インバウンドコラム

【海外メディアななめ読み】第5回 :ハラル先進国“日本”への挑戦

2017.05.16

清水 陽子

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先日、スイスとイギリスから日本に来てくれた友人たちと一緒に、富士五湖エリアへ富士山を見に行ってきました。そこで驚いたのが、色彩豊かなビジャブを被った観光客の多さです。

次の日ニュースをチェックしていると、香港の日刊英字新聞「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」に、“なぜ多くのイスラム教徒が急に日本を訪れているのか”と言う記事があったので、早速読んでみました。「日本がイスラムの諸国からの旅行者を手厚くもてなそうとしている」と始まるこの記事は、インドネシアやマレーシアから日本を訪れる観光客が急速に伸びていることを報じています。その理由として、ビザの緩和、格安航空会社の台頭、円安に加え、ムスリム旅行者にとって必要なものが手に入りやすくなっていることが大きいとしています。具体的には、空港や商業施設に祈禱室が普及し始めていることや、ハラル食を出すカフェやレストランが増えてきていることが挙げられています。また、全ての客室に礼拝を行う方向を示す「キプラ」が設置され、食事は全てハラル食というホテルが、昨年オープンしたことも紹介されています。

そして先日、アメリカの「マスターカード社」と、ムスリムフレンドリートラベルの普及を目指すシンガポールの「クレッセントレーティング社」による“2017年版グローバル・ムスリム・トラベル指数”が発表されました。130の国と地域を11の項目で評価し「ムスレムフレンドリーな旅行先」が順位づけされています。その中で日本は総合32位、イスラム協力機構(OIC)に属さない国の中では6位となりました。初めてTOP10入りした昨年の8位から、フランスと台湾を抜いて、順位を2つ上げています。総合1位はマレーシアで、非OIC諸国の1位はシンガポールです。

評価項目別では、「食事の選択肢」「祈祷室へのアクセス」「空港設備」のスコアが上がっていて、努力の成果が表れています。また、昨年も評価の高かった「イスラム旅行者のニーズへの関心の高さ」が、今年は更に伸びています。これは日本の寛容性が現れているようで、とても嬉しく感じました。八百万の神を受け入れている日本人は、様々な神様が共存することに抵抗がないのでしょう。

6月5日には、イスラム教徒の多い中央アジア5カ国の短期滞在ビザの発給要件が緩和されると同時に、宗教・宗派を問わず無料で利用できる祈祷室が東京駅に開設されます。ムスリム旅行者が今後も増加することが期待され、彼らが快適に過ごせる環境作りも着実に進んでいます。ムスリムフレンドリーへの挑戦は、イスラム教徒に限らず多種多彩な人々がストレスなく共に過ごせる日本への第一歩のように思われ、力強いその歩みを頼もしく感じます。2020年の日本が楽しみです。

 

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