インバウンドコラム
新型コロナウイルスの感染拡大は世界規模で続いているが、入国制限の緩和に踏み切り、新型コロナウイルスとの共存に舵を切る国が増えてきている。これまで厳格な入国制限を設けてきたオーストラリアとニュージーランドも先日、入国制限の緩和を発表した。ここでは、両国が今後どのように緩和措置を実施していくのかを紹介する。
オーストラリア、ワクチン接種を完了した海外からの渡航者を2月21日から受け入れ
オーストラリア政府は2月7日、ワクチン接種を完了し、有効なビザを持つ全ての国・地域から渡航する人を対象に、2月21日から隔離なしで受け入れると発表した。オーストラリアは新型コロナウイルスの感染拡大以降、外国人の入国を原則禁止するという厳しい措置を講じてきたが、昨年11月からは留学生や技術者などの受け入れを優先的に再開。以来、ワクチン接種を完了したニュージーランド、シンガポール、日本、韓国からの渡航者は、条件を満たせば入国を認めるなど、規制緩和を進めてきた。今後、段階的に国際往来を再開し、本格的な経済回復を目指す。
同政府は1月19日にも、今後12週間以内に入国するバックパッカーや学生に対し、ビザの申請費用630豪ドル(約5万2000円)を免除すると発表した。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で不足している労働力を補うために、外国人旅行者を呼び込むことが目的で、オーストラリアのモリソン首相は、「各地を旅行すると同時に農業やホスピタリティー業界など、労働力が不足している現場で働いて助けてほしい」と訴えている。
現時点では、国民や永住者とその家族、留学生、バックパッカー、移民労働者は2回のワクチン接種証明を提示することで、入国が認められている。2月21日からは観光客にもこの条件を適用するが、医療上の理由でワクチン接種を受けられない場合は例外を認めるとしている。
オーストラリアでは、今年1月にオミクロン株の感染拡大がピークに達したが、現在は減少傾向にあり、1日当たりの新規感染者は2万人程度で推移している。ワクチン接種を2回完了した人は総人口の79.3%で、ブースター接種を完了した人は38.9%となっている(2月12日時点)。
NZ、2月27日から入国制限緩和、5段階に分けて実施
オーストラリアと同じく、新型コロナウイルスの感染拡大以降、「鎖国」とも称される厳格な水際対策を講じてきたニュージーランドでも、今年2月に入って入国制限緩和の動きが見られた。ニュージーランド政府は2月3日、入国制限を2月27日から段階的に緩和する方針を発表した。
今回の発表では、5段階で入国制限を緩和する計画が示されている。まず第1段階(2月27日〜)では、ニュージーランド国民や永住者、重要な産業で働く労働者が対象となり、第2段階(3月13日〜)ではこれに、所得基準を満たす技能労働者と、ワーキングホリデービザ保持者が加わる。ニュージーランドのアーダーン首相は「ビジネス界は成長のために技能労働者を必要としている」として、オーストラリアと同様、人材不足解消につながることを期待している。
続いて、第3段階(4月12日〜)ではニュージーランド国外にとどまっていて有効なビザを保有する一時滞在ビザ保持者や、最大5000人の留学生を受け入れ、第4段階(2022年7月まで)では、オーストラリアからの全ての渡航者と、日本を含む、入国ビザが必要ない外国人の受け入れを再開する計画だ。第5段階(2022年10月)には全ての国・地域からの渡航者に国境を開き、ビザの申請受付を通常通り再開する予定となっている。
緩和措置が実施されると、ワクチン接種を完了した海外からの渡航者は、政府指定の宿泊施設で隔離する必要がなく、自宅隔離のみで入国が許可される。また、10日間の隔離期間が、今後7日間に短縮される予定だ。空港到着時には全ての渡航者に予備を含む3回分の迅速抗原検査キットが配布され、到着日と到着後5日目または6日目に検査することが求められる。
国内では首都のウェリントンの国会前で、新型コロナウイルス対策の規制とワクチンの義務化に反対する人々によるデモが繰り広げられ、数百台のトラックやキャンピングカーが集結し、議会周辺の道路を封鎖した。ニュージーランド政府は、これまでに「ゼロコロナ」を目指し、厳格な規制で感染者と死者を極限まで抑えてきたが、国境封鎖によって家族から引き離された自国民の反発を招いたほか、外国人観光客の減少によって経済は打撃を被っている。
同国では現在、感染者が増加傾向にあり、2月13日には1日当たりの新規感染者が過去最多の1796人に上っている。ワクチン接種を2回完了した人は総人口の77.6%で、ブースター接種を完了した人は38.2%となっている(2月13日時点)。
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