インバウンドコラム

世界の消費者トレンドは? 2022年は消費者の積極的な行動がカギを握る

2022.01.26

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英国に本社を置く国際的市場調査会社ユーロモニターインターナショナルは、その年の消費者動向を予測し、主な10項目を分析・考察した『世界の消費者トレンドTOP10』の2022年版を発表した。このレポートは、企業が消費者ニーズやビジネスチャンスを掴むための重要なリソースとして、世界中が注目している。

パンデミック発生から約2年。ライフスタイルが世界中で大きく変化するなか、2021年は自由を手放し曖昧さを許容せざるを得なかった分、2022年は、消費者が自ら舵をとり、情熱や価値観に基づき道を切り開いていく1年になるという。そんな今年の10の消費トレンドを解説する

 

社会活動再開への温度差

人が抱く安心感のレベルは異なり、パンデミック前のような通常の生活に戻るペースも人それぞれだ。世界の消費者の51%が、「今後5年間で生活は今より良くなる」と回答する一方で、76%が「外出時には健康と安全のための注意を払った」と回答している。コロナ禍において企業はオンラインとオフラインのハイブリッドビジネスモデルを導入。今後もリモートワークやバーチャルイベントと、対面コミュニケーションのオフラインが共存していくなかで、消費者は安心感によって参加するモードを自分で選択したいとし、企業は人々の異なる安心感を考慮して、様々なチャネルを跨いだシームレスな顧客体験を提供することが望まれる。

旅行業においては、国内観光需要は回復傾向にあり、レジャーやホスピタリティへのベントアップ需要が高まっている。消費者の旅行回数が増えれば、関連事業者の収益増に期待がもてるだろう。

 

地方と都会のいいとこ取り

消費者が求めているのは、安全かつ清潔で、緑豊かな環境。コロナ禍で都市生活の利便性よりも、田舎の低コストでゆとりある住環境や、サステナブルでエコな生活が好まれるようになった。世界の消費者の37%が、「将来、在宅勤務をしているだろう」と回答するなど働き方も変化し、仕事場であるオフィスに縛られず居住地を選択する消費者が増加したことで、郊外と都市部の両方のメリットを享受したい人が増えた。彼らにとって居住地を選ぶ際には、豊かな空間と持続可能であることが重要である。

企業がより多くの消費者にリーチするには、店舗数やサービスの拡大、Eコマースへの投資が効果的で、顧客の居住地に合わせた戦略調整が必要となるだろう。

 

メタバースへの移行

没入型の3Dデジタルエコシステムにより、メタバース(3D仮想空間)内での交流が盛んになっている。「週1回以上オンラインビデオゲームに参加している」と回答した世界の消費者は 2015年は29%だったが、2021年には38%に増加。AR/VRヘッドセットを用いて仮想空間内で自分のアバターを通じて世界中のユーザーと交流したり、仮想世界を探索したりして楽しむ若い世代の消費者が増えており、ヘッドセットの世界売上高は、2017年~2021年の5年間で56%増加した。

今後AR/VRの機能性向上と機器コストの低下により、3D仮想空間の利用者はさらに増加する見込みで、企業やブランドはEコマースやバーチャル製品の売上促進に加えて、「メタバースへの移行」トレンド下での認知度向上と収益向上を模索する必要があるだろう。

 

気候変動に敏感な消費者

世界の業界関係者の78%が、「気候変動は、消費者の行動、ニーズ、嗜好に変化をもたらし、消費者の需要に影響を及ぼす」と回答しているとおり、消費者はカーボンフットプリント(CFP)認証やリサイクル素材などのエコプロダクツを重視し、さらに企業やブランドの環境問題への取り組みを総合的に判断し、購買意思を決定している。

現に2021年、世界の消費者の67%が「日々の行動を通じて環境に良い影響をもたらそうとしている」と回答。さらに世界の3分の1の消費者がCO2排出量削減に積極的で、4分の1がカーボンオフセットを利用し、環境に配慮した行動を心がける一方で、企業にも更なるエコな行動と透明性を求めている。

特にミレニアル世代とZ世代は、自身の選択で世界に変化をもたらすことができると考える人が多く、デジタルソリューションなどの活用により、彼らの期待に応える製品・サービスの提供が鍵となるだろう。

 

人生を大きく見直す

パンデミックは消費者が自己を分析し、価値観、ライフスタイル、人生の目標など人生を総合的に見直す転機となった。2015年には消費者のわずか12%が「自分のための時間を優先する」と回答したが、2021年には24%に倍増。ワークライフバランスがより重視され、転職や離職者が増加する一方で、世界の業界関係者の44%が、「自社は今後、従業員の健康と福祉に投資するようになるだろう」と回答した。また、メンタルヘルスの追求も重視され、CalmやHeadspaceなどの不安の緩和を目的としたマインドフルネスアプリのダウンロード数が急増。また、里親としてペットを家族の一員に迎える世帯が増え、世界のペットケア製品の売上は2019年から2021年で倍増した。

