インバウンドコラム
新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」が確認され、世界中で急速に広がっている。EUの欧州疾病予防管理センターによると、これまでオミクロン株による死者は出ておらず、感染者のほとんどが無症状か軽症だという。しかし一方で、ワクチンを3回接種した後に感染する、いわゆる「ブレイクスルー感染」が報告されるなど、いまだ不透明な部分が多く、世界各国が警戒感を強めている。
タイでは11月1日以降、63カ国からワクチン接種済みの外国人観光客を隔離なしで受け入れているが、オミクロン株の出現以降はどのような対策を講じているのだろうか。今回は、開国してから1カ月が経過した今、外国人観光客の回復度合いも含め、同国の状況を紹介する。
11月1日よりTEST&GOを開始。63カ国から隔離なしで入国可能に
タイでは11月1日より、ワクチン接種済みの外国人観光客を隔離なしで受け入れる「TEST&GO」制度を導入しており、現在は日本を含む63カ国の国・地域からの渡航者がその対象となっている。この制度で入国する場合は、渡航前72時間以内に行ったPCRの陰性証明書の提示と、タイ到着時のPCR検査でも陰性であることが条件となる。また、タイ入国前21日間は対象国・地域に連続して滞在している必要がある。
TEST&GOの対象国・地域以外からワクチン接種済みの外国人観光客が入国する場合は、これまで実施してきた「サンドボックス」制度が適用される。サンドボックスで入国する際は、入国後サンドボックスの対象エリア内に7日間滞在する必要がある。サンドボックスの対象エリアには、バンコク、チェンマイ、プーケットなどの観光都市を含む全17地域が指定されている(12月1日時点)。
開国から1カ月が経過。11月にタイへ入国した渡航者は13万人
11月1日から30日までの1カ月間に、空路でタイへ入国した渡航者(タイ人含む)は13万3061人となった。このうち、「TEST&GO」での入国者は10万6211人で、「サンドボックス」での入国者は2万1438人だった。全体の8割がTEST&GOでの入国となっている。感染率はTEST&GOでの入国者が0.08%、サンドボックスでの入国者が0.21%だったという。出発地別トップ10は、1位からアメリカ、ドイツ、オランダ、イギリス、ロシア、日本、韓国、フランス、UAE、イスラエルの順だった。
入国規制の緩和により、11月の1カ月だけで、今年の10月までの人数を上回る渡航者が入国したが、2019年の訪タイ外国人観光客が3990万人(単純計算で月に約332万人)だったことと比較すると、コロナ前の水準にはまだ程遠い。タイ国政府観光庁のユタサック・スパソーン総裁は、オミクロン株の出現によりヨーロッパ諸国からの旅行の伸びが鈍化する兆候が見られるものの、2021年末までに外国人観光客が目標の50万人に達するだろうとの予測を発表している。
タイでオミクロン株への感染者が初確認、国内の感染は減少傾向
タイの新規感染者は今年8月中旬にピークを迎え、その後減少傾向に転じている。ピーク時には2万人を超える新規感染者が確認されていたが、現在は新規感染者が5000人程度で、ピーク時の約25%にまで減少した。
一方で、オミクロン株の流行も懸念される。タイでは12月1日以降、南アフリカでオミクロン株が確認されたことを受け、同国を含むアフリカの近隣8カ国からの渡航を禁止した。また12月6日には、スペインからドバイ経由で入国した、ワクチン接種済みの米国人旅行者がオミクロン株に感染していたことが明らかになった。タイでオミクロン株の感染が確認されたのはこれが初となる。経済回復に舵を切ったタイ政府は、オミクロン株が確認される以前には、オミクロン株対策として入国制限を強化する可能性は低いとの意向を示していた。
タイのプラユット首相は11月6日、タイで初めてオミクロン株の感染が確認されたことを受け、「国内の感染はコントロールしている」と語り、これまで通りの感染対策を継続しつつ、国民に冷静な行動をするよう呼びかけた。また、ワクチンを2回接種した人に、追加接種を受けるよう促している。
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