インバウンドコラム
中国の建国記念日である国慶節は、春節(旧正月)に並ぶ大型連休で、中国では「十一(シィーイー)」や「ゴールデンウィーク」とも呼ばれています。2021年は10月1日〜7日の7日間が国慶節連休となります。直近の中秋節連休(9月19日〜21日の3日間)には、国内観光客数がコロナ前の同期比で87.2%にまで回復したということもあり、国慶節連休にも多くの人が国内旅行に出かけることが予想されます。コロナ禍で迎える2度目の国慶節を、中国の人はどのように過ごすのでしょうか。ここでは、国慶節の基礎知識と、今年の傾向をご紹介します。
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▲都市部在住者に人気の旅行先、貴陽市の甲秀楼
中国のゴールデンウィーク、国慶節とは?
前述の通り、国慶節とは中国の建国記念日です。1949年10月1日に、天安門広場で毛沢東が中華人民共和国の成立を宣言して以来、毎年この日は国全体が祝賀ムードに包まれます。天安門広場では祝賀行事や大規模な軍事パレードが行われ、街には花火や爆竹が鳴り響きます。また、国慶節の10月1日は国民の休日として制定されており、この日を含む1週間が大型連休となるため、旅行をする人が急増します。世界中がコロナ禍に見舞われる以前は、中国から海外へ旅行に出かける人も多く、日本でも中国人観光客が増加する書き入れ時となっていました。しかし、昨年に続き、今年も各国の国境が閉ざされる中、中国人観光客の多くは国内旅行を計画しています。
2020年コロナ禍初の国慶節は観光地が無料開放、6億人の「リベンジ旅行」が話題に
2020年の国慶節連休は、「中秋節」の休みと重なったため、異例の8連休となりました。この間は感染がほぼ抑えられ、中国全土の観光地が入場券無料や割引のサービスを打ち出していたため、人々は感染対策を行った上で観光地へと繰り出しました。中国政府の発表によると、国慶節連休(10月1~8日)の国内旅行者は延べ6億3700万人で、国内観光収入は4665億6000万元(約7兆4000億円)。コロナ前の前年同期比で、7〜8割の水準まで回復しています。昨年の国慶節では「リベンジ旅行」ムードが広がり、最も人気の観光地には新型コロナウイルスの感染が最初に広がった武漢の名所「黄鶴楼」が選ばれました。このほかにも、北京などの都市はもちろん、農村観光や歴史・文化ツアーが人気を集め、「兵馬俑」で有名な古代の都、西安には1474万人の観光客が訪れたそうです。
2021年の国慶節、観光客数は6.5億人。若年層が活発に
市中感染がほぼ抑え込まれていた昨年の国慶節に比べ、今年は中国南東部の福建省でデルタ株の感染拡大が続いています。そのため、移動が活発化する国慶節を前に、中国政府は不要不急の外出自粛や、ワクチン接種などを求めています。一方、中国民用航空局の発表によると、国慶節連休に国内フライトが4000以上増便される予定となっているため、中秋節と同様に多くの人が国内旅行をすることが予測されます。中国大手旅行予約サイト「同程旅行」の国慶節連休の旅行予測データによると、今年の7連休中には、国内観光客数が延べ6億5000万人にのぼり、コロナ前の同期比で80%以上に回復する見込みとなっています。
特にコロナ禍の中国では、“密”が懸念される団体旅行ではなく、自由度の高い少人数の個人旅行が人気です。
携程研究院が9月21日に発表した「国慶節観光予測データ報告2021」によると、最も活発に旅行に出かける世代は「90後(1990年代生まれ)」40%と「80後(1980年代生まれ」43%でした。「00後(2000年代生まれ)」も今年は前年比5%増加し、旅行市場を刺激し始めています。
人気の旅行先は、省をまたぐ移動も活発化する?
民泊施設予約プラットフォーム「途家」が発表した「中秋国慶秘境ランキング」によると、新疆カシュガル市、新疆アルタイ地区、吉林省延辺朝鮮族自治州がトップ3となりました。都市部から離れたこうした西北地域は、人が少なく広々としているため、“密”を回避できるという意味でも人気が高く、人々は少数民族の文化体験や美しい自然を堪能する旅行を求めているようです。旅行スタイルとしては、現地の民泊施設に泊まり、レンタカーで観光地を巡り、少数民族の風習や文化を体験するのがトレンドになっています。
トリップドットコム傘下の「携程研究院」が9月に発表した秋の旅行に関する予測データ報告によると、中秋節と国慶節に「省をまたぐ旅行」を予約した人は夏季休暇シーズンよりも大幅に増加しています。人気の旅行先トップ10は、上から北京、上海 、広州、杭州、成都、三亜、深セン、重慶、珠海、武漢の順で、最も人気のある観光目的地には、9月20日にオープンしたばかりのユニバーサルスタジオ北京が選ばれました。
しかし、これらは主に地方に住む人々に人気の目的地。都市部に住む人々は地方を目指す傾向にあり、個人旅行で人気の目的地は、上から、貴陽(貴州省)、フルンボイル(内モンゴル自治区)、成都(四川省)、三亜(海南省) 、ウルムチ(新彊ウイグル自治区)、九寨溝(四川省)、フフホト(内モンゴル自治区)、西寧(青海省)、恩施(湖北省)、黄山(安徽省)の順となりました。
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