インバウンドコラム
日本は現在、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染拡大の真っ只中にあるが、英国や、オミクロン株への感染例を最初に報告した南アフリカでは、既に同株による感染の波がピークアウトしている。英国では1月19日、新型コロナウイルス対策として導入してきた規制の大幅緩和が発表された。これにより、1月19日には在宅勤務勧告が終了し、27日から多くの屋内施設でのマスクの着用義務が解除され、大規模イベント参加時などのワクチン接種証明書または検査の陰性証明の提示義務も解除される。
また、米国やタイでも増加傾向が止まり、オミクロン株による感染の波が収束しつつあるとの見方もある。ここでは、新型コロナウイルスの流行により大打撃を受けている東南アジアの観光大国、タイの状況を見ていこう。
タイ、感染者数鈍化で国内の規制を緩和、4回目のワクチン接種開始の地域も
タイ国内の新型コロナウイルスの新規感染者は1月23日、7686人だった。5日連続で7000人を超えているが、増加傾向がストップしたと見られている。死者は13人だった。感染ペースが鈍化してきたことを受け、タイ政府は1月24日から、一部地域で飲酒規制を緩和した。これまでは全77都県中69県を管理地域(オレンジゾーン)に指定し、飲食店での酒類の提供を禁止していたが、このうちの25県の警戒レベルを1段引き下げ、高度警戒地域(イエローゾーン)に変更し、飲食店での酒の提供を許可する。この緩和措置により、イエローゾーンと、飲食店での酒類の提供が午後9時まで認められていた観光地のバンコクやプーケットなどでは、酒類の提供が午後11時まで延長された。
タイでワクチン接種を完了した人は総人口の約68.5%、3回目の追加接種を完了した人は約15.8%となっているが、観光地のプーケットでは、医療従事者などの感染リスクの高い人々を対象に、4回目の接種を開始した。また、1月31日からは、5〜11歳の子供を対象に接種を開始する。
2月1日から、外国人観光客の隔離免除を再開
タイ政府は1月20日、オミクロン株の感染拡大で停止していた外国人観光客の入国時の隔離を免除する「テスト・アンド・ゴー」制度について、2月1日から再開すると発表した。同制度はオミクロン株世界的な流行を受けて昨年12月21日から停止されていた。同政府の報道官は、死者数も入院者数も急増していないため、再開を決めたとしている。再開されれば、ワクチン接種を完了した外国人観光客は到着初日と5日目に政府指定のホテルを予約し、そこでPCR検査を受けることを条件に、隔離なしで同国に入国できることになる。また、感染対策を遵守しているかを確認するための追跡アプリのダウンロードも義務付けられる。
「テスト・アンド・ゴー」を開始した昨年11月1日から、停止前日の12月20日までの期間に入国した訪タイ観光客数は、約25万3000人。停止前は63カ国・地域からの観光客が対象だったが、再開後は全ての国・地域が対象となる予定だ。
外国人富裕層に対し、最長10年の長期滞在ビザを発給へ
タイ政府は1月18日の閣議において、国内消費や投資を促進する措置の一環として、外国人富裕層や年金生活者、リモートーワーカー、高度技術人材などをタイに誘致する「ロングタームレジデント(LTR)ビザ」の新設を原則承認した。同ビザを取得すれば、本人以外に家族4人(配偶者と20歳以下の子供)まで滞在が可能。外国人は、同ビザの取得でタイに最長5年間滞在することが許可されるが、延長が1回のみ許可されるため、実質計10年滞在できることになる。ビザ発行には、年間手数料1万バーツ(約3万4500円)を支払う必要がある。ビザを取得した後は、タイ国内での就労も認められる。
2022年4月より、外国人観光客の航空運賃に入国料を追加
タイ政府は、観光産業の回復に向け、今年4月よりタイを訪問する外国人観光客の航空運賃に300バーツ(約1037円)の「エントリーフィー(入国料)」を組み込むと発表した。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、年間4000万人近くに達していた訪タイ外国人観光客数は激減したが、同政府は2022年には推定500万人の外国人観光客が見込めると予想している。
タイ国政府観光庁(TAT)ユタサック・スパソーン総裁は、エントリーフィーで得た収入について、「外国人観光客の保険適用と、持続可能な観光のためのインフラ整備に使われるだろう」と述べている。タイの観光スポーツ省によると、今年の観光収入は390億ドルから540億ドルと予想されており、そのうち約240億ドル(約2.7兆円)が外国人観光客からの収入と見込まれている。
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