データインバウンド
【訪日客の傾向を知る】フランス編:平均2週間以上日本に滞在、ラグビー観戦目的の訪日にも期待
2019.08.29
刈部 けい子古くから世界最大の観光立国と呼ばれるフランス。何が一番かというと、観光客数世界一(ちなみに日本は12位、2017年)なのだ。人口約6300万人対し、フランスを訪れる外国人は8692万人(同年)というから、人口を2300万人も上回る観光客が渡仏していることになる。
出国率は人口の40%
一方、フランス人の出国者数というと、約2600万人(同年)で人口の40%。世界ランクでは10位に下がる(日本は20位)。イギリスやドイツは人口以上が出国しているので、それと比べると少ない。しかも、最も訪れているのがお隣のスペイン、続いてイタリア、イギリス、アメリカ、ドイツで、アメリカを除くと欧州圏内が定番となっている。つまり近間で十分楽しめるという感じだろうか。
フランス人といえば「バカンス」といわれるほど、長期休暇を取ることで有名だが、実際、有給休暇は5週間あるため、南仏や南ヨーロッパのビーチリゾートに長期滞在してのんびり過ごすという人たちが多い。ただし、最近ではアジアへ足を伸ばす人も増えており、日本へは2018年に30万4896人が訪れた。前年からは13.5%の増加で、今年も堅調に推移している。
フランス人は日本の4月が好き
ところで、下のグラフはフランス人の月別訪日数の推移だが、訪日者全体の傾向では7~8月の訪日が最も多い中、フランス人の場合は夏休み期間よりも4月が最も多いのが特徴だ。イースターの時期、学校の春休み、そして桜の時期が重なって、今年も4万600人が訪れた。これは欧州市場では最多で、全体でも11位の数字となる。
こうしてみると、夏休みには2週間ほど欧州のビーチリゾートで過ごし、春は同じく2週間かけて日本の各地を旅行し、伝統文化や自然風景を楽しむという、2種類のバカンスを楽しむフランス人の姿が浮かんでくる。
それではここで訪日フランス人の特徴を簡単に数字から見ていこう。
*男性が63.3%で女性より多い。訪日客全体の平均は男性49.5%。
*年代別では、20代が31.9%と最も多く、ついで30代が25.2%、40代が15.5%。各世代にわたるものの年齢層は比較的低め。
*訪日旅行の満足度は「大変満足」が84.9%で、全20市場平均53.4%をかなり上回る。
(以上観光庁 訪日外国人の消費動向調査2018年 全目的による)
*初訪日が70.9%で、欧米豪9市場の平均より多い。全国籍・地域における初訪日の平均が40.6%なので、訪日ビギナーの多い市場といえるが、最近は徐々にリピーター数も増えている。
*平均泊数は15.3泊で、全20市場で最も多い。全国籍・地域の平均は5.9泊。
*個人旅行が91.6%、全国籍・地域の平均は78.7%。
*同行者は夫婦・パートナーが33.4%と最も多いが、家族・親族が24.1%と欧米豪9市場ではオーストラリアに続き多い。家族旅行が訪日旅行のトレンドになっているそうだ。
(以上観光庁 訪日外国人の消費動向調査2018年 観光・レジャー目的による)
2019年第2四半期は1人当たりの旅行支出1位
それでは次に、注目される1人当たりの旅行支出を見ていこう。下の表は2019年4~6月期の数字で、フランスが全市場で1位となっている。その額、27万6920円。全国籍・地域の平均が15万5939円なので、12万円近く多いことになる。訪日客数の最も多い4月を含むので1位に浮上したとも言えるが(2018年通年では21万5786円で6位)、いずれにしても旅行支出の多い国であることには変わりない。特に宿泊数が多いことから、宿泊料金が45%を占める点が大きい。
なお、2018年の国際観光支出額でも、フランスは前年から10.5%増で世界4位に入っている。出国者数が10位なのに観光支出は5位ということは、それだけ1人当たりの海外旅行中の支出が多いということなのだ。これについては「2018年の国際観光輸出 実質4%増で1兆7000億米ドル。化学・燃料に次ぐ3位の産業に」を参考にされたい。
先述のように訪日フランス人は2週間以上の滞在で、日本各地を訪れるが、中でも人気の訪問先は、東京、京都、大阪、奈良、広島、日本アルプスなどで、リピーターの増加に伴い、地方滞在率も増えているという。
ところで、毎夏パリで開催される「Japan Expo」は、日本の多様なコンテンツを紹介するイベントで、欧州各地から24万人以上(2018年実績)が来場する。元々の成り立ちがアニメ・漫画好きなファン向けのイベントだったということもあり、現在でも会場内にはアニメや漫画、ゲーム関連のエリアが大きく設けられていて、コスプレーヤーの姿も目立つというが、2018年からは観光エリアも新たに設けられた。今年はJNTOのブースに4日間で2万人以上が訪れたという。リピーター向けに東北地方のPRに特化した取り組みを行うなどし、参加者からは「知らない場所を知ってこの地方に価値があると感じた」という意見が出るなど、リピーターの心をくすぐったようだ。
RWC2019でラグビーファン来日
地方へ足を延ばすといえば、この秋は地方を巡るフランス人により多く出会うかもしれない。9月20日に開幕するラグビー・ワールドカップ(RWC)にはフランス代表も出場する。当然、試合観戦に訪日するフランス人も増えるとみられている。フランスのラグビーファン人口は2170万人で世界一、ラグビーの本場イギリスよりも多く、そのうち特に熱狂的なファンが570万人もいるという。中でもボルドー、トゥールーズ、リヨンなど南部にラグビーファンが多いそうだ。
2011年にニュージーランドで開催されたRWC2011は、外国人入国者数が13万3000人。そのうち約9%に当たる1万1500人はフランス人で、オーストラリアにつぐ人数だった(ニュージーランド統計局発表)。飛行時間が30時間前後もかかるニュージーランドでこれなのだから、12.5時間のフライトで来られる日本へはさらに多くが訪れても不思議ではない。
今回の日本大会でも、フランスの旅行会社がRWCの観戦ツアーを販売している。添乗員付きの全日程宿泊付きのツアーもあれば、試合日前後以外はフリーというツアーやVIPツアーなど様々な商品があるが、以下は、ラグビーワールドカップ公式の旅行会社Eventeam社が実際に販売した自由滞在型のツアーだ。
ラグビー観戦目的だけに、日本に対してさほど関心がないといわれる彼ら、多くの自由時間に日本をどのように楽しんでくれるのか、興味深いところだ。
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