インバウンドコラム

第3回オーストラリアのベビーブーマー(団塊の世代)の 心を掴むために 〜その1〜

2013.06.02

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オーストラリアの銀行ANZ銀行の調べでは、なんと92%のベビーブーマーたちがリタイアしたら旅行をしたいと思っており、さらに83%が趣味のスポーツをしたいという結果になった。
この調査ではベビーブーマーたちを、これまでオーストラリア人が使っていた「リタイア」という定義では表現しきれずに、この世代のリタイアを「ニューリタイアメント」と呼んでいる。
第2回でベビーブーマー、つまり団塊の世代が、いかに大きな市場になりえるかということについて述べた。今回は、さらにその検証をしたいと思う。

目次:
旅行に行きたいベビーブーマーたち
従来のシニアと異なるベビーブーマー
オンラインで情報をとるベビーブーマー
60歳を過ぎてもまだアドベンチャーしたいベビーブーマー
自分で決めたいべビーブーマーたち
オーストラリアのベビーブーマーたちを日本に引き寄せる作戦 〜その1まとめ〜

 

旅行に行きたいベビーブーマーたち

img01-5オーストラリアの銀行ANZ銀行の調べでは、なんと92%のベビーブーマーたちがリタイアしたら旅行をしたいと思っており、さらに83%が趣味のスポーツをしたいという結果になった。

この調査ではベビーブーマーたちを、これまでオーストラリア人が使っていた「リタイア」という定義では表現しきれずに、この世代のリタイアを「ニューリタイアメント」と呼んでいる。

オーストラリアのベビーブーマーたちの「ニューリタイアメント」は、ライフスタイルをベースにしたリタイアメントで、旅行、趣味の生活、ボランティア活動などが入る。
ちなみに、この調査では76%がボランティアワーク、70%が海外旅行、休息が69%と答えている。

 

従来のシニアと異なるベビーブーマー

他の調査を見てみると、ベビーブーマーはオーストラリア歴史上、最も高い学歴を持つ世代であるとの報告も。
そのため、オーストラリアの史上最も高い収入も持っていて、そして最も長生する世代なのではないかとも予測されている。

この世代は、戦後、大きな変化をくぐっている。戦後、日本と共通なのは、アメリカ文化がテレビを通じて入ってきたこと。男女共学や男女平等などの思想も入り、また日本でいうバブルも、その崩壊も経験している。
さらに近年になってデジタル社会がやってきて、ラジオからテレビ、テレビからコンピューター、コンピューターからスマートフォンにタブレット端末まで経験している。また、世にいうグローバライゼーションなども経験してきた。

 

オンラインで情報をとるベビーブーマー

img02-5私がオーストラリアで参加しているFacebookに、『….starts At Sixty (人生は60歳から)』というタイトルのon line community over sixty(60歳以上のオンラインコミュニティ)というのがある。日本にも似たようなものがあって、私は購読しているが、日本のものには、「シニアなんとか」という名前がついていて、正直ここからして“イケてない”と思う。

日本もオーストラリアも、我々ベビーブーマーは、シニア扱いされたくないのだ。

70歳以上のシニアをシニアと呼び、ベビーブーマーは、60歳以上の“中年”だと思っているのである。
したがって、これからこのベビーブーマーの心を掴むためには、どんな場合でもシニアという言葉は使わない方がいいだろう。

これを証明する事実がある。
オーストラリアのベビーブーマーの71%は、どんなテクノロジーにもオープンマインドで向いたいと答え、実際、週に平均21時間という驚くべき時間をオンラインに費やし、1ヵ月間平均3000ページをビューイングしている。

img03-5ベビーブーマーは、ソーシャルメディアにも積極的。20%がソーシャルメディアを活発に使い、また25%がオンラインショッピングをしているという調査結果も出た。最新号の『….starts At Sixty』(Facebookアカウントを持っていない人たちには、オンラインマガジンがある)では、料理のことから、若い世代バッシング(私は個人的にこれが大好きだ! 恐らくこれがかなり人気なのではと思う(苦笑))、そして、旅行のインフォメーションが載っていた。
旅行の話には、英国のB&B(ベッド・アンド・ブレックファースト)体験が載っている。豪華客船ツアーではなくB&Bだ。これがベビーブーマーの関心を惹くポイントのひとつなのだ。

