インバウンドコラム

政治家の「入国規制緩和」発言に、海外メディア「日本の規制撤廃は間近」報道

2022.09.27

清水 陽子

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9月7日の入国規制緩和を受け、「日本が規制を緩和した」「日本が国境を再開した」というニュースが海外メディアを賑わせた為、スイスからの問い合わせが増えています。

 

”添乗員なしのパッケージツアー解禁”が、訪日を待つ人々の誤解を招いた!?

タイの旅行メディアTTR Weeklyは9月5日、「日本が入国規制を緩和」という記事を掲載し「日本は9月7日から規制を緩和し、個人旅行客(independent tourists)の入国を許可する」と伝えています。「もし、旅行会社を通じてパッケージツアーを予約するならば」と続くのですが、完全に自由な旅行ができるような印象を受けます。6月から既に添乗員付き団体旅行の受け入れが開始されているが、今回は添乗員なしの「パッケージツアー」を予約できるようになったと、緩和の内容が後に続くのですが、具体的にどう変わったのか確認せず「ついに日本への旅行が解禁された!」と喜んだ人も多かったようです。

この9月7日からの規制緩和のニュースが世界に発信されてから「日本に旅行に行けるようになったと聞いた」いうスイスからの問い合わせが多数ありました。しかし、ビザが必要なこと、ワクチンを3回接種していなければ陰性証明が必要なこと、入国者健康確認システム(ERFS)による申請が必要なことなどを伝えると「前とあまり変わっていないのだね」とがっかりされます。ヨーロッパでは、ビザ不要、陰性証明不要、ワクチン証明不要の国が増えているため、スイスの人々からすると、まだ「自由に」旅を楽しめる状態ではなさそうだと二の足を踏まれるようです。

 

政治家の「検討する」に対し、「日本は解放目前」と海外メディアは報道 

その後、9月11日に木原誠二官房副長官が報道番組で、秋冬の観光シーズン前に1日の入国者数の上限撤廃や、個人旅行の解禁、ビザの免除などを検討していると、緩和に向けて具体的に前向きな発言をしたことから、また開国への期待が高まっています。

9月12日のタイムアウトは「公式発表:日本は旅行を再開した!」という見出しで「日本が2020年以来初めて、個人旅行者(independent tourists)の入国を許可」というリード文で始まる記事を掲載しました。世界でも日本ほど国境開放に慎重な国は稀であるとした上で、その日本への旅行が、昔と似たようなものに戻ったことを発表できて嬉しいと続きます。9月7日から、1日の入国者数の上限が2万人から5万人に引き上げられたことに触れ、「日本の政府官僚が、入国者数の上限をそう遠くない将来に撤廃する可能性を示唆したため」更に、これはすぐに変わるかもしれないと書かれています。

Asienspeigelという日本のニュースを伝えるスイスのメディアは、この木原氏の発言に注目し「大きな開放目前の日本」という記事を掲載しました。「全てが、思っていた以上に、素早く一気に進むかもしれない」と伝えています。「検討する」という言葉は、日本の政治用語では、舞台裏では既に基本的な決定はなされていて、詳細を調整しているという意味だとも書かれています。これまでの観光客と外国人に対する国境の閉ざし方を考えると、この心境の変化は驚きに値するとし、「急ぐ理由」は日本の経済の停滞にあると伝えています。ここ数ヶ月で円の価値が下がり、1998年以来の円安水準で取引されており、輸入コストも増えているため、入国制限を全面的に解除することで、経済を回復させたい狙いがあるとみています。円安はインバウンド観光業の競争力を高め、何百万人もの観光客が円を買い出すことで通貨の安定にもつながります。また木原氏はほとんどの国が国境を再開する中で、日本が遅れをとってはならないと述べ、秋が日本の魅力的な旅のシーズンだとも語ったと書かれています。

 

世界経済フォーラムも日本の観光戦略に注目

13日には世界経済フォーラムが「日本が渡航制限を緩和-観光業界は立ち直れるか」という記事を掲載しました。9月7日からの緩和措置では、依然として観光客数に上限が設けられており、経済界からは期待と不安の入り混じった声が聞かれることに触れ、政府が、早ければ10月にも入国者数の上限を撤廃し、個人旅行者への国境開放の検討を示唆したと伝えています。

G7で入国者数の上限を設けているのは日本だけで、また1日に5万人という数字は、2019年の入国者数の1日平均の14万人と比べて半分以下だとも指摘しています。日本は、2022年5月に世界経済フォーラムが発表した「2021年旅行・観光開発指数レポート」で、初めて1位になっており、円安によって日本は外国人観光客にとって魅力的な旅行先になり得、それがもたらす経済効果は大きいはずだが、感染予防に徹しながらいかに経済を活性化させるかが問われていると締めくくられています。

 

ガイド付きの自由気ままな旅行こそ、富裕層に求められている

個人旅行の解禁等の発表へのカウントダウンが始まったようです。個人旅行とはバックパッカーのような若者の貧乏旅行で、富裕層は行く先々で高級ホテルに宿泊し、全てオーガナイズされたツアーで優雅に旅するものというイメージがあるとしたら、それは少し違います。また、今回の規制緩和の経緯から、添乗員付きの旅行は、不自由で好まれないという印象がついたように思いますが、それも誤解があるように思います。

例えば、私がお迎えしているスイスからの旅行者は、自由で主体的な旅をするためにガイドをつけます。ガイドは引率者でも監視役でもなく、やりたいことに最短でたどりつき、興味のある情報を逃さないための現場監督のような位置づけで、むしろどこへでも同行して欲しいと言われます。天気に合わせて予定を入れ替えることはよくありますし、旅の途中で興味を惹かれるものに出会ったら、行き先を変更される方もいます。“ガイド付き”の自由で気ままで豪華な旅も、また日本で楽しんでもらいたいです。

 

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