インバウンドコラム
韓国では、夏から9月にかけて新型コロナウイルスの新規感染者が増加し、9月末にピークを迎えた。その後減少傾向に転じたが、再び感染が拡大。10月末には2000人を超える日が続き、10月31日には2061人の新規感染者が確認されている。週明けの11月1日は検査件数が少ないこともあり、5日ぶりに2000人を下回る1686人だった。今回は、韓国の新たな施策「段階的日常回復(ウィズコロナ)」と、海外旅行再開の動きを紹介する。
韓国、11月1日から「ウィズコロナ」スタート。2022年1月24日に全規制撤廃へ
韓国では11月1日から、日常生活の回復に向けた「段階的日常回復(ウィズコロナ)」がスタートした。この措置は6週間おきに3段階にわたって実施され、11月1日からの第1段階では、クラブなどの遊興施設を除き、ほぼ全ての施設で24時間の営業が可能になる。一方、遊興施設や屋内のスポーツ施設など、感染リスクの高い一部の施設では、ワクチン接種完了を証明する「ワクチンパス」もしくはPCR検査の陰性証明書の提示が求められる。また、私的な集会はワクチン接種の完了・未接種の区別なく、首都圏で10人まで、大規模な行事は100人未満まで認められるが、100人以上の場合はワクチンパスの提示が求められる。
新規感染者の急増などの理由がなければ、12月13日からの第2段階では、屋外におけるマスクの着用義務の解除が検討され、1月24日からの第3段階では、施設運営、イベント、私的集会に関する制限が全て解除される見込みだ。
また、「教育分野の段階的な日常回復推進策」により、全国の幼稚園児、小中高校生の登園・登校が22日に全面的に再開されることになった。18日に大学修学能力試験(日本の大学入学共通テストに相当)が実施されるため、それを考慮し、1~21日の3週間は準備期間とする。登校が再開されれば約1年8カ月ぶりのことだ。
ワクチン接種完了率が目標の70%を突破
「ウィズコロナ」を11月1日から始動した背景には、10月23日に国内のワクチン接種完了率が目標の70%を突破したことがある。同日からは、ワクチンパスの導入も始まり、「不便だ」「差別だ」などといった声も上がっていたが、韓国政府はウィズコロナの過程において「防疫管理を何も実施しなければ、当然状況は悪化せざるを得ない」とし、「この制度の実施は必ず必要だ」と強調している。
韓国人旅行者の海外渡航規制緩和、海外旅行の需要増
韓国では、今年6月末にトラベルバブル協定を結んだサイパンを皮切りに、ワクチン接種完了証明書もしくはPCR検査の陰性証明書を提出すれば、隔離なしで渡航できる海外旅行先が急速に増えている。例えば、グアム、ハワイ、モルディブは隔離なしで韓国人観光客を受け入れており、欧州ではスペイン、フランス、ギリシャなど約20カ国余りが「韓国人旅行客歓迎方針」を掲げている。タイも11月1日から韓国人観光客を隔離なしで受け入れており、11月15日からはシンガポールとのトラブルバブルが開始される予定だ。
こうした中、韓国の航空業界では、国際線運航を拡大する動きが加速している。韓国航空業界によると、11月からハワイ、シドニー、オークランド、バンコクなどへの定期便運航が再開されるという。また、韓国政府は昨年4月から水際対策として地方空港の国際線を中止し、仁川空港発着のみで対応してきたが、11月からは金海空港(釜山広域市)を皮切りに、地方空港の国際線を段階的に再開・拡大していく計画となっている。早ければ11月末から「金海=サイパン」線が週2便、「金海=グアム」線が週1便追加される予定だという。
海外旅行商品の販売スタートで旅行業界に回復の兆し
テレビ通販業界でも、約4カ月ぶりに海外旅行商品の販売放送を再開するなど、今後海外旅行商品の需要が高まることが予想される。業績不振に陥っていた旅行業界にも回復の兆しが見え始め、正常勤務体制に切り替える会社が増えているという。実際に海外旅行ツアーに参加した旅行者たちが、SNSで状況を伝えたことで人々の間に安心感が生まれ、二の足を踏んでいた人たちの旅行熱に火をつけたようだ。
一方、パンデミック以降厳格に実施されてきた外国人労働者の入国制限措置については韓国政府が11月1日、近日中に緩和する意向を示した。以前は年間5万人の外国人労働者が入国していたが、パンデミック以降は水際措置の影響で年間6000人〜7000人に減少し、中小企業や農業、漁業の分野では深刻な労働力不足に直面しているという。
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