ベビーブーマーの中には、その昔バックパッカーとして海外を歩いた人たちが多数いる。実際、バックパッキングして海外を歩いたオーストラリア最初の世代ではないかと思う。

主人の祖父は、海外に出たいがために、年齢を偽って戦争に行ったというぐらいだから、かつては孤立した島大陸オーストラリアに住む人にとっては、戦争さえも海を越えて海外に行く手段だったのかも知れない。
また、諸事情で若いときに海外に出ることができなかったベビーブーマーは
「ついに、その時が来た!」
とばかりに、若かりし頃さながらの旅をしてみたいと思っているのである。

 

60歳を過ぎてもまだアドベンチャーしたいベビーブーマー

もっとも、今更バックパッカーではないし、まるで「シニアのように」、単なる豪華旅行や添乗員付きパック旅行も嫌だ⋯⋯。となると、自分で車を運転しB&Bに泊まるとうスタイルが、適度にアドベンチャーでベビーブーマー向けになる。

あまり好きな日本語ではないが、今時の言葉でいえば「プチアド(小さいアドベンチャー)」がベビーブーマーたちの関心。

『….starts At Sixty』の旅行記事の筆者は、まず車の選び方を教えた。早めに選んでおくと安いよ、という情報や車種についてはオートマだけでなく、マニュアルもあるから大丈夫と知らせている。
ここら辺もベビーブーマーについての考慮あり。

img04-4そうそう、英国はオーストラリアのように広い道だけではないから、あまり大きな車を借りないようにという注意もあった。
道路については、かつて主人の兄弟を日本に連れて行った際、義兄は狭い道を双方向で車が走っているのに大感激?していた。
オーストラリアに戻ってもその話をいつまでもしていた。思わぬ、日本美景?だ。

さすがに怖くて自分では運転できないといっていたが、これも隠れた情報になる。狭い道、山道も、ベビーブーマーたちにとっては、いわゆる「プチアド」なのだ。

 

自分で決めたいべビーブーマーたち

さて、重要な宿泊施設について。
先ほどのライターのアドバイスによれば、前もって予約しないこと!
日本の場合は言葉の問題もあるので、英国のようには行かないかも知れないが、しかし、英文の丁寧なWEBでもあれば話は違ってくるかも知れない。
そして最後のアドバイスは、「Lonely Planet Guide Book.を買え」とくる。

現在90歳になる私の主人の母はすでに何度も海外に行っているが、彼女が海外旅行のガイドブックを買って読んでいるのを見たことがない。
つまりベビーブーマーに対して、本当のシニアは旅行代理店にお任せだが、ベビーブーマー世代は、自分で勉強して選ぶ世代なのだ。

余談になるが、日本の団塊の世代は小田実の「なんでも見てやろう」という本を読んでいる世代だ。
小田さんは、我々より一世代上だが、団塊の世代はこの本を読んで海外に憧れた。洋の東西を問わず、ベビーブーマーはガイドブック世代である。

繰り返すが、ベビーブーマーは自分でガイドブックを読んで「自分で選ぶ」。つまりチョイスの好きな世代でもある。

自分で探し出した宿泊所は、人にアレンジしてもらって泊まるよりずっと「クリエィティブだぜ」って⋯⋯。
自分でブッキングすれば、何かあったときに、フレキシブルに対応できる。

このフレキシビリティも、ベビーブーマーの特徴だ。
自分で旅をアレンジすると、いいことも悪いこともある。

悪い事の例は、3階までのエレベーターがなかったり、バスルームが小さかったり、オーストラリアのようなシンプルな朝食でなくて、脂肪分一杯のベーコン&エッグ+もっと脂肪分の高いプディングがついてきたり⋯⋯。でも、これもまた「体験」。
あとで笑いながら体験を話すことができる。

 

オーストラリアのベビーブーマーたちを日本に引き寄せる作戦 〜その1まとめ〜

オーストラリアのベビーブーマーについては、また次回も続けて話をしたいと思うが、今回のことをまとめてみる。

オーストラリアのベビーブーマーの心を掴むためには、あるいは日本に呼ぶためにはどうしたらいいのか?

①単なる物見遊山ではないアドベンチャーの要素を旅に入れる
②チョイスを増やす
③B&Bやホームステイなど、日本のライフスタイルをエンジョイできる
④オンラインで情報を提供する
⑤丁寧なオンラインブッキングシステムを提供する

ほかにも最初で述べたように、スポーツやボランティアなども組み込むことができるが、これについては、『ベビーブーマー〜その2〜』でお伝えしたい。

最後に。オーストラリアのベビーブーマーと日本の団塊の世代とは、かなりの共通項がある。しかし、日本のベビーブーマーはまだまだデジタル化していないようである。
年を取れば取るほど、デジタルで繋がるといろいろ面白いことができるのだが⋯⋯。
同じ世代として、ちょっと残念な気がする。

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