データインバウンド
訪日外国人旅行者の旅行保険加入状況は? 2割強が未加入、うち5割強は保険の存在を認知せず
2020.04.08
刈部 けい子新型コロナウイルス感染症が拡大するなか、訪日する外国人数は激減しているが、日本滞在中に病気や怪我をした場合、訪日外国人旅行者はそれをカバーする保険に入っているのだろうか。
観光庁は、訪日外国人旅行者が不慮の怪我・病気になっても安心して日本の医療サービスを享受できる受入環境を整えるために、訪日外国人旅行者や旅行業者・宿泊施設等への実態調査を行い、その結果を3月に発表した。
訪日中に怪我や病気になった訪日外国人は全体の4%
アンケートは2019年8月~12月に成田国際空港、東京国際空港、関西国際空港、新千歳空港で行われたもので、回答数は3115件となっている。
調査結果によると、訪日中に怪我や病気になった訪日外国人は全体の4%で、そのうち55%は「風邪、熱」だった。他に「腹痛、下痢」(22%)、「捻挫、骨折」(11%)、「アレルギー」(10%)、「切り傷」(10%)だった。
旅行保険加入者は微増
それでは旅行中の医療費をカバーする旅行保険に加入していた人はどのくらいいたのだろうか。今回のアンケートによると、73.7%は何らかの形で旅行保険に入っていた。2018年に行った調査よりは0.6ポイント増えている。
グラフにあるように、特定の場所で旅行保険を購入(空港、旅行代理店、保険会社のウェブサイト、旅行保険比較サイト、他に加入している保険販売員からの購入等)した人が全体で43.9%、東南アジアでは49%と平均を上回った。また、特定のサービスなどに付帯(所有しているクレジットカードや航空券、旅行パッケージ等)の保険を持っている人が全体で26.3%、欧米豪では特定の場所で購入した保険よりサービスに付帯した保険への加入のほうが若干多かった。また、その両方に加入している人が全体では3.5%いた。
加入方法をさらに詳しく見ると、旅行代理店での購入が、全体(16%)、東アジア(16%)、東南アジア(15%)で割合が高く、欧米豪では「クレジットカードに付帯」と回答した割合が16%で最も高かった。
旅行保険を知らない人が5割超
海外で怪我・病気になったときの医療費をカバーする旅行保険に加入しなかった理由を尋ねると、「旅行保険を認知していなかった」人が55%と多かった。また、「加入する必要性を感じなかった」人が28%、「加入したい旅行保険がなかった」人が11%いた。
そこで、上記で「加入する必要性を感じなかった」人に対して、その理由を尋ねると下の表の結果となった。
全体では5割が「滞在日数が短いから」を理由としている。また、35%が「日本が安全だから」と答えているが、これは口コミはもちろん、メディアや安全都市ランキングで日本の安全が知られているからだろう。なお、全体2位の「体力・健康に自身があるから」との回答が欧米豪で59%と高かったのは興味深い。
また、旅行保険未加入と回答した人に、医療費が高額となった場合の支払方法を尋ねると、「医療費が20万円程度」の場合は7割がクレジットカードで支払うと回答したものの、日本においても帰国後でも支払方法がないとの回答が7%あった。外国人の医療費未収問題があるなか、受け入れ医療機関としては、外来受診の受付の際に身元、支払い手段の確認を徹底し、クレジットカードの場合はコピーをもらうなどの対応が必要となってくる。
なお、日本入国後にも加入できるインバウンド旅行保険については、告知を見た人が地域を問わず1割にとどまった。東京海上日動と損保ジャパン日本興亜が販売しているインバウンド旅行保険の加入割合は全体の2%程度だった。「保険の存在を知っていれば加入したか」という質問については、東アジアで28%、東南アジアでは38%が加入したと思うと回答。ただし加入するには、出発前に知っていたら必要があると答えた人が全体の8割を超えた。
受入れ側の悩みは、多言語対応
訪日外国人旅行者が怪我や病気になった際、旅行業者や宿泊施設はどのように対応しているのだろうか。旅行業者や宿泊施設への調査結果、これまでに旅行中の外国人旅行者が怪我・病気になったことがあるかと尋ねたところ、約半数が「ある」と答えた。さらに、宿泊施設への調査結果を詳しく見ていくと、「ある」と答えたのが、シティホテルで76%とずば抜けて高く、次にリゾートホテル、ビジネスホテルと続いた。そのなかで、医療機関へ行く必要になった外国人旅行者はいるかと尋ねると、全体の9割が「いる」と回答した。
外国人旅行者が病気や怪我になった際の対応で課題と感じているものをあげてもらったところ、旅行業者(回答155社)では、会話対応・通訳が十分できない(54%)、外国人対応ができる医療機関がわからない(46%)、外国人から「自分の医療保険契約で使いやすい医療機関はどこか?」と聞かれてもわからない(46%)が上位を占めた。宿泊施設(回答471施設)でも同様に会話対応・通訳が十分できない(72%)が最も多く、続いて夜間時等、フロントの人数が少ない際に、医療機関への同行ができないことがある」(66%)、外国人から「自分の医療保険契約で使いやすい医療機関はどこか?」と聞かれてもわからない(54%)だった。
JNTOのウェブサイトで展開されている「具合が悪くなったときに」では、日本で医療を受ける際に役立つリンクなどを掲載している。医療機関検索、医療機関のかかり方、主な症状と診療科目について多言語で展開しているので、外国人旅行者に紹介してもよいし、受け入れ側で話を聞いて探してあげることもできるので活用したい。
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