航者を、入国後7日間の隔離規制なしで受け入れている。同国は2019年9月末に初めて観光ビザを解禁し、2020年3月に新型コロナウイルス感染症の影響で国境を閉鎖するまでに約40万人以上の外国人観光客が訪れたという。観光ビザによる入国は約1年4カ月ぶりの再開となる。
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