2022年のライフスタイルのキーワードは、「変わること」と「変えること」。企業は消費者の自己成長をサポートする理念と、それを叶える製品を提供することが必要となるだろう。

 

自分らしさを愛する

真の自分らしさやありのままの姿を受け入れるなかで、「受容」「セルフケア」「インクルージョン」の考え方が、消費者のライフスタイルの軸となっている。世界の消費者の56%が、「5年後の自分は今よりも幸せになっていると思う」と回答。彼らは自分の心身のケアに投資を惜しまず、食べ物から使用するものまで、自身がベストな状態でいられるための製品や体験を好む。世界の業界関係者の54%が、「よりパーソナライズされた買い物体験は、今後5年間で小売業に強い影響をもたらす」と回答し、ビューティー分野、パーソナルケア分野、コンシューマーヘルス分野でさらなるパーソナライズ化が進む。

企業はAIなどのテクノロジーへの投資で個々のニーズに応え、消費者が自らのモチベーションやアイデンティティと合致する製品、サービスを購入できるようサポートし、提供していく必要があるだろう。

 

デジタルシニア

コロナ禍で高齢者にもネットショッピングやオンラインサービスが浸透し、テクノロジーに精通したシニア層が増えている。2021年にスマートフォンを所有している60歳以上の世界の消費者は82%にのぼり、45%が週1回以上モバイルバンキングサービスを利用。さらに60%以上が週1回以上TikTokなどのSNS、21%が週1回はビデオゲームを利用すると回答し、デジタルネイティブな孫世代の影響が伺える。

高額所得者層の4分の1近くが60歳以上であり、かつ引き続き人的交流が需要視されると見込み、シームレスなソリューションと対面コミュニケーションを組み合わせたシニア世代対応型のサービス提供が重要となるだろう。

 

バックアッププランナー

入手困難な状況においてもお気に入りの製品やサービスを手に入れるため、代替手段を求めて行動する消費者のこと。コロナ禍でのサプライチェーンの混乱による供給不足を経験し、確実な製品入手のためにサブスクリプションサービスやグループでの共同購入を利用する人もいれば、レンタルや再生品を代替品とする人もいる。一方で、通常より割高料金を支払ってでも好みの製品を手に入れようとする傾向がある。

消費動向は、地元生産品、D2C(消費者直接取引)ブランド、サブスクリプションサービスなどの新しい購買習慣に大きく影響を受けていくだろう。

 

ユーズド品愛好家

サステナブルかつ手頃な価格、そして他の人とかぶらない品物や限定品が手に入る、ユーズド品やリコマースへの関心が高まっている。世界の消費者の33%が、「少なくとも数カ月に1回はユーズド品を購入する」と回答し、別の調査によると消費者の5人に1人が今後ユーズド品の購入を増やすことを検討しているという。

このトレンドはアパレル品から一般消費財まで幅広く広がり、企業は自社製品買い取り品の再販売、再利用可能包装の利用、再生品の提供、ピアツーピア(P2P)マーケットプレイスをはじめるなど、新しいビジネスモデルを導入している。2021年、世界の業界関係者の67%が「SDGsの目標12『つくる責任 つかう責任』達成に取り組んでいる」と回答。このトレンドは、持続可能な生産と消費、そしてブランド評価の向上に必然的に貢献していくだろう。

 

資産管理マニア

所得に余裕がある消費者は金融リテラシーを高め、株式投資や趣味を仕事にするなど他の収入源を見つけるようになった。2019年に15%だった可処分所得に対する貯蓄の割合は、翌2020年には17%に上昇し、同期間で世界の消費支出は4%減少。貯蓄が増えて支出が減ったことも、投資率の上昇に繋がっている。2021年に世界の消費者の57%が週1回以上はスマートフォンからバンキングサービスを利用していると回答。資産管理・運用が一般普及するにつれ、フィンテックのスタートアップ企業などが提供する手軽なリテール取引プラットフォームへのニーズも高まり、また、シンプルな資産管理アプリが重宝されるだろう。

今後企業に求められるのは、金融サービスプロバイダーと協力した暗号通貨やBNPL(Buy Now Pay Later、後払い決済)などの代替決済の導入促進であろう。

 

パンデミックを経験し、消費者のニーズは急速に変化し続けてきた。2022年に消費者の心を掴むには、変わりゆく嗜好に合わせた変革こそが必要なのではないだろうか。

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