インバウンドコラム
欧州が再び感染の「震源地」に
再び新型コロナウイルスの震源地となっている欧州では、感染者が激増し、クリスマス休暇を前にロックダウンを再導入する動きが強まっている。WHOは11月23日、このまま増加傾向が続けば、欧州での新型コロナウイルスによる死者は今冬に70万人に達する可能性があると警告した。欧州で再び感染が拡大している理由には、ワクチン接種率の伸び悩みやデルタ株の流行、気温の低下による屋内活動の増加、規制緩和などが指摘されている。ロイターのデータによると、世界で直近に報告された100人の感染者のうち、70人以上が欧州の国々から報告されているという。ワクチン接種が7割程度に達して頭打ちとなる中、欧州各国が現在講じている対策を紹介する。
ドイツ、感染急増で2州がクリスマスマーケット中止を発表
現在、欧州で最も1日の新規感染者が多いドイツでは11月24日に、1日あたりの新規感染者が6万6884人に上り、過去最多を更新した。ワクチンで獲得した免疫の減退や、デルタ株の流行が感染急増の原因とみられている。同国のウイルス学者は、対策を講じなければ新たに10万人が死亡すると警告しており、ドイツ政府は10月に有料化した迅速抗原検査を、再び無料化した。
メルケル首相と全16州の州首相は18日、全土で行動規制を強化することに合意。新たな措置では、職場や公共交通機関でワクチン接種証明書や陰性証明書が必要となる。ドイツ南部バイエルン州と東部ザクセン州は11月19日、感染拡大を受け、すべてのクリスマスマーケットを中止すると発表した。一方で、入院者数や死者数は、以前の流行時に比べて大幅に低い水準にある。メルケル首相は「集中治療室(ICU)がいっぱいになってから行動するようでは大災害になる。それでは遅すぎるからだ」と語っている。ドイツのワクチン接種完了率は全人口の約68%で停滞している。
英国、ブースター接種を40歳以上に拡大。医療従事者にワクチン接種を義務化
英国の1日あたりの感染者数は11月20日、3万9881人に上った。今年5月頃にはワクチンの効果もあり新規感染者が低い水準で推移していたが、7月に規制を全面的に解除して以来、感染者が増加。現在は高い水準のまま推移している。一方で、死者や重症者数はこれまでの流行時のようには増えていない。英政府は人口の大半を占めるイングランド地方で新たなロックダウンを実施する予定はないとしているが、今後重傷者が増えて医療体制がひっ迫する場合は、イングランドで「プランB」と呼ばれる追加対策を行う可能性を示唆した。プランBでは、マスク着用の義務化、在宅勤務の推奨、イベントでのワクチンパスポートの提示などが求められる。
同国では9月以降、50歳以上、医療従事者、16歳以上で基礎疾患を持つ人らを対象にワクチンの3回目の接種(ブースター接種)を実施してきたが、11月15日にはブースター接種の対象を40歳以上に拡大すると発表した。また、11月9日には、NHS(国民保健サービス)の職員全員にワクチンを義務付けると発表した。同国でワクチン接種2回を完了した人の割合は、68.7%(11月21日現在)となっている。
第5波に見舞われるフランス、小学校で再びマスク義務化
フランスでは11月23日、1日あたりの新規感染者が3万人を超えた。同政府は21日、新型コロナウイルスの第5波が爆発的に拡大しつつあるとの認識を示している。保健当局によると、20日までの1週間の新規感染者数が、前週から81%増加したという。一方で、ワクチン接種が進み、ワクチン接種や検査の陰性結果を証明する「衛生パス」の導入による効果もあり、入院患者数や死者の急増は見られていない。
隣国であるドイツとイギリスの新規感染者が先行して急増していることを受け、15日には国内の小学校で再びマスクの着用が義務化された。また、12月15日から65歳以上を対象に、屋内施設や公共交通機関を利用する際に、3回目の追加接種証明の提示を義務付けると発表している。
オランダ、規制反発の抗議デモが暴徒化。オーストリアは全土ロックダウンを開始
オランダでは、9月下旬に社会的距離を確保する規制が解除されて以降、新型コロナウイルスの新規感染者が急増し、1日あたりの新規感染者が連日過去最多の2万人越えとなっている。これを受け、オランダ政府は11月13日から3週間、部分的なロックダウンを再導入している。また、政府はワクチン未接種者を対象に屋内施設へのアクセスを制限する計画を打ち出しており、規制強化に反発する市民による抗議デモが広がり、一部暴徒化しているという。
新型コロナウイルス感染拡大に歯止めがかからないオーストリアでも、11月22日から全国的なロックダウンを導入。首都ウィーンでは11月20日、政府のコロナ対策への抗議デモが行われ、数万人が参加した。
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