インバウンドコラム
新型コロナウイルスの新たな変異株、「オミクロン株」が世界中で猛威を振るう中、世界各国・地域の政府は水際対策や規制の強化に追われている。パンデミックが始まって以来、国内の各州で厳格なロックダウン措置をとってきたオーストラリアでは、ワクチン接種率の上昇に応じて規制を緩和している。そのようななか、11月に発見されたオミクロン株による政策への影響はあるのか、国内の感染状況などと共にお伝えする。
オミクロン株の影響で入国規制緩和 2週間延期、15日に日韓からの入国再開
オーストラリア政府は11月27日、オミクロン株の水際対策として、アフリカ南部9カ国からの入国を制限する措置を導入した。これらの国から入国するオーストラリア市民や永住権保持者などにも、14日間の強制隔離を義務付けた。
同政府は、12月1日から日本と韓国からのワクチン接種済みの渡航者を隔離なしで受け入れると発表していたが、オミクロン株の発生を受けて、この入国再開を12月15日まで延期した。日本と韓国以外の国からのビザ保有者の入国再開についても一時停止し、同様に12月15日まで延期した。12月15日から再開される国境の緩和措置は、日本と韓国からの観光目的の渡航者にも適用される。また、日本と韓国以外の国・地域からの留学生や、高度技能を持つ移民労働者の受け入れも再開する。
同政府は今年8月に「オーストラリアの全国COVID-19対応を移行する国家計画」を発表し、ワクチン接種率が80%を超えた段階で、一部の国・地域に対して国境を開放するというロードマップを示していた。
国境再開は2週間延期されたが、同政府はその間にオミクロン株についての検証を行い、12月15日からの再開を決定。オーストラリアのハント保健相は、「オミクロン株は、感染力は高いものの、デルタ型よりも症状が軽いと思われる」と述べ、2回のワクチン接種が重症化や死亡を防ぐことを示す「明確な証拠」があると語っている。
中国人観光客の大幅減少も、他国・地域からの観光需要で回復見通し
オーストラリアのテハン貿易・観光・投資相は12月8日にシドニーで開催されたCAPA(アジア太平洋航空研究所)の会議で、コロナ禍で中国人観光客が大幅に減少したにもかかわらず、国内の航空業界と観光業界は回復するとの見方を示した。
同国は前述のように日本と韓国からの観光客の受け入れを12月15日から再開し、今後は北米や欧州、アジアなどからの観光客受け入れも視野に入れているため、2022年には世界の国・地域からオーストラリアを訪問する旅行者の需要が高まっていくとの見解を示した。
テハン氏はまた、国内のすべての州境が早期に再開することを強く望んでいるとし、それによってインバウンド需要をさらに後押しすることになると強調した。
市中感染が拡大も、クイーンズランド州は5カ月ぶりに州境を開放
オーストラリアの感染者は7月頃から徐々に増加し、8月から10月にかけて急増した。ピークの10月には日々2000人を超える感染者が確認されている。その後、感染者は減少傾向に転じたが、現在も1日1000人を超えるなど依然として高い水準にある。12月3日には、同国で初めてオミクロン株の市中感染も確認された。シドニーの学校に通う海外渡航歴のない子供3人が同株に感染し、その後、都市部を中心にオミクロン株への感染が急増している。
オミクロン株に対する懸念がある中、クイーンズランド州(州都ブリスベン)は12月13日、クリスマス休暇に先立ち、5カ月ぶりにニューサウスウェールズ州(州都シドニー)との州境を開放した。これにより、ワクチン接種が完了し、新型コロナウイルス検査で陰性結果が出れば州境を超えることができる。同州の空港や州境では、久々の再開に歓喜する人々の姿が見られたという。
11歳以下へのワクチン接種1月開始、成人ブースター接種5カ月に短縮
オーストラリアでは、総人口の75%がワクチン接種を完了している(12月12日時点)。ハント保健相は12月12日、オミクロン株の感染拡大を受け、ワクチン接種完了から3回目のブースター接種までの期間を、6カ月から5カ月に短縮すると発表した。オミクロン株の感染拡大のペースを遅らせるのが狙いだ。同政府は12月10日、2022年1月10日から5〜11歳の子供へのワクチン接種を開始すると発表した。ただし、子供への接種については、親の判断に委ねると強調した。同国では、12〜15歳の約70%がワクチン接種を完了している。
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