インバウンドコラム
2022年2月22日にドバイで、Museum of the Future(未来博物館)がオープンしました。ドバイ政府観光・商務局によると、世界中の専門家と人々を繋ぎ、将来直面する課題に対して解決策を生み出し、未来の世代にこの世界を引き継ぐための場として作られた「生きた博物館」だと言います。2021年7月に、まだ建築中にもかかわらず、ナショナルジオグラフィック(National Geographic)で、「世界で最も美しい博物館」に選出されたように、国内外のメディアが注目しています。博物館は、今後20年でテクノロジーがいかに進化するのかをテーマとしており、子どもから大人まであらゆる世代が最新技術に触れながら未来について学び、考えることのできる場所となっています。
アラビア文字で飾られた外観で2071年の宇宙空間をバーチャル体験
博物館は独特なドーナツ型をしていて、外壁にはアラビア書道で様々な言葉が書かれています。英BBCは、この博物館はその卵のような変わった形がオープン前から人々を惹きつけていると紹介しています。また、外壁には「未来はそれを想像しデザインし、実行する者の手の中にある」という、ドバイ首長国の首長ムハンマド・ビン・ラシド・マクトムの名言も含まれているとか。電力は、建物に直結する太陽光発電所から、4000メガワットが供給されているそうです。
また、この博物館は2071年をテーマにしており、「未来への旅」という常設展示では、地球から600km離れた宇宙空間をバーチャルで旅することができ、デジタルアマゾンでは、熱帯雨林を体験することができると言います。
ドバイの金融街に現れた卵型の建物、空洞が象徴するのは未知の未来
ラグジュアリーなライフスタイルのポータルサイトTHE LUXUOは、この博物館は、ドバイの金融街、あの高さ世界一の超高層ビル、ブルジュ・ハリファ(Burj Khalifa)から徒歩エリアに位置し、7階建で高さは77m、敷地の広さは3万平方メートルもあるそうです。建物の独特な楕円形は人類を、緑の丘は地球を、建物の空洞は未知の未来を表しているのだそうです。
そしてこの博物館は自らを、楽観的な想像力と人々に持続可能な未来への責任を意識させる拠点「希望の光」と位置づけており、人類の発展のため人々をポジティブに鼓舞し勇気づけるという、UAEの副大統領のビジョンを表現しています。
博物館の展示、出版、イベントや映画を通して、現在人類が直面している問題がより良い世界へのヒントとなる可能性を秘めていることを示したいと言います。
持続可能な世界の実現とは即ち発展を諦めることではない
SDGsや持続可能性が世界的にテーマになっていますが、それはどこか、便利さばかりを追い求め、科学技術の発展を目指した時代を反省し、古き良き昔の暮らしへ戻ろうという動きと重なりがちです。けれども、この未来博物館からは、再び科学の進歩をポジティブに捉え、持続可能な世界の実現に科学の進歩が貢献していけるのだという、エネルギーに満ちたメッセージが伝わってきます。
私は子供の頃ドラえもんが大好きでした。80年代の日本の子供達は、科学の進歩と経済の発展とより良い未来は繋がっていて、未来とは楽しいものだと、無邪気に信じることができました。それに対して、現代の若者たちは、このままではいけない、今まで通りに発展や利便性を追い求めては、未来が危ないという危機感を抱えています。そのような空気に対して、この博物館は、科学の進歩は持続可能性に貢献できるのだと訴えているようです。
昨年のグラスゴー会議でも、経済発展成熟期の国々と、これから発展していきたい国々との間の溝が浮き彫りになりました。環境に負荷をかけずにいかに成長していくかは、今後地球規模での大きな課題です。
中東諸国が打ち出す壮大なビジョンの熱量にはっとさせられる
サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は2021年1月11日「ザ・ライン(THE LINE)」という都市構想を発表しています。全長170kmの距離を約20分で移動する超高速輸送システムを地下に備えた直線型の都市です。生活に必要なものは全て徒歩5分以内の距離にあり、車も道路もない都市には100万人が暮らし、エネルギーは100%再生可能エネルギーで賄うと言います。車がなく、したがって車道もない上に、二酸化炭素も排出せず、95%の自然環境を保全したまま人々の生活の利便性だけを向上させるという都市計画です。
中東の国々が示す未来のビジョンには、科学の進歩は、環境負荷を減らすためにも必要であり、より良い世界をもたらすのだという希望にあふれています。
3年後の大阪万博で日本は世界をどうインスパイアするか
ドバイ万博は3月31日に閉幕し、大阪万博にバトンが渡されます。3年後、日本は世界にどんな未来のビジョンを見せることができるでしょうか。昔ながらの暮らしの良いところを継承しながら、新しいものを開発し柔軟に取り入れてきた日本らしい提案で、世界の若い世代に希望を与えるものになることを期待します。
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