インバウンドコラム

独身の日セール実績、業界大手2社の売上は15.8兆円に。格差是正やSDGsなど2021年の新トレンド解説

2021.11.17

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11月11日を「独身の日」とする中国では、大手ECサイトを中心に独身の日セールが行われた。中国当局が掲げる格差是正や脱炭素に配慮し、2021年は例年に比べて控えめなイベントになったが、セール自体は今年も活況を呈した。ここでは、中国における独身の日セールの動向をお伝えする。

 ▲地下鉄構内の独身の日(ダブルイレブン)の広告

 

中国「独身の日セール」、アリババの取扱高は大手2社で過去最高の15.8兆円

EC最大手のアリババグループは、自社のECサイト「天猫(Tmall)」で11月1日〜3日と、11日に独身の日セールを開催し、期間中(11月1日〜11日)の取扱高が5403億元(約9兆6000億円)だったと発表した。セールには過去最多の29万ブランドが参加し、取扱高は過去最高を記録した。今年は毎年恒例の派手なイベントや11日未明の取扱高速報は行わず、理性的な消費を求めるなど“お祭り感”が薄まったが、引き続きネット通販の消費が旺盛であることが示された。

業界2位の京東も自社サイト「JD.com」で独身の日セール期間中の取扱高が3491億元(約6兆2357億円)となり、過去最高を更新した。両社ともに輸入品の売り上げトップは米国だったと発表し、アリババはオーストラリア、ドイツ、日本、韓国などからの製品も好調だったと発表。コロナ禍で海外に行けない中、日本のユニクロや資生堂なども人気を博したという。一方で中国の国産ブランドが存在感を高め、天猫のアパレル部門では1〜3位を中国ブランドが占めるなど、急速にシェアを拡大している。

なお、業界トップ2のセール売り上げは15.8兆円にのぼった。

 

「格差是正」や「低炭素」を意識したイベントへと様変わり

アリババグループが派手なイベントを控えた背景には、中国政府が掲げる格差是正(共同富裕)がある。当局はネット通販各社をはじめとする巨大IT企業に対する統制を強めているため、各社は「低炭素」や「グリーン(環境保護)」を前面に打ち出し、社会貢献への取り組みをアピールする動きが見られた。アリババグループは独身セールの取引状況に応じて貧困家庭への寄付を行うほか、消費者にも寄付を促した。また、当局が掲げる脱炭素を意識し、省エネ製品などを揃えた専門サイトを用意するなど、環境問題に配慮したセールを展開。中国政府が「新エネルギー車」として位置づける電気自動車やプラグインハイブリット車なども特集された。アリババ幹部は「我々の焦点は、取引額中心から持続可能な発展の指標へと移った」と説明している。

 

シルバー需要は増加の見込み、一方で「買わない」若者も

アリババグループは、独身の日セールで高齢者向けのPR動画を打ち出したり、サイト内で文字や写真が大きく表示される“シニア向けモード”を導入したりするなど、シニア需要を意識した取り組みを展開した。天猫では血圧計や健康関連グッズが好調だったほか、日本の衛生用品大手「ユニ・チャーム」も大人用おむつの販売に力を入れたという。中国では少子高齢化が急速に進んでおり、60歳以上の人口は2億6000万人以上と全体の25.6%を占めている。60歳以上の市場規模は2020年の91兆円から2050年には20倍に成長すると推計されている。

一方、中国の若者の間では、SNS上で「消費主義逆行者」というグループが立ち上げられ、30万人近くのメンバーが集まっているという。購買行為を冷静に見つめ直し、本当に必要なモノだけを買うという考えに共感する若者が増えているようだ。

なお、13日の中国本土の新規市中感染者は70人と報告されている。10月中旬以降、中国本土の多くの地域で感染力の強いデルタ株の市中感染例が散発しており、11日には遼寧省衛生健康委員会が大連市での感染拡大を発表、全市民のPCR検査を始めたという。ゼロコロナ政策を掲げる中国では、来年2月に北京で開催される冬季五輪を控え引き続き素早い封じ込め政策を講じている。

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