インバウンドコラム

外国人観光客への門戸を開く東南アジア、規制緩和で打撃を受けた観光業立て直しへ

2022.02.24

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新型コロナウイルスの感染拡大により、国の経済を支える観光業が大きな打撃を受けている東南アジア諸国では、ワクチン接種済みの外国人観光客を対象に、入国制限の緩和に踏み切る動きが活発化している。スカイスキャナーが2月15日に発表したデータによると、ベトナム、マレーシア、タイ、インドネシア、シンガポール、フィリピンへの1月の国際線予約は、ベトナムの前月比299%増を筆頭に、各国で急増していることが明らかになった。ここでは、東南アジア諸国の国境再開に関する情報を紹介する。

 

タイ 2月に「テスト・アンド・ゴー」再開、2022年に観光業の復興を本格化

タイでは2月1日、全世界からのワクチン接種済みの外国人観光客を対象に、入国時の隔離を免除する(PCR検査時の1日目と5日目は指定ホテル滞在が必要)「テスト・アンド・ゴー」制度を再開した。再開から1週間で、入国に必要な「タイランドパス」の申請者が6万人を超え、外国人入国者が急増しているという。同制度はオミクロン株の世界的な流行を受けて、昨年末より停止されていた。

タイ政府は2022年を観光年として定め、「Visit Thailand 2022・アメージングタイランド・アメージングニューチャプター」というスローガンを掲げ、観光業の復興を本格化する。

一方、タイを旅行する外国人旅行者がマスク着用義務を守らないなどの問題も出てきている。同政府は「ワクチン接種済みであることは、マスク非着用の言い訳にならない。厳格に処罰する」と警告し、公の場でマスクをしない人には最大で2万バーツ(約7万円)の罰金を科すと発表している。

タイ政府の新型コロナウイルス感染症対策センターは20日、新規感染者が1万8962人だったと発表した。タイでは、感染者数が増加傾向にあるが、重症者や死亡者の著しい増加が見られないという。

 

ベトナム「ゼロコロナ」から経済重視に転換。3月15日より外国人観光客受け入れ

ベトナム政府は2月16日、新型コロナウイルス感染症による医療体制のひっ迫が見られないことから、外国人観光客の受け入れを3月15日から再開すると発表した。ワクチン接種完了証明書や、渡航前72時間以内に実施したPCR検査の陰性証明書などを提示すれば、入国後の隔離が不要になる見通しだ。実現すれば、約2年ぶりに国際往来を再開させることになる。

これに伴い、2月15日には国際定期便に関する制限措置も撤廃し、全ての国・地域を対象とした定期旅客便の運航が可能になった。ベトナムは当初、「ゼロコロナ政策」を掲げて厳しい規制を敷いてきたが、経済が大きく打撃を受けたことを背景に、昨年10月から経済活動を段階的に緩和させる方針に転換している。

ベトナムでは、新型コロナウイルス感染症が急拡大しており、2月19日には1日あたりの新規感染者が過去最多の5万4830人を記録した。同国でワクチン接種を完了した人の割合は約8割で、3回目のワクチン接種率も約3割に達している。

 

インドネシア、地域限定で19カ国からの外国人観光客を受け入れ 

インドネシア政府は、感染拡大で大きな打撃を受けた経済の立て直しに向けて水際対策を緩和するなど、「ウィズコロナ」への方針転換を進めている。現在、オミクロン株の感染拡大の影響で、首都ジャカルタの空港を経由した外国人観光客の入国は一時禁止となっているが、バリ島やリアウ諸島に限り入国を許可している。日本、中国、フランス、インド、イタリアを含む19カ国からのワクチン接種済みの観光客であれば、入国後5日間の隔離(自己負担)を条件に入国できる。 

インドネシアでは、新型コロナウイルスの1日当たりの新規感染者が過去最多の6万人を超え、感染拡大に歯止めがかからない状況が続いている。2月17日には累計の感染者が500万人を突破した。 

 

フィリピン、2月10日から外国人観光客を隔離なしで受け入れ再開

フィリピン政府は2月10日、日本を含む157カ国から入国するワクチン接種済みの外国人観光客を対象に、隔離なしでの受け入れを再開した。新型コロナウイルスの感染拡大によって2020年3月に入国を禁じて以来、およそ2年ぶりの再開となる。

入国時には、ワクチン接種完了証明書と、渡航前48時間以内に実施したPCR検査の陰性証明書、30日以内に出国する航空券を提示する必要があるが、入国後の隔離は免除される。同国にとって観光業は主産業で、パンデミック前の2019年には820万人の外国人が訪れ、国内総生産(GDP)の12.8%を占めていたが、2020年には150万人に激減した。

フィリピンでは、今年1月中旬に新型コロナウイルスの1日あたりの新規感染者が過去最多を更新するなど、感染拡大のピークを迎えていたが、その後急減し、現在はピーク時から10分の1以下にまで抑えられている。

 

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