インバウンドコラム
日本では、新型コロナウイルスのオミクロン株が急速に拡大し、連日新規感染者が過去最多を更新しているが、欧州では比較的毒性の弱いオミクロン株のまん延により、「パンデミック(世界的大流行)」から「エンデミック(風土病)」に移行するのではないかとの見方も出始めている。一方、中国ではこれまで、厳格なロックダウンや大規模検査などで感染を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ戦略」を続けてきた。今回は、北京冬季五輪を目前にした中国国内の感染状況や、現在のコロナ対策について紹介する。
五輪を目前に控えた北京市、感染者が過去1年半で最多
中国の北京市では2022年2月4日から2月20日までの17日間にかけて冬季オリンピック、3月4日から13日までの10日間の日程で、冬季パラリンピックが開催される。開幕を目前にし、北京市では市中感染が散発的に広がっており、1月23日には、解熱剤やせき止めなどの薬を購入した市民に対して、72時間以内のPCR検査を義務付けることが発表された。また、北京市南部にある豊台区は1月26日遅くから、不要不急の外出を制限し、日々のコロナ検査を義務付ける地域を拡大すると発表している。豊台区では他の区より多くの感染者が報告されており、すでに居住施設の一部が封鎖されている。
北京市の1月30日の新規感染者は20人となり、過去1年半で最多となった。中国では、1月31日から五輪の開催期間中の2月6日まで、春節の7連休に入っている。そのため、人の動きが活発になることも踏まえ、北京市の衛生当局は、不要不急の移動や集会の自粛を呼びかけている。
チケットの一般販売中止、選手や関係者はバブル方式で入国
北京冬季オリンピックの大会組織委員会は1月17日、厳格な新型コロナウイルス対策の一環として、一般向けのチケット販売を中止すると発表した。観戦できるのは招待客のみとなる。外国からの観客は受け入れないという方針はすでに示していたが、中国在住者へのチケットの一般販売は行うとしていた。
また、海外から入国する五輪選手団や関係者に対しては、一般市民と接触するのを防ぐ「クローズド・ループ」と呼ばれるバブル方式を採用し、選手や大会関係者、報道関係者らには、1日1回のPCR検査が義務付けられている。こうした中、北京冬季五輪の大会組織委員会は1月30日、バブル内で管理される選手や大会関係者から、34人の陽性が確認されたと発表した。
再生可能エネルギーの使用やカーボンニュートラルを目標に掲げる「グリーン五輪」
北京冬季五輪は「グリーン、インクルーシブ、オープン、クリーン」という4つの理念の下に行われる。同大会では、風力や太陽力発電による電力を活用し、CO2の排出量を差し引きゼロにする「カーボンニュートラル」を目標に掲げている。また、車両の85%には水素燃料電池車や、電気自動車などの省エネ車を使う計画となっている。2008年の北京五輪で使われたレガシー施設を今回の会場として再利用し、競技会場の建設においても生態系を優先し、自然環境との調和を重視したという。一方で、今回の北京冬季五輪のために作られたアルペンスキーの会場が、「本来の自然保護区の境界を変えて建設された」との指摘もあり、大会後の当該地域の開発に懸念の声も上がっている。
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