インバウンドコラム
世界中で新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、欧米や東南アジアを中心に「ウィズコロナ」の政策を打ち出し、国境規制を緩和する動きが出ている。英国では新型コロナウイルス関連の渡航規制を完全に撤廃し、インバウンド観光促進を目的としたグローバルキャンペーンを大々的に行っている。また、英国のナショナルフラッグキャリアであるブリティッシュ・エアウェイズは、機内でのマスク着用を「義務」から「任意」に変更した。このように、感染者数の増減にかかわらず、自由な国際往来の再開を進める国が出てきた一方で、日本、中国、香港、韓国などの東アジアは依然として外国人観光客に門戸を閉ざしている。今回は、引き続き「ゼロコロナ」を掲げ、国境を厳しく閉ざしている中国と香港、そして感染拡大が続く韓国の動きをお伝えする。
中国「プチバケーション」ブーム到来、2021年の国内旅行はコロナ前の54%に
現在中国は、外国人観光客に対して国境を開放していない。日本から訪中するには、中国政府が入国を認めているビザまたは居留許可が必要で、 [1]搭乗予定日の7日前に指定検査機関でPCR検査を実施 [2]搭乗予定日の3日以内に2つの指定検査機関で24時間以上空けて別々にPCR検査を実施 [3] 検体採取日から7日間の健康観察および「自己健康状況観察表」の記入が条件となるほか、入国後14日間の隔離期間が設けられている。[1][2]の渡航前検査は、中国当局が指定する検査機関で行う必要があるなど、非常に厳しい規制が敷かれている。
一方、新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、海外旅行に行けない中国の人々の間では車で行ける近場への「プチバケーション」が旅行の主流となっているという。長距離ではなく、車で2、3時間の距離にある観光地へ出向くことが多くの人の間で人気の観光スタイルとなっている。中国文化・観光部(省)が発表したデータによると、2021年の国内観光客数は前年比12.8%増の延べ32億4600万人に達した。パンデミックが発生する以前の2019年と比較して、54%程度となっている。
中国では、3月に入ってからオミクロン株による市中感染が各地で拡大し、武漢での感染拡大以降2年ぶりの高水準が続いている。こうした中、習近平国家主席は、最高指導部の会議で感染を厳しく封じ込めるゼロコロナ政策の徹底を指示し、感染対策を怠った地方幹部の責任を厳しく問う方針も強調した。
感染拡大が続く大都市の上海では、14日から市内全ての小中学校でオンライン授業が始まり、濃厚接触者の出入りが確認された学校やオフィスビルなどが相次いで閉鎖されている。13日から来園者に対して24時間以内のPCR検査の陰性証明を求めていた上海ディズニーランドは、21日からは臨時休園となった。再開の時期は未定という。
香港、市民に外出控えるよう呼びかけ、全てのビーチ封鎖など厳しい規制
現在、香港に入境できるのは、香港居民もしくは香港のビザ保持者のみで、外国人観光客は受け入れていない。また、オーストラリア、カナダ、フランス、インド、ネパール、パキスタン、フィリピン、英国、米国の8カ国からは、現在入境が認められておらず、日本はその次に厳しいグループA(ハイリスク国)に指定されている。グループAから入境する場合は、ワクチン接種を完了し、搭乗の48時間以内に実施したPCR検査の陰性証明書を提出する必要がある。入境後14日間指定検疫ホテルで隔離を行う義務があり、その後7日間は自己観察期間(義務的隔離は不要)に入るが、14日間の義務的隔離期間中にPCR検査を6回行い、入境16日目と19日目にも検査を行う。
香港では、新型コロナウイルスの感染が拡大しており、2021年末からの新規感染者が全人口の1割を超えた。また、直近の死亡率は世界最悪の水準に達したという。こうした中、香港当局は域内全ての公共ビーチを3月17日から封鎖。感染拡大でロックダウンを強いられている中国本土から、ビーチで遊ぶ香港人への非難の声が高まっていたことがきっかけとなっている。当局は、外出を避け、感染拡大防止に努めるよう市民に呼びかけている。
もっとも、これまでのゼロコロナ政策からウィズコロナへの動きも見られる。香港政府は3月21日、オミクロン株による第5波の感染者数が減少傾向を示し、陽性者の増加とワクチン接種率の向上で、集団免疫を獲得したと推測されることから、4月1日以降の防疫対策についての方向性を示した。それによると、指定検疫ホテルでの隔離は最短で7日に短縮、飲食や各種施設の再開に向けては3段階の緩和策を講じるなどとしている。
香港政府観光局は3月15日、2月に香港を訪れた旅客数の速報値を発表した。それによると、前年同月比52.2%減の延べ2626人だった。感染爆発の影響を受け、中国本土から訪れた旅客も前年同月比52.4%減の1810人となっている。
韓国、ワクチン接種の履歴登録で入国時の隔離を免除。ハワイ旅行に注文殺到
現在、韓国へ入国するためには、2020年3月9日以降に新たに発行されたビザが必要となる。これまで、外国から韓国へ入国する際は、自宅や施設での7日間の隔離が義務付けられていたが、3月21日からは、2回目のワクチン接種から180日以内、もしくは3回目のワクチン接種を終えていて、事前入力システムで接種履歴を登録した場合、入国後の隔離が免除される措置に変更された。なお、出発前48時間以内と、入国後1日目と6〜7日目に3回検査(6〜7日目は迅速抗原検査も可能)をする必要がある。4月1日以降はさらに規制が緩和され、海外から入国した人すべての人に、公共交通機関での移動が許可されるという。
3月21日の入国規制緩和や4月1日以降のさらなる緩和を受け、韓国では海外旅行商品の販売が急増している。中でもテレビ通販チャンネルが旅行会社と提携してハワイパックツアーを紹介したところ、1時間で1200件の注文があったという。注文総額は90億ウォン(約9億円)を超えている。さらには、スーツケースをはじめとする旅行用品の売上高が大きく伸びていることも明らかになった。
3月16日に1日当たり60万人を超える新規感染者が出て過去最多を更新すると、20日は20万9169人に減ったものの、21日には35万3980人と増加。これは前日よりも検査数が急増したためと見られ、ピークアウトにはまだ時間がかかりそうだ。一方、21日の死者は384人で過去2番目の多さとなった。
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