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【訪日客の傾向を知る】フィリピン編:東南アジアでタイに次ぐ50万人規模の市場、親族・知人訪問が20市場で1位に
2019.05.07
刈部 けい子訪日外国人数で7割を超えるシェアを持つのが中国、韓国、台湾、香港からなる東アジア市場。その次は欧米豪市場とインドを含む東南アジア市場が11%台でほぼ互角となっている。東南アジア市場ではタイが100万人を超える市場となったが、今回はそれに次ぐ市場規模のフィリピンについてみていきたい。
50万人市場に発展
2018年のフィリピンからの訪日客数は50万4000人、前年からは18.8%増え、初めて50万人を突破した。東南アジアで2位、訪日客数全体でも8位と、前年からそれぞれ一つずつ順位を上げており、訪日市場で存在感を増している国の一つといっていいだろう。
そもそも2000年代序盤のフィリピンからの訪日客といえば、観光客でもなく、商用客でもなく、その他の客の割合が多かった。その他の客とは、留学、研修、 外交・公用で訪日する人たちのことだ。たとえば、2004年は15万4588人が訪日したが、うち観光客はわずかに3万8223人だった。
その後次第に観光客の割合は増えていくものの、総数としては減少が続き、2011年には6万3099人(観光客は2万9832人)まで落ち込んだ。これは東北大震災の影響もあったと見られ、その後は徐々に回復、2014年には前年比70%という高い伸び率で、18万4204人(観光客数は13万6561万人)が訪日し、10年ぶりに過去最高を記録している。
これは日本―フィリピン間のオープンスカイ協定で日本路線が増便され、数次ビザの導入があったこと(2013年)、数次ビザ発給要件の大幅緩和やパッケージツアー参加者の申請手続き簡易化などがあったこと(2014年)が影響している。さらに円安の進行などもあり、以来、訪日客数は順調に数字を伸ばしてきたのだ。
リピーターも5割超え
また、数次ビザの取得者が年々増えているため、2018年には観光目的でのリピーターも過半数を超えた。特に3〜5回目のリピーターの伸びが目立っている。フィリピンからは同じアジアの旅行先として中国、香港、シンガポールなどが人気だが、これまでそれぞれ75万人(2017年)前後が訪れ、いわば気軽な旅行先と見られている香港やシンガポールに飽きた層が、日本を訪れるようになっているのだ。
そうしたリピーターが訪日に期待しているのは、温泉入浴や四季の体感、自然体験ツアー、旅館宿泊、スキー・スノーボードなど、日本ならではの経験や自然を楽しむこと。特に常夏の国フィリピンからすると雪は憧れで、北海道の認知度は高い。旅行支出でもリピーターの方が大きく、初めての訪日が11万6526円に対し、リピーターは14万4345円で、特に買い物代が3万円近く増えている。
2割弱が訪日で親族・知人訪問
訪日目的では6割が観光・レジャーだが、目立つのは親族・知人訪問が2割弱あること。これはJNTOの重点20市場の中で最も高い数字だ。2016年の在日フィリピン人数は24万3700人で、在日外国人総数では中国、朝鮮・韓国に次ぐ3位の9.3%を占める。それもあって、旅行出発前の役に立った旅行情報源の1位には日本在住の親族・知人が挙がっている。男女比は4:6で女性が多く、年齢層では20〜30代が6割を占める。そして9割が個人旅行者だが、家族や友人と旅行する人が多い。
フィリピン人の特徴の一つは英語を話すことだ。オンライン英会話のスクールにフィリピン人講師が多いのはよく知られているが、フィリピンは英語が公用語となっており、小学校から英語を習う。そのため、訪日誘致でも英語でのプロモーションができるというのは大きいし、受け入れ側としてもハードルが低くなる。余談だが、海外へ出稼ぎが多いのも英語を使える利点があるからだ。例えば香港では外国人家事労働者(アマさんと呼ばれる)を雇う家庭が多いが、フィリピン人女性が大勢働いている。
2018年にマニラ事務所を開設したJNTOによると、訪日需要は拡大途中であり、ターゲットは家族3世代や親戚、メイドまで10人〜20人規模で旅行する富裕層や、日本のアニメやファッションなどに関心を持ち、ITを駆使して情報収集をする20〜30代という。
好調な経済を背景にインセンティブ市場も拡大しているが、まだまだ日本側での取り組みは少なく、今取り組めば先行利益が得られる市場といえそうだ。
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