インバウンドコラム

インバウンド客4000万人目標は? 観光関連の支援策やコロナウイルス終息後の需要喚起にも言及 —2020年3月観光庁長官会見を解説

2020.03.31

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3月19日、観光庁長官田端浩氏による3月の定例会見が行われた。2020年2月の訪日外国人旅行者数は、新型コロナウイルス感染症の影響で全世界的に旅行控えが起き、人の動きが抑制されたため、対前年同月比でマイナス58.3%の108.5万人となった。多数の国で日本への渡航自粛の要請があり、日本政府の水際対策も強化されている中で観光庁が検討している対策を、長官の発言をもとにまとめた。

 

2020年2月の訪日客数は対前年同月58.3%減の108.5万人に

まずは冒頭、2020年2月の訪日外国人旅行者の動向を下記のようにまとめた。

・2020年2月の訪日外国人旅行者数は、対前年同月比マイナス58.3%の108.5万人。非常に厳しい数字が出たが、新型コロナウイルス感染症の影響であり、多数の国で日本への渡航自粛の要請があることなどから、訪日旅行のキャンセルが相次いでいる。

・日本から諸外国への渡航情報も、各国のウイルス感染症の封じ込め対策が厳しくなりつつあるので、日本政府として分析を行い、勧告を出している。

・水際対策も3月6日の抜本的強化に加え、3月18日には内容を拡大したが、状況はさらに厳しくなると見ている。また新型コロナウイルス感染症の世界的な流行拡大から、現状としては終息の見通しが不明であり、今後の影響について予測することは困難な状況だ。

・国内の感染拡大防止が最大の観光支援策と考え、しっかり行っていく。風評被害防止も念頭に置き、JNTOのホームページやSNSで具体的な対策を明確に示し、発信する。状況が落ち着き次第、1日も早く国内外からの多くの観光客に日本各地を訪れていただくことが必要であり、その日に備えて個々の観光資源の磨き上げに注力することが重要だ。

・3月10日に閣議決定した予備費の活用により、地域の多彩な滞在型旅行商品の造成や、観光地の高付加価値化、誘客先の多角化などを促進する。また訪日客に確実な着地点を提供できるよう、より一層の多言語表示の充実も図っていきたい。

 

「明日の日本を支える観光ビジョン」の2020年目標4000万人は変わらず

その後、報道陣からの「2020年訪日客数4,000万人の目標は変わらないということか」という質問に対し、田端長官は「新型コロナウイルスの蔓延が終息次第、現場のニーズを踏まえたキャンペーンなど、観光需要喚起に向けた反転攻勢を仕掛けていく。『明日の日本を支える観光ビジョン』での訪日客数2020年4,000万人、2030年6,000万人といった目標も、高みを目指す成長戦略として維持し、観光消費額向上などへ、政府一丸・官民一体となって全力で取り組んでいく」と、引き続き4000万人を変わらず目指していくという。

 

3月の旅行業の取扱いは7割減、ホテル・旅館も大幅なマイナスに

ホテルや旅館のキャンセルや売り上げの影響における具体的な数字への質問に対し、田端長官は「日本旅行業協会(JATA)によると、3月の旅行業取扱いを予約状況で見る限り、7割減くらいの厳しい状況。また、日本旅館協会が各県の組合に聞いたところ、2月末時点で40%のマイナスということだった。ホテル協会は、3月は60%以上のマイナスになると見ている」と答えた。

また、ホテルや旅館では宴会や会合などの中止が相次いでいるが、4月以降の経済対策では日本人による消費拡大の施策を練っていきたい、と述べた。

 

事態終息後は、まずは旅行消費の8割以上を占める国内の需要喚起から

事態の終息後、反転攻勢する際のキャンペーンの内容はどのようなものが効果的と思うか、と問われると「国内の観光需要を先に伸ばすことが重要と考えている。2019年の旅行消費額でも全般27.9兆円のうち訪日外国人の旅行消費額は、4.8兆円まで伸びているが、23.1兆円は日本人の旅行需要だ。従って、まずは日本人個人の消費拡大に向けた施策を打っていきたい。内容は今後の経済対策の一環として検討を重ね、しっかりした政策を盛り込んでいきたい」と回答した。

 

インバウンドの旅行需要喚起は、アジア各国と連携が効果的

続いて、世界規模で感染が広がる中、感染源である中国を含む東アジアが欧米諸国に避けられるという話を聞くが、東アジア諸国が一体となって旅行需要喚起のキャンペーンを行う考えはあるか、という質問が出た。それに対し、現状では人類と感染症の戦いに世界各国が注力しなければならないとした上で、「2003年のSARSの時などは、香港がWHOなど専門機関から終息評価が出たタイミングでアジアンツーリズムのリバイバルに取り組んでいた。今回はアジア各国もリカバリー策をとっていくと思うのでそれらと融合し、全般としての需要喚起ができるように、連携を推し進めていくことは効果的だと考えている」と収束後の戦略の方向性について語った。

 

一般消費者は感染の拡大防止を最優先に、リスクの少ない状況づくりを

日本の観光業界が、終息のメドがつかない中で、遠出に対する自粛ムードを一掃してほしいとの声もあるがどう考えるか、という質問に対しては「1月、2月時点よりも全世界に広がった感染症のこれ以上の拡大防止をすることが一番大事であり、感染の恐れのある場面を避けるように、政府としてお願いをしている。

落ち着いて対策をとり、低リスクの環境を作った上でそれぞれが慎重に行動し、通常の形に戻していくことが大切だと思う。政府の専門家会合などを踏まえて、行動に関する具体的な注意と要望を政府全体として発信していく」と回答した。

 

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