データインバウンド
日本食は小売でのPRが効果的 米・香港・シンガポールでブランド力が高い日本産の食品や地名は?
2019.06.26
刈部 けい子日本貿易推進機構(ジェトロ)が、香港、シンガポール、アメリカの20代~50代の男女各250名に「地域ブランド認知度アンケート調査」を実施した。これは日本産食品を輸出する際、都道府県などの産地・地域ブランドを前面に出すアプローチがどの程度効果的かを把握するためのもの。2013年に、日本産食品の成熟市場として典型的な香港とシンガポールについて調査を行なったが、2回目となる今回は、アメリカも加えた3市場を対象に調査した。
なお、2018年の日本産農林水産物・食品輸出先は1位香港、2位中国、3位アメリカ、シンガポールは8位となっている。
日本の食品を購入・飲食するなら「価格」「味」「鮮度」
「日本の食品を購入・飲食する際に意識すること」の問いには、3カ国・地域とも、価格(妥当性)、美味しさ・味・風味、鮮度がトップ3を占め、産地(日本産を含む)を意識すると答えたのが多かったのは香港だった。その他にも、香港は安全性、シンガポールは品質、アメリカは原材料・成分への意識が比較的高いという特徴があった。
香港では日本の食品の産地・地域ブランドを意識するが8割
「日本の食品を購入・飲食する際に、 産地名、地域ブランドを意識しますか」との質問に対しても、香港、シンガポールは「意識する」が多いが、アメリカは「意識しない」人のほうが多かった。ただし、この質問に関しては2013年の調査時のほうが、香港(92.4%)、シンガポール(86.0%)とも高かったのは興味深い。
香港の高級スーパーマーケットへ行くと、日本産の食品の品揃えが豊富で、旬の果物が日本の産地名入りで大々的に販売されたりしている。それらを考慮すると、産地名への意識が比較的高いのは納得できる結果といえる。それでも今回の調査で産地名として挙がったのは北海道、東京、大阪などに限られており、その中では北海道の認知度が20.2%と高かった。香港のトラムの車体広告に北海道牛乳や北海道ホタテの広告が掲出されていることがあり、そうしたプロモーションも一定の効果があるのだろう。その他、地域ブランドとして、神戸牛、讃岐うどんなどが挙がっている。
また、シンガポールでも北海道の認知度が29.7%と高く、地域ブランド例では、北海道ミルク、北海道ホタテ、北海道ラーメンなど、アメリカでは神戸、北海道、東京がそれぞれ10%程度の認知度で、地域ブランド例では神戸牛、讃岐うどん、博多ラーメンなどが挙がっていた。
小売店のプロモーションが効果的
「その産地名、地域ブランドを何で知りましたか」との問いに対しては、香港とシンガポールで共に「デパート、スーパー等小売店でのプロモーション」「食品ラベル等の表示」が多く、アメリカでは「食品ラベル等の表示」が多かった。
全般に日本産の食品を購入する際に、産地・地域ブランドの優先順位は高いとは言えないが、香港とシンガポールでは意識する層での誤認率が減り、認知される産地・地域ブランドも多くなったこともわかった。そのため、ある程度浸透している産地・地域ブランドに関しては単体での売り込みも効果的と思われる。一方でそうではない産地・地域ブランドに関しては、まずはジャパンブランドの下で各地産品をアピールする方法が望ましい。また、プロモーションに関してはメディアの活用や訪日促進などでさらに認知度を高めていく方法も考えるべきだろう。
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