インバウンドコラム
2年以上に及ぶコロナ禍も、ワクチン接種が進んだことで多くの国や地域でパンデミックからエンデミックへと考え方が変わり、入国の規制緩和が始まっています。
日本では現在留学生など観光客以外の新規入国が可能となっていますが、今後は観光客の入国制限も解除へ向かうものと想定されています。
ただ、コロナ禍前の訪日外国人数の水準に戻るには数年かかると言われています。その状況を踏まえると、旅行事業者にとっては今後、訪日外国人1人当たりの収益を如何に上げていくかが重要になってきます。この旅行客1人当たりの収益を上げるのに活用できると期待されているのが「旅ナカ体験」です。
すでに観光客の入国が認められ旅行予約が戻っている欧米諸国のホテルや航空会社などでは、この旅ナカ需要を活用して、収益向上につなげています。世界最大級の旅ナカ予約サイトであるゲットユアガイドと提携している旅行事業者がどのようにして旅ナカ体験を収益につなげているのか、欧米諸国の事例も含めて紹介します。
宿泊、航空会社の「旅ナカ体験」を活用した収益アップ術
ホテルや航空会社などの旅行事業者が旅ナカの収益化に活用している手法は、主に2つあります。
1つ目の収益化の方法は、宿泊施設などが顧客向けに提供している旅ナカコンテンツをOTAへ掲載するなど、一般客にも販売することで商品購買率を高める方法です。
例えば、コロンビアのビーチリゾートでは、宿泊者向けに販売しているビーチクラブパスをゲットユアガイド上でも販売することで、従来販売対象でなかった宿泊者以外の日帰り利用者や周辺宿泊施設利用者の利用を取り込むことが可能になりました。
実際の販売に際しては、即時予約や直前予約の対応など、旅ナカ商品を販売するにあたり気をつけるべき点(こちらの記事を参照)に加えて、自社利用者が利用できない状況を避けるなどの運用上の工夫は必要だと思いますが、こういったサービスの利用率をあげることができれば施設全体としての収益性を簡単に高めることが可能です。
(提供:ゲットユアガイド・ジャパン株式会社)
旅ナカコンテンツを持たずとも、アフィリエイトで収益を上げる
ただ、「自社で販売できる旅ナカコンテンツを持っていない」という宿泊施設もあると思います。そうした施設ができることが、アフィリエイト広告を通じた収益化です
アフィリエイトは、顧客を紹介したことに対する見返りとしてコミッションが発生するマーケティング手法で、EコマースやホテルOTAなどでも積極的に利用されています。従来、ホテルや航空会社は、旅行メディアなどにアフィリエイト広告を出稿することで、集客する立場でしたが、旅ナカ体験においては、ホテルが宿泊中の顧客を旅ナカ事業者や旅ナカのOTAに紹介することでコミッション収入を得ることが可能です。
▲ヨーロッパを中心に展開するホステルチェーンa&o の予約完了画面。画面最下部がゲットユアガイドのアクティビティを紹介するウィジット。このようにホテル予約時にレンタカーや旅ナカ予約を紹介する取り組みが広く行われている(提供:ゲットユアガイド・ジャパン株式会社)
以前から、大半の宿泊施設ではホテルロビーに割引チケットを置くなど、宿泊者の利便性やサービスの一貫として周辺施設の紹介などを行ってきたため、旅ナカでの消費を自社の収益に結びつけることはほとんどできませんでした。しかしコロナ禍によって観光業のデジタル化が飛躍的に進み、旅ナカの予約がオンラインに移行してきたことで、オフラインの販売ではできなかった送客実績を追跡することが可能になったのです。
ゲットユアガイドでもホテルや航空会社などの販売パートナーとこういった取り組みを行っており、日本でも京都でアパートメントホテルの運営を行っているRESI STAY社などがインバウンド再開に向けて導入予定です。この場合、宿泊施設は、自動で生成される追跡タグ付きのバナーを、自社のWebサイトなどに設置するだけという簡単な仕組みなので、新たなシステム構築する必要もなく、利用料もかかりません。
▲ゲットユアガイドが販売パートナー向けに無料で提供しているシステムの管理画面、販売実績やバナーやウィジットなどのツールを生成することができる(提供:ゲットユアガイド・ジャパン株式会社)
「旅ナカ体験」の利用率が高いインバウンド再開へ今から備える
コロナ禍を経て、旅ナカの予約や販売は加速度的にオンラインに移行してきています。従来コンシェルジュや旅行会社のカウンターでされていた予約の多くが、オンライン経由になっているのです。旅ナカ体験領域のデジタル化に伴い、旅ナカ業界は拡大を続けています。今後もマーケットの成長が見込まれていることから、デジタル技術の活用はより一層重要になっています。
特に訪日外国人は旅ナカ商品の利用率が高く、ツアーや観光施設のチケットの予約など、複数商品を日本滞在中に予約します。そのため、こういった流れを構築することが、インバウンド再開の早い段階から収益性を高めることの鍵となってきそうです。
▲ヨーロッパを中心に展開するホテルチェーン、マイニンガーホテルが宿泊者に送っているメールでもゲットユアガイドのシステムを利用して旅先での体験やチケットの予約を紹介している(提供:ゲットユアガイド・ジャパン株式会社)
筆者プロフィール:
ゲットユアガイド・ジャパン株式会社 日本オフィス代表
仁科 貴生
英国高校留学を経て米国カリフォルニア州立大学を卒業。楽天株式会社に入社後、楽天トラベルで主に北関東エリアでオンライン集客支援を行い、東日本大震災を契機に楽天社内でエネルギー事業の立ち上げに取り組む、その後メタサーチ大手KAYAKの日本事業の立ち上げやホテル予約サイトAgodaにて首都圏・東日本エリアでのインバウンド集客支援を経て2018年よりゲットユアガイドにて日本法人の立ち上げに従事。
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