インバウンドコラム
12月15日政府は、追加の歳出を19兆1761億円とする2020年度第3次補正予算を閣議決定した。新型コロナウイルスの感染拡大防止やポストコロナに向けた経済構造の転換を実現することが柱だ。ここでは、観光にかかわる項目を中心に、どのような項目で追加計上がなされたのか見ていく。
観光庁関連予算は、Go Toトラベル事業などで1兆円超を追加計上
まず、観光庁にかかわる予算としては、以下の4つの事業に対して計1兆961億円が計上された。
1. Go To トラベル事業:1兆311億円
2. 既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業:550億円
3. 地域の観光資源の磨き上げを通じた域内連携促進事業:50億円
4. 訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業:50億円
1. Go To トラベル事業:1兆311億円
事業者と旅行者の双方において感染拡大防止策を徹底しながら、中小事業者や被災地など、観光需要の回復が遅れている事業者や地域へ配慮しながら、平日への旅行需要の分散化策を講じ、制度を段階的に見直しながら延長する。具体的には、旅行代金割引と地域共通クーポン発行を通じて失われた観光需要の回復を図ると同時に「感染拡大予防ガイドライン」と「新しい旅のエチケット」を徹底し、特に平日の旅行需要を喚起する。
2. 既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業:550億円
観光拠点を再生し、魅力と収益力を一層高めるため、観光施設の改修や高付加価値化に向けた取組等を短期集中で支援する。具体的には、宿泊施設、飲食店、土産物店等の施設改修を50%の負担割合で補助する制度の創設や、事業者同士の連携による新たなビジネス創出の促進に充てる。
3. 地域の観光資源の磨き上げを通じた域内連携促進事業:50億円
地域に残る縦割りを打破するとともに、観光事業者やDMOと地域の多様な関係者が連携し、地域に眠る観光資源を磨き上げる取組を支援する。観光客が立ち入りづらい漁業現場の体験ツアーの造成や、一般公開されていない工場見学や家具職人に直接教えてもらえるスクールの実施など、地域に眠る観光資源を活かしたモデルツアーの実施費用等の支援が具体例として挙げられた。
4. 訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業:50億円
公共交通機関における感染症対策を含む受入環境整備の取組を支援しつつ、感染が落ち着いている国と地域から、防疫措置を徹底したパッケージツアーで訪日外国人旅行者を試行的に受け入れる実証事業等を実施する。公共交通機関への支援としては、キャッシュレス決済対応や高性能の空気清浄フィルタ等の導入、魅力ある観光バスの整備を含む。
受け入れる訪日旅行パッケージツアーは、入国前に検査証明の取得や接触確認アプリのダウンロードを徹底し、旅行中は密を避けたポストコロナに相応しい観光メニューを優先的に選定、出国前にPCR検査を実施するといった、感染防止対策を徹底した小規模ツアーを想定する。
スマートシティ早期実現やグリーン社会の実現にも1000億円超を計上
これらは、国土交通省補正予算内では、ポストコロナに向けた経済政策として位置づけられており、地域・社会・雇用における民需主導の好循環を実現を目指した取り組みだが、このほかにも、国土交通省ではポストコロナに向けた経済政策として「デジタル改革・グリーン社会の実現」「経済構造の転換・イノベーション等による生産性向上」なども掲げている。
「デジタル改革・グリーン社会の実現」では、行政手続きのオンライン化・電子化の促進や、マイナンバー活用のほか、スマートシティ推進・まちづくりのデジタル化も掲げ、スマートシティの早期社会実装に向けたモデルプロジェクトへの支援や海外展開に向けたマスタープラン策定にも取り組む。これ以外にも、交通、海事・港湾関連のDX推進やグリーン社会の実現に向けて、合計1261億円を計上した。(うち、スマートシティ推進は10億円)
「経済構造の転換・イノベーションなどによる生産性向上」では、ポストコロナを見据えた地域公共交通の感染症対策や収支改善などによる継続/活性化や、サプライチェーンの強化及び交通網の整備、自動運転の実用化促進に向けた支援などに、合計909億円を計上している。
Go To Eatキャンペーン食事券追加発行などで505億円追加
また、農林水産省では、Go To Eatキャンペーンの延長に505億円を追加計上。オンライン予約によるポイント付与は11月に終了したが、継続中のプレミアム付き食事券は、追加発行や利用期限の延長により、引き続き厳しい状況にある飲食業の需要喚起と食材を提供する農林水産業者の支援を継続する。
(図出典:令和2年度観光庁関係第3次補正予算)
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