インバウンドコラム

【海外メディアななめ読み】第8回 :アナログで勝負する

2017.06.07

清水 陽子

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大阪の枚方市にある「ひらかたパーク」で先月始まった新しい“アトラクション“、その名も『三文芝居』が、アメリカの大手旅行雑誌「Travel+Leisure(トラベル・アンド・レジャー)」で、紹介されています。『三文芝居』は「デート中に不良に絡まれるもカッコよく撃退する」などの、お決まりのシチュエーションの主人公になれるというサービスで、パークの「三文役者」たちが、「あなた」を主役にフラッシュモブ風の劇を熱演してくれるというものです。「Travel+Leisure」は、「デートを印象的なものにするために、フェイク・ファイトを仕掛けてくれるテーマパークが日本にあった」と、驚きをもって紹介しています。

 

同じくアメリカの旅行雑誌「Condé Nast Traveler(コンデナスト・トラベラー)」は、ペルーの観光局が考案したちょっと変わったキャンペーンを紹介しています。空港は旅行好きが集まる場所であり、そこに掲示する広告費は高額です。そこで考え出したのが、ペルーの美しい風景をあしらったスーツケース・シリーズを製作し、自国のファッションデザイナーやミュージシャンなど、世界を股にかけて活躍する人々にプレゼントしたのです。荷物受け取りのベルトコンベアーに登場したスーツケースは、世界中で注目を集め、このキャンペーン動画は160万回再生され、1万6000回シェアされています。

 

この二つの記事をみて、思い出したのが、昨年1月にベルギーのブリュッセル観光局が行なった「#CallBrussels(コール・ブリュッセル)」キャンペーンです。この時期、テロの影響で、国外でブリュッセルの治安を不安視する報道がなされていました。そこで、市内3ヶ所に電話を設置し、ブリュッセルの治安に関する世界各国からの問い合わせを通行人が直接受けられるようにしたのです。その結果、たった5日間のキャンペーン中に、154の国から1万2688件の電話がありました。そして何より、この様子がSNSで拡散され、街のイメージアップにつながったのです。

 

これらの事例の共通項は「アナログ」です。役者さんが一緒にお芝居をしてくれるショー、スーツケースに載って旅人と共に旅をする広告、そして、地元の人の声を生で聴くことのできる電話。どれも人の体温を感じます。最新技術や高額予算ではなく、遊び心と知恵を使って、世界の人々の注目を集めた、ほっこり事例でした。

 